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60・勇者Side06
しおりを挟む「……というわけで、ひとまずお城まで
帰還して頂きたいとの事。
カミュ王女様も、この度の勇者様方の働きには
満足しているとの事で―――」
使者の前で、俺と琉絆空、そして武藤さんは
指示に耳を傾ける。
「俺としちゃちょっと暴れ足りないけどなぁ」
「頼音!!」
口うるさい友人の注意に、俺はヤレヤレと
両腕を広げる。
「あくまでも様子見、との事でしたが―――
魔族の実力とはあれくらいなのでしょうか」
武藤のオッサンが使者である騎士に問いかけ、
「勇者様方の恩恵であれば……
敵ではないのでしょうが。
もし我々ならば被害は甚大だったかと」
確かになあ。
俺もちょっとヤバい時があったし。
アレをこの世界の普通の人間に戦えというのは、
かなり厳しいだろうな。
「あと、カミュ王女様からレオ様に伝言が
あります。
『どうか無事のままお戻りください』
―――との事です」
それを聞いて俺は頭をかきながら、
「あ~……
俺個人にってのはマズくね?
仮にも王女様がさあ。
琉絆空や武藤さんだっているんだし」
と言いながら悪い気はしないでいると、
「頼音、お前スゲー顔ニヤけているぞ……」
「いつから王女様とそういう仲に?
しょっちゅう会っていたとは聞いて
いましたが……」
と、他二人からツッコミをくらい―――
「んなっ!?
そ、そういうワケじゃねーって!!
じゃ、は、早く帰ろうぜ!!」
俺は二人の背中を押すと、急ぎ足で荷物を
まとめてある場所へ駆け出した。
「……との事で、勇者レオ様始め男性の勇者の
方々は、魔族軍に多大な被害を与えました。
今回はあくまでも様子見なので、その後
速やかに撤退したとの事です。
女性の勇者様方も、王城まで引き返されたい
との事」
「は、はあ」
私は空返事で、女性司祭らしき人から指示を
受けていた。
「でも私たちは後方支援ですよね?
それなら、島村さんたちと合流してからでも」
前方から撤退してくるのであれば、彼らの
到着を待ってからでも遅くはない。
そう言おうとすると、
「勇者様方は無傷ですが、ケガを負った兵士たちも
おります。
女性の目に触れさせるようなものでは……」
「それなら武田ッチがいた方がよくない?
『聖女』のスキルで治せば」
一緒にいた弥月ちゃんがすかさず
正論で返し、
「距離が離れておりますので、
先に戻られたらと」
「一緒に行動した方が安全では?」
今度は白波瀬さんが会話に割って入るが、
「ここはまだ後方で、安全が確保されて
おりますゆえ―――」
恐らく、カミュ王女様の命令だろう。
四苦八苦して私たちを誘導しようとする姿は
同情すら覚える。
「……わかりました。
準備が出来次第、私たちも王城へ
戻りますので」
「よ、よろしくお願いします」
一仕事終えたようにホッとした表情を見せ、
彼女は去って行った。
そして野戦用のテントの中に残された、私と
ツインテールの少女、キャリアウーマンふうの
女性は顔を見合わせる。
「よっぽど、男性陣の勇者とは会わせたく
ないと見えるねー」
「ここまで露骨だと乾いた笑いしか出ないわ……
何考えているのかしら」
二人とも、言葉が終わると同時に大きな
ため息をつく。
これまでの事もあって、精神的な負担も
大きいみたい。
何せ、勝手に結婚相手候補にされた相手と、
過ごしていたのだから……
「どーする?
さすがにコレしまむーに伝えれば、
少しは考え直すんじゃない?」
弥月ちゃんが意見を出すが、
「どうかしら。
女性勇者という事で、王族を同行させて
警備を厳重にした……とでも言い訳されたら
何も言えないわ」
白波瀬さんは冷静に分析して切り返す。
「問題は、これから逃げられるかどうか
ですけど……」
私はお城で話し合あった脱出計画を、
実行するかどうか問うが、
「今は無理かなあ」
「途中、村や集落っぽいところはあったけど、
身を隠す事は出来ないわね。
王城からそこそこ離れていて、それでいて
ある程度の規模のあるところじゃないと」
一回逃げて捕まったら、次からは警戒が強くなる。
チャンスは一度きりだと思わないと―――
「今回は見送りましょう。
それに、私のところに来たクラリス君ですけど、
ちょっと気になる事が」
その言葉に、彼女たちは私と視線を合わせると、
「あのコ?」
「え? もしかして武田さん……
そっちの趣味が?」
「違いますっ!!」
からかうように二人は笑い―――
それにつられて私も思わず苦笑いした。
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