【完結】ゲーセンダンジョン繁盛記 ~魔王に異世界へ誘われ王国に横取りされ、 そこで捨てられた俺は地下帝国を建設する~

アンミン

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64・緊急入院

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「……これは……」

翌日の夕方頃―――
拠点となるエンテの街の宿屋に、一人の少年が
運び込まれた。

「お、お願いします!
 どうか息子を……!」

「どのような条件でも飲みます!
 ですからどうか……!」

ダークブラウンの短髪の精悍な顔つきをした、
三十代前半くらいの男性と、

ブロンドの長髪の、二十代半ばに見える
童顔の女性が、子供を抱きかかえながら
頭を下げる。

「このお2人が、ガド・ハーレイドッグ子爵ししゃくと、
 そのご夫人、マリア様です」

「病気になられているのはご子息のロイ様で……
 護衛として子爵家直属の、アマンダ騎士様が
 来ています」

クラークさんとミントさんの説明を聞き、
夫人が抱いている少年の顔をのぞきこむと、
確かに熱っぽく、呼吸も荒い。
表情もかなり苦しそうだ。
年齢的には五・六歳、グレンと同じくらい
だろうか―――

「何をしている!
 子爵様がどんな条件でも飲むと言って
 いるのだ!」

そして二人の横に寄り添うように―――
紫に近い黒のミドルショートの髪の、目つきの鋭い
女性が声を上げる。

鎧でも着込んだら完全に女騎士のイメージだが……
と思っていると続けて、

「早く要望を言ってくれ!!
 ロイ様が苦しんでいるではないか!」

俺は、隣りにいるコマチといったん顔を
見合わせると、

「わかりました。
 とにかくいったん中へお入りください」

俺の言葉に冒険者の男女はギョッとして、

「眷属にするのではないのですか?」

戦士ふうの男の質問に俺は首を横に振る。

「病人を確認したので、緊急事態として
 条件は後回しにします!」

そして、ハーレイドッグ子爵一向に向き直ると、

「全員、ついてきてください」

俺の誘導のもと、7人が奥の廊下、そして
エレベーターへと向かい、

「な、なんだここは……」

「この街にこんなところが?」

「うぉっ!?
 ゆ、揺れる……!」

エレベーター初心者の三人は一様に驚く。
そして地下フロアに到着すると同時に俺がまず
飛び出し、

「病人を例のデラックス・ルームに運びます。
 クラークさんはローラさんに連絡して、病人食の
 用意を!
 ミントさんは、パトラさんと子供たちに
 状況を伝えてください!

 コマチは俺の護衛としてついてきて」

魔境の森のダンジョンにいた子供たちは、
今日の日中にこちらへ集めていた。

もしクラークさんとミントさんが帰ってこない
事態となると、パトラさん・コマチさんが出動する
状況となる。
そうなると、あちらのダンジョンに子供たちだけで
留守番してもらう事になってしまう。

またそうならなくても、護衛として二人のうち
どちらかは必ずこちらにいる事になり―――
リナもいるとはいえ、それだけであちらの
子供たちの面倒を見るのは大変だと思ったからだ。

幸い、向こうの一階と同じ施設はコピー出来て
いるので、問題なく収容出来たのである。

俺の指示で、戦士と女シーフの冒険者は
それぞれの目的地へと早足で去り、

「ハーレイドッグ子爵家の方々は、俺について来て
 ください」

廊下ではあるが、異世界の光景に飲まれて
いたのか、俺の声に三人がハッとなって
ようやく我に返る。

そして団体部屋のある方の反対側―――
魔境の森のダンジョンでいえば、入り口の方へと
足早に進み、

「こちらです」

扉を抜け、廊下へと飛び出る。
その先には予めカスタマイズで設置した、
一番豪華な部屋があり―――
子爵家一行と共に中へ入ると、

「な……」

「お、王宮?」

「もしかして君は、どこかの貴族なのか?」

その質問には答えず、まずはマリア様を誘導。
ベッドの上にロイ様を寝かせるよう促す。

ただ、具合はそれほど酷くは無いようだ。
少なくともこの世界に来て最初に見た、
グレンよりはよっぽど。

まあ逃げて来た奴隷と、貴族の子息。
環境も栄養状態も比べられるものではないけど。

備え付けのタオルで体を拭かせ、まずは
ドラッグストアから持ってきた電子体温計で
熱を測る。

「それは?」

「体の熱さを測る魔道具です」

父親、ガド様の問いに答えながら少年の
脇に挟ませ、待つ事十秒ほど。

『ピピピッ』という音を確認後取り出し、

「38度5分……
 薬と食事さえしっかりしていれば大丈夫だと
 思いますが、肺炎を起こしかけている可能性も
 あります。

 とにかく、少しでも何か食べて頂いて、
 それから薬を飲んでもらいます」

俺が一通り説明を終えると、

「ん……」

ベッドの上で恐らく父親譲りの、色はまだ
薄いがブラウンの短髪の少年―――
ロイ様が目を開ける。

「ロイ!」

「ロイ様、大丈夫ですか?」

母親とアマンダ様が彼に駆け寄る。
そこで俺は、果実の味付けがしてある
経口補水液を取り出し、コップに注ぐ。

「それは何かね」

ガド様の問いに、俺はそれを彼に差し出し、

「これをロイ様に飲ませてください。
 心配なら味見してもかまいません」

すると、無言でアマンダ様がそれを受け取り、
一口、口に入れる。

「……!
 これは、ただの水では無いな?」

「はい。
 今、ロイ様はすごく汗をかいておりますが、
 水分以外にもいろいろと体から失われて
 います。

 これには、そういう不足分が入って
 いるんです」

マリア様の手で少年がそれを口にすると、

「……お、おいしい、です」

ロイ様はゴクゴクと勢いよく飲み始め、
さらにそこへノックの音がして、

「病人食をお持ちしました」

ローラさんが、メイドワゴンに人数分の、
おかゆ、クリームシチュー、ポタージュを
運んできた。

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