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56・魔族との出会い(2回目)
しおりを挟む「ここ、か……」
エンテの街に入った俺は―――
クラークさんとミントさんの案内で、拠点となる
宿屋の前まで来ていた。
確かにあまり治安がよろしくないと思われる
地域だが……
それを言ったらこちとらダンジョンだしなあ。
それに、土地建物付きで人間の街への通路が
出来ると思えば、安い買い物だろう。
何せ元手もタダ同然だし。
「営業はしているんですか?」
「しているはずだけど……
いつも通りやってていい、って話してあるし」
客足の無い寂しい店、という印象を受ける中、
とにかく中へ入る事にした。
「あ……
クラークさん」
「ローラさん?
店、やっていますよね?」
店内に入ると、三十代くらいの女性が
出迎えてきた。
「ミントさん!」
「プリムちゃん、どうしたの?」
そこへ、娘と思われる赤毛の三つ編みの女の子が
走ってきて、その背後に痩せた老人の姿が―――
「おや、またお客さんですかな……?」
そこには、すでに老境に達していると思われる
執事ふうの男性が立っていた。
そして足元には―――
いかにもなゴロツキといった体の男たちが
横たわる。
「……誰だ?」
クラークさんとミントさんが、その老人を前に
身構えるが、
「ち、違うんです!
この方は私たちを助けてくれたんです」
ローラさんが俺たちと、その男の間に
割って入る。
「……助けたつもりなどありません。
私はただ、聞き込みをしていただけです。
ここに転がっている連中は襲い掛かって
来たので、迎え撃っただけの事。
しかし、まさか―――
このようなところで『お仲間』に会うとは」
彼がそう言うと、突然パトラさんが
俺をかばうようにして前に立ち、
「主、こやつ―――
魔族じゃぞ!」
「!」
その言葉で、いっせいに視線がその老人に
集中し、
「ヒロト様!」
「ここは下がって……!」
俺の名前をクラークさんが叫ぶ。
思わずとっさに出てしまったのだろうが、
「……ヒロト?」
執事姿の『魔族』は、その言葉に硬直したように
動作を停止させ、
「も、もしや―――
ヒロト・ジンム殿でございますか!?」
「え? どうして俺の名前を」
フルネームを言い当てられた事に、俺も
考える間もなく肯定してしまう。
すると彼は俺の目の前で跪き、
「や、やっとお会い出来ました!
申し遅れました。
わたくし、ホーンドと申します。
魔王・メルダ様の命で貴方を探して
いたのです!」
その光景を……
冒険者二名と母娘は、ただ茫然と眺めていた。
「あー……
一応メルダも俺の事、心配して
くれていたのか」
ゴロツキどもはクラークさんとミントさんに、
街の衛兵に突き出すため運び出してもらい、
俺とパトラは彼に改めて事情を聞いていた。
「はい。ヒロト殿は子供の姿なので、どこかの
奴隷商にでも捕まっているのではないかと、
そう思い、ここクレイオス王国の街などに
最近おかしな動きのあった奴隷商や、
新たに奴隷になった子供たちについて
調査していたのです」
ふむふむ、と状況を把握しつつ情報共有する。
「それで今、メルダはどうしているんだ?」
「いや、それが……
ヒロト殿の召喚失敗、それにクレイオス王国が
召喚した勇者どもが攻めてきたおかげで、
かなり立場をお悪くしておりましてな。
ヒロト殿が見つかったと聞けば、メルダ様も
お喜びになるでしょう!
さっそくこの事を報告しに参ります!」
立ち上がろうとするホーンドさんを、パトラが
抑えて、
「待て待て。
わらわたちのダンジョンの場所がわかるのか?」
あ、という顔をする彼に、
「えっと、俺のダンジョンは魔境の森に
あるんです。
この宿屋と繋げておきますから、
何かあったらここまでよろしくお願いします」
「お、おおそうですか!
それでは失礼します!」
そして執事姿の魔族は店から出て行った。
「あ、あのう……
ではヒロト様は、魔族……?」
背後から声をかけられ振り向く。
多分、リナより一・二才くらい下の娘を
抱きしめながら―――
ロングの銀髪の女性がおずおずとたずねてきた。
「今はそうですけど、俺は元人間です。
それにダンジョン管理者になるにあたって、
好きにしていいって言われてますから。
少なくとも俺のダンジョンで、人間を殺した事は
一度もないですし……
これからも殺す気はありませんよ」
眷属にした奴隷商たちを処分した事はあったけど、
あれは地下ではなく地上部分の『施設』だったし。
ウソは吐いてないよな、ウン。
その答えにホッとしたのか、安堵した
表情を見せる。
同時に『キュ~……』という音が聞こえ、
「ご、ごめんなさい。
安心したら急に……」
どうやら、プリムという少女のお腹の音だった
らしい。
俺は自分のステータス画面を開くと、
その中から所持アイテムと複製を選択し、
「取り敢えず、軽くコレを。
後でクラークさん、ミントさんも帰って
くるでしょうから―――
食べながらお話ししましょう」
人数分のポタージュスープを取り出し、
俺はテーブルの上にそれを並べた。
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