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プロローグ
はじまり①
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「俺、結婚するから、お前とはこれで終わりな」
恋人だと思っていた男は、さも当然と言わんばかりに、呆然と佇む僕にそう告げた。
浮気ばかりしていた奴だったけれど、半年くらい前から全く遊ばなくなり、やっと僕だけにしてくれたのだと思っていたのに。
「ナオヤ先輩……っ」
玄関先で、僕は縋るように恋人だったナオヤ先輩の腕を掴んだ。
ナオヤ先輩は、心底煩わしいと言った様子で僕の手を振り払うと、嘲笑する様な表情を浮かべている。
その目には、僕に対する愛情など欠片も感じられない。
「……んだよ、お前まさかだと思うけど、別れたくないっていうつもりか? 悪ぃけど、無理だから」
その言葉に、僕は思わず固まっていた。
ナオヤ先輩にとっては既に話し合いをする事ではなく、決まった事なのだと、存外に言われているのを感じて、僕は震える声で悲しみを吐き出した。
「……何でですかっ。最近優しかったじゃないですか……っ」
付き合った当初から、僕に対しては雑な態度を取り続けていた人ではあったが、浮気をしなくなったと同時期から、とても優しく抱いてくれるようになっていた。以前は僕に多少無理をさせる事を気にもしなかったナオヤ先輩が、僕の身体を気遣ってくれるようになって、僕は本当に嬉しかったのに。
けれど、ナオヤ先輩は更に残酷な事実を僕に突き付けてきた。
「……ああ、お前に優しくした理由か? まぁ、ぶっちゃけると罪滅ぼし、かな? 他の女どもはさ、正直俺じゃない奴と付き合っていたりしたこともあるような奴らだから、別に気にしなかったんだけどさ。お前は違うだろ? ずっと、俺だけだったじゃん? だから、最後くらいは良い思いをさせてやろうと思って、お前に構ってたわけ」
「……っ」
僕は、膝から崩れ落ちそうになるのを何とか堪えた。
幸せだった日々が、まさかそんな風に作られたものだったのだと、僕は信じたくなかった。
だが、ナオヤ先輩の表情は、その話が嘘ではないのだという事を物語っていた。
――じゃあな。
念を押すようなその別れの言葉に、僕はもはや何も返すことが出来なかった。
恋人だと思っていた男は、さも当然と言わんばかりに、呆然と佇む僕にそう告げた。
浮気ばかりしていた奴だったけれど、半年くらい前から全く遊ばなくなり、やっと僕だけにしてくれたのだと思っていたのに。
「ナオヤ先輩……っ」
玄関先で、僕は縋るように恋人だったナオヤ先輩の腕を掴んだ。
ナオヤ先輩は、心底煩わしいと言った様子で僕の手を振り払うと、嘲笑する様な表情を浮かべている。
その目には、僕に対する愛情など欠片も感じられない。
「……んだよ、お前まさかだと思うけど、別れたくないっていうつもりか? 悪ぃけど、無理だから」
その言葉に、僕は思わず固まっていた。
ナオヤ先輩にとっては既に話し合いをする事ではなく、決まった事なのだと、存外に言われているのを感じて、僕は震える声で悲しみを吐き出した。
「……何でですかっ。最近優しかったじゃないですか……っ」
付き合った当初から、僕に対しては雑な態度を取り続けていた人ではあったが、浮気をしなくなったと同時期から、とても優しく抱いてくれるようになっていた。以前は僕に多少無理をさせる事を気にもしなかったナオヤ先輩が、僕の身体を気遣ってくれるようになって、僕は本当に嬉しかったのに。
けれど、ナオヤ先輩は更に残酷な事実を僕に突き付けてきた。
「……ああ、お前に優しくした理由か? まぁ、ぶっちゃけると罪滅ぼし、かな? 他の女どもはさ、正直俺じゃない奴と付き合っていたりしたこともあるような奴らだから、別に気にしなかったんだけどさ。お前は違うだろ? ずっと、俺だけだったじゃん? だから、最後くらいは良い思いをさせてやろうと思って、お前に構ってたわけ」
「……っ」
僕は、膝から崩れ落ちそうになるのを何とか堪えた。
幸せだった日々が、まさかそんな風に作られたものだったのだと、僕は信じたくなかった。
だが、ナオヤ先輩の表情は、その話が嘘ではないのだという事を物語っていた。
――じゃあな。
念を押すようなその別れの言葉に、僕はもはや何も返すことが出来なかった。
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