何にでもなれるおっさん

白紙 津淡

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 勇敢なる少年を小指大からたくましい青年サイズへと大きくしてあげたおっさんが夕暮れの町を歩いていると、これまたとびきり美しい娘さんと、見るからに優しそうな魔女に出くわしました。
 聞けば親切なことにその魔女、元々ボロを着て薄汚れていた娘さんのなどを魔法でとってもとっても綺麗に整え、今から王子様が開く舞踏会に送り出してあげようと言う所なのだそうです。
 でも……一方で、魔女は何やら困り顔と言うか、浮かない顔と言うか、何ともこないような微妙な顔をしています。

「どうにも、ちと何か足りんような……」

 首をひねる魔女の隣で、魔女が娘さんに用意したものを一つ一つ見ていってみると、かぼちゃの馬車、クマネズミの御者、ハツカネズミの馬、トカゲの従者、そして美しいドレス……おっさんは「ふむ、よしきた」と、一人こっそり手を打ちました。
 そして二人と別れたあとで小屋の影に隠れ、早速一そろえのになります。

「ああ、そうそう! これじゃよ、これこれ!」

 おっさんと別れるや、ふいに記憶の片隅にを思い出した魔女は、思わず手を叩いてその想起を大変喜びました。
 なので、おっさんはおっさんでもちろん、それをこっそり喜びました。
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