10 / 14
10話
しおりを挟む
月日は流れ
あれから3カ月が過ぎ私は安定期を迎えた。
あれからも王様は毎晩、私を呼び自分のそばに置き、私の身体の事を心配しては栄養の付くものを私に与えてくれた。
そして、王様はよくこの王宮の建物の作りについて話すようになった。
子供の頃、この王宮内にある隠れ道を見つけ、そこからよく王宮を抜けだした話や、その道を通ってジナタさんが王宮に忍び込んだ話を、外にいるジラに聞こえないように私へこそこそと話す。
王様は詳しすぎるほどその話を何度も繰り返し、私はなぜそんな話をするのか不思議でたまらなかったが、王様があまりにも真剣な眼差しで話すので私も一生懸命にその話をきいた。
他のお役人たちは正室であるホミラ様や他の側室と王様の間にもお世継ぎをと思っているのか、私とばかり夜を過ごす王様に対して不満が募り私に対して冷たい視線が注がれるようになった。
そんなある日の深夜
王様と並んで布団に入って眠っていると突然、息苦しさが襲い目を覚ました。
すると、そこには王様の姿はなくあたり一面…炎に包まれ煙が充満していた。
息苦しさから咳き込みながらも私は必死で王様を探す。
T「王様…ゴホッゴホッ…王様!!」
扉を開けるとそこにいつもいるはずのジラもニカヤはおらず私は焦る。
苦しい…
そう思っていると廊下の向こうから王様が炎に怯える様子もなく私の元へと走ってきた。
T「王様!早く逃げないと…!!火事です…!!」
Y「お前は今すぐ逃げろ…」
T「え……」
Y「今、ニカヤがジラを先に此処から追い出し炎で此処の入り口を止めた…此処へはもう誰も入らない…だから逃げるんだ!!どう行けば王宮を抜け出せるか…もう頭の中に入っているだろ?今すぐ逃げろ!!これ以上炎が強くなる前に…」
王様は私の身につけていた側室として証を剥ぎ取り布団の上に投げ、私の背中を押す。
T「王様も一緒に逃げなきゃ…!!」
Y「俺は生きていても何の意味もない…でもお前は違う…生きるんだ…例え俺が死んでも…」
王様のその言葉を聞いてあの日、コハクが言った同じ言葉が蘇る。
K「あなたには生きて欲しい。例え俺が死んでも。」
王様とコハクの姿が重なって見える私はその場から動けない。
なのに王様は私を必死で逃がそうと強くなる炎の中、背中を押す。
Y「いいから逃げろ!!この子の父親と出来るだけ早くこの町から逃げるんだ…分かったな。」
私は涙を流しながら何度も頷きお腹を庇うようにして走りだした。
なぜ、毎晩のように王様が王宮の作りについて私に詳しく話したのか…
なぜ私に隠れ道の話を何度もしたのか…
その意味がようやくわかった私は涙を堪えながら走る。
王様の言っていた隠れ道を見つけると、私は王様の話の記憶を辿りながらその道を一心不乱に進む。
お腹の赤ん坊がポコポコと動き私はお腹を撫でながら、迫り来る炎から逃げるように無我夢中で走った。
つづく
あれから3カ月が過ぎ私は安定期を迎えた。
あれからも王様は毎晩、私を呼び自分のそばに置き、私の身体の事を心配しては栄養の付くものを私に与えてくれた。
そして、王様はよくこの王宮の建物の作りについて話すようになった。
子供の頃、この王宮内にある隠れ道を見つけ、そこからよく王宮を抜けだした話や、その道を通ってジナタさんが王宮に忍び込んだ話を、外にいるジラに聞こえないように私へこそこそと話す。
王様は詳しすぎるほどその話を何度も繰り返し、私はなぜそんな話をするのか不思議でたまらなかったが、王様があまりにも真剣な眼差しで話すので私も一生懸命にその話をきいた。
他のお役人たちは正室であるホミラ様や他の側室と王様の間にもお世継ぎをと思っているのか、私とばかり夜を過ごす王様に対して不満が募り私に対して冷たい視線が注がれるようになった。
そんなある日の深夜
王様と並んで布団に入って眠っていると突然、息苦しさが襲い目を覚ました。
すると、そこには王様の姿はなくあたり一面…炎に包まれ煙が充満していた。
息苦しさから咳き込みながらも私は必死で王様を探す。
T「王様…ゴホッゴホッ…王様!!」
扉を開けるとそこにいつもいるはずのジラもニカヤはおらず私は焦る。
苦しい…
そう思っていると廊下の向こうから王様が炎に怯える様子もなく私の元へと走ってきた。
T「王様!早く逃げないと…!!火事です…!!」
Y「お前は今すぐ逃げろ…」
T「え……」
Y「今、ニカヤがジラを先に此処から追い出し炎で此処の入り口を止めた…此処へはもう誰も入らない…だから逃げるんだ!!どう行けば王宮を抜け出せるか…もう頭の中に入っているだろ?今すぐ逃げろ!!これ以上炎が強くなる前に…」
王様は私の身につけていた側室として証を剥ぎ取り布団の上に投げ、私の背中を押す。
T「王様も一緒に逃げなきゃ…!!」
Y「俺は生きていても何の意味もない…でもお前は違う…生きるんだ…例え俺が死んでも…」
王様のその言葉を聞いてあの日、コハクが言った同じ言葉が蘇る。
K「あなたには生きて欲しい。例え俺が死んでも。」
王様とコハクの姿が重なって見える私はその場から動けない。
なのに王様は私を必死で逃がそうと強くなる炎の中、背中を押す。
Y「いいから逃げろ!!この子の父親と出来るだけ早くこの町から逃げるんだ…分かったな。」
私は涙を流しながら何度も頷きお腹を庇うようにして走りだした。
なぜ、毎晩のように王様が王宮の作りについて私に詳しく話したのか…
なぜ私に隠れ道の話を何度もしたのか…
その意味がようやくわかった私は涙を堪えながら走る。
王様の言っていた隠れ道を見つけると、私は王様の話の記憶を辿りながらその道を一心不乱に進む。
お腹の赤ん坊がポコポコと動き私はお腹を撫でながら、迫り来る炎から逃げるように無我夢中で走った。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
真面目な王子様と私の話
谷絵 ちぐり
恋愛
婚約者として王子と顔合わせをした時に自分が小説の世界に転生したと気づいたエレーナ。
小説の中での自分の役どころは、婚約解消されてしまう台詞がたった一言の令嬢だった。
真面目で堅物と評される王子に小説通り婚約解消されることを信じて可もなく不可もなくな関係をエレーナは築こうとするが…。
※Rシーンはあっさりです。
※別サイトにも掲載しています。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です
くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」
身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。
期間は卒業まで。
彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる