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59・カミュ王女Side06
しおりを挟む「ふむ―――
これが初陣の結果か」
わらわは、報告書に目を通しながら目の前で
跪く騎士に問いかける。
「ハッ!
やはり勇者・レオ様の活躍はすさまじく……
どの魔族も相手にならなかったとの事。
た、ただレオ様は好戦的で、その―――
深入りし過ぎてしまい、ルキア様やアトム様が
駆け付け、事なきを得たとも聞き及んで
おります」
わらわは騎士から改めてその報告を聞いて……
思わず口からため息が漏れた。
最高戦力というのは確かだろうが―――
だからと言って不死身というわけでもない。
首を切られても生きている生物がいないように。
「単独で動いてもらうには不安が残るな」
「ハッ!
しかし今回の戦いで、図らずもルキア様や
アトム様の恩恵も確認出来ました。
少なくともあの3人を組ませておけば、
不測の事態は避けられるかと」
レオの軽減と強化上昇で突撃させ―――
ヤツの手綱はルキアに引かせるか。
神速を持つ彼ならたいていの事は
間に合うであろう。
アトムの反射があれば、撤退するにも
支障はないであろうし。
もとより勇者たちは切り札。
使いどころさえ間違えなければ、問題は
なかろう。
「そ、それと―――
勇者・レオ様から王女様に言伝がありまして」
あの男勇者から?
まさか、わらわの演技が見抜かれたか?
「……よい。申してみよ」
思わず身を固くするが、騎士からは続いて
出た言葉は―――
「え、ええと……
『この勝利をカミュ王女様に捧げる』
との事です!」
「そうか。
勇者としての使命を果たしてくれそうで
何よりだ」
口元が笑みになりそうなのを何とか隠し、
平静を装うように努める。
しかし、こうまで騙されてくれるとは……
しょせんは坊やか。
返って初々しく可愛いとさえ感じる。
「ところで、女勇者の方はどうだ?」
これも報告書に目を通したが―――
アオイ・シラハセ、カナ・ミツキ、
そしてユウコ・タケダの三人とも……
相手としてあてがった王族に難色を示して
いるとの事。
「は、はあ。
とにかく今は後方とはいえ、戦闘中でもあるので
他の事は考えられない、と。
ケガ人が出たら真っ先に受け入れるので、
すぐに知らせて欲しいとも」
まったく……
せっかく『役割』を与えてやろうというのに、
役立たずの自覚が無いのは困りものだな。
それに男どもの方も問題だ。
末端とはいえ王族に連なる者なのだから―――
女一人落とせぬでどうするのか。
まあよい。
わらわの目的は達せられている。
・敵味方に勇者の存在を知らしめる事、
・勇者という戦力が魔族に通じるかの確認、
・女勇者がいなくても前線は問題ない事
そしておおよそ、わらわの思い通りの
結果となった。
今はこれ以上は望むまい。
「今回はあくまでも前哨戦。
それに、勇者たちの戦いを見た魔族どもも、
今後はそうおいそれと攻めてはくるまい。
勇者たちの部隊に帰還を命じよ」
「ハハッ!!」
騎士は立ち上がると一礼し―――
わらわの部屋から退出した。
「さて、次の一手はどうするか」
一人となった部屋でわらわは思案にふける。
思ったよりもレオは単純で、思い通りに
動いてくれそうだ。
わらわの好意を真に受けているとしても、
悪い気はしない。
まあ、この高貴な美貌なれば当然というべき
かも知れぬ。
幸い、これ以降は魔族も用心するであろうし、
時間は出来た。
足場を固め、さらにわらわの側に留めるためにも、
レオにはもう一押しあってもいいだろう。
「素直な子には、ご褒美をあげねばな」
誰もいない空間で―――
わらわは独り言のようにつぶやいた。
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