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58・地下からの帰還
しおりを挟む「ここは……」
「うわあ……」
ローラさんとプリムさんが、魔境の森の
ダンジョンまで繋げた地下通路を見て、
母娘で固まっていた。
食材倉庫でエレベーターを設置し、
二人に通過を許可。
通路へ俺と一緒に降りてきたのだが……
「ダンジョンというより―――
お城の廊下ですね」
「照明と『えあこん』とやらがあるから、
下手な貴族の家より快適かも」
クラークさんとミントさんも、呆れるような
声で語る。
「ここから少し歩きますけど、大丈夫ですか?」
街に来るまでは半日くらいかかったけど、
一直線で舗装された道なら、そうはかからない
だろう。
「とはいえ、主よ。
冒険者のミント殿はともかく、女子供の足では
厳しいと思うぞ?」
パトラさんの指摘に『う~ん』と悩んでいると、
彼女はそのまま魔狐の姿へと変化し、
「わらわに乗るがよい。
歩くよりは疲れぬであろう」
そう言って彼女たちの前で四肢を折りたたみ、
騎乗を促す。
「い、いいのですか?」
「わぁ……!
大きい狐さんー!!」
母親の銀髪とは対照的に、赤い髪の三つ編みの
少女がぴょんぴょんと飛び跳ねる。
そして魔境の森のダンジョンまでの道すがら―――
眷属になる事の条件や、俺の当面の目的などを
説明した。
「なるほど……
ヒロト様は、人間とも魔族とも商売をしたい、
というお考えなのですね?」
「そうですね。
少なくとも俺のダンジョンに、殺傷能力は
ありませんし。
からめ手で、奴隷商を『処分』した事は
ありましたが……」
魔狐の上から話しかけてくるローラさんに、
俺が下から受け答える。
奴隷商についてはいずれバレる事でもあると
思い直したのと、
また子供たちにその秘密を守り通せるか……
いずれボロが出るだろうと、正直にしゃべる事に
したが、
「それは仕方なし。
主の奥方に害をなした者であったからのう」
「えっ!?
ヒロト様、結婚しているの!?」
プリムがパトラさんの言葉に驚く。
というか食いつくのはそっちなの?
「まあ奥さんになったのはつい先日かな?」
「何それ?
俺聞いてないんだけど?」
赤髪のシーフの女冒険者はあっさりと流し、
対照的に戦士風の青年は目を丸くする。
俺のプライバシーってどうなっているんだろうと
思いつつ―――
三時間ほどで、目的地にたどり着いた。
「案外近かったですね」
ローラさんが意外そうに話す。
森という障害物が一切なく、直線で突っ切れば
こんなものだろう。
「もうすっかり夜だし……
みんな寝ているかな?」
手元のスマホで確認すると、すでに二十時を
回っていた。
リナやパトラは起きているだろうけど―――
「ただいまー」
エレベーターを上がって、ホテルの一階へと出る。
ちなみに通路は、こちらのダンジョンの地下三階の
深さでくっつけた。
これは、もし街に下水道などの施設があったら、
バッティングするのを恐れての事だ。
今はなくても、将来的に作らないとも
限らないしな……
「あ! ヒロトお兄ちゃんだー!」
「お帰りなさいー!」
「リナお姉ちゃん呼んでくるー!」
と、予想に反して子供たちがわらわらと
出迎えて来て、
「マスター、お帰りなさいませ」
黒髪黒目・猫耳のメイド服の女性も姿を現す。
「コマチさん。
子供たち、寝てなかったのか?」
「それが、マスターが帰って来るまで
起きているって言い張ってね。
ワタクシが、じゃあ昼寝しておきなさいって
言ったら―――
ゲームもしないで頑張って寝ていたんだよねー」
子供たちは俺に群がるように来て、
そんな彼らの頭をなでてやると……
満足気な笑顔になった。
「お帰りなさい、あなた」
「ただいま、リナ。
留守番お疲れ様」
薄黄色のセミロングの髪をした少女が、
俺へと駆け寄り、
「その方が奥様ですか?」
「はい。俺の妻です」
ローラさんの言葉に振り返り、肯定する。
そして改めて彼女とプリムを紹介する事にした。
「みんな、こっち見てー。
今日は新しいお客さんに来てもらったから。
ローラさんに、その娘のプリムちゃんです。
もしかしたらこのダンジョンを手伝って
くれるかもしれない方々なので……
失礼の無いようにね」
「「「はーい」」」
元気よく返事が返ってくる。
俺は続けて二人に、
「しかし、今日はもう遅いですから―――
お風呂に入って寝てしまいましょう。
コマチさん、子供たちのごはんは」
「夕食は食べさせましたよー。
お風呂はまだだね」
そこで俺は彼女たちに指示として、
「じゃあお風呂に……
2人のお客様もお願い出来ますか?
それとクラークさんとミントさんも、
お客様として同様に後でお部屋に案内して
ください」
取り敢えず、エンテの街と地下通路を繋げる事に
成功した俺は―――
今日のところは休む事にした。
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