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1章
帰還と聖者様
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少し道の真ん中で寝転んでいたら、疲れもすっかり取れてしまった。
これが休暇か、これが休憩か!
「よし、帰るか」
あまり性に合わなかった。もう少しせわしなく動いているほうが性に合っている気がする。
ので治療院に戻る。
「あの子......さっきの......」
「ほんとだ......大丈夫かな?」
ちらちらと街の人たちに見られている。会話を聞いてみようと思ったが、小声過ぎて聞こえなかった。
が、何事もなく治療院に着いた。
もう我が家のような安心感を抱いている。まだ就職して一日と経っていないというのに。
とりあえずドアを開く。
「なんじゃこりゃ」
そこに広がっていたのは、朝残っていた負傷者が二倍くらいになって戻ってきていた光景。控えめに言って地獄絵図。
もうこうやって治療院を困らせて聖女を出動させ、拝もうとしているように見えてきた。
が、実際問題として魔物が強くなっているし、ポーション――――即時回復ができる薬――――も高騰傾向。はっきりと迷惑ごとと割り切れないからそこまで悪く言えない。
さっさと治してしまいたい気持ちもあったが、俺のように生計を立てている人がいると申し訳ないという、社会的しがらみを感じていた。
が、そこで周りの騒乱の中、透き通った声が聞こえた。
「帰ってきましたか、聖女様がお呼びです、すぐに部屋へ!」
受付の人が顔を真っ青にしながら、しかしはっきりと伝えてきた。
とりあえず指示に従おう。俺はすぐに最初に聖女様に会った場所へと入る。
「ロードさん、休憩開けすぐに申し訳ないのですが、すぐに治療をお願いします」
「わかりました、ちなみに原因は?」
「怪我人が口々に魔物が強くなっている、と言っていたようですが」
やはり知っていたようだ。なら俺からこれ以上言うこともないか。
「ではすぐに治癒してきますね」
「はい、お願いします」
すぐに俺は部屋から出ると、治療をするために軽症者の集まる部屋へと移動するのだった。
「あれだけ治癒しといてぴんぴんしているなんて......」
聖女は走り去っていくロードの背につぶやく。
が、誰にも届くことはなかった。
走ってきてすぐ、魔力を込める。
「治療しますよー、そいっ」
その瞬間、緑の光があふれ出した。
「無詠唱で......!?」
周囲から驚愕の声が漏れる。まぁ、普通は詠唱するってことは知っている。
まぁ、デメリットとして無詠唱は魔力消費が上がるらしいけど、元から魔力が多いほうの俺にはそこまで関係なかったりする。
にしても、これほどまでに怪我人が増えるなんて、仮にも魔物を狩ることによって生計を立てている人が、体を資本にしている人がここまで怪我をするとは思えない。
「あぁ......ありがとうございます聖者様......!」
思考しているうちに、周囲はなぜか跪いていた。
というか......
「聖者様ってなんだ......」
しかしその言葉に周囲は顔を背けるばかり、怪我を負っていた人たちも何も答えずなぜか跪いて祈りをささげてくるばかり。誰も返答はしてはくれなかった。
これが休暇か、これが休憩か!
「よし、帰るか」
あまり性に合わなかった。もう少しせわしなく動いているほうが性に合っている気がする。
ので治療院に戻る。
「あの子......さっきの......」
「ほんとだ......大丈夫かな?」
ちらちらと街の人たちに見られている。会話を聞いてみようと思ったが、小声過ぎて聞こえなかった。
が、何事もなく治療院に着いた。
もう我が家のような安心感を抱いている。まだ就職して一日と経っていないというのに。
とりあえずドアを開く。
「なんじゃこりゃ」
そこに広がっていたのは、朝残っていた負傷者が二倍くらいになって戻ってきていた光景。控えめに言って地獄絵図。
もうこうやって治療院を困らせて聖女を出動させ、拝もうとしているように見えてきた。
が、実際問題として魔物が強くなっているし、ポーション――――即時回復ができる薬――――も高騰傾向。はっきりと迷惑ごとと割り切れないからそこまで悪く言えない。
さっさと治してしまいたい気持ちもあったが、俺のように生計を立てている人がいると申し訳ないという、社会的しがらみを感じていた。
が、そこで周りの騒乱の中、透き通った声が聞こえた。
「帰ってきましたか、聖女様がお呼びです、すぐに部屋へ!」
受付の人が顔を真っ青にしながら、しかしはっきりと伝えてきた。
とりあえず指示に従おう。俺はすぐに最初に聖女様に会った場所へと入る。
「ロードさん、休憩開けすぐに申し訳ないのですが、すぐに治療をお願いします」
「わかりました、ちなみに原因は?」
「怪我人が口々に魔物が強くなっている、と言っていたようですが」
やはり知っていたようだ。なら俺からこれ以上言うこともないか。
「ではすぐに治癒してきますね」
「はい、お願いします」
すぐに俺は部屋から出ると、治療をするために軽症者の集まる部屋へと移動するのだった。
「あれだけ治癒しといてぴんぴんしているなんて......」
聖女は走り去っていくロードの背につぶやく。
が、誰にも届くことはなかった。
走ってきてすぐ、魔力を込める。
「治療しますよー、そいっ」
その瞬間、緑の光があふれ出した。
「無詠唱で......!?」
周囲から驚愕の声が漏れる。まぁ、普通は詠唱するってことは知っている。
まぁ、デメリットとして無詠唱は魔力消費が上がるらしいけど、元から魔力が多いほうの俺にはそこまで関係なかったりする。
にしても、これほどまでに怪我人が増えるなんて、仮にも魔物を狩ることによって生計を立てている人が、体を資本にしている人がここまで怪我をするとは思えない。
「あぁ......ありがとうございます聖者様......!」
思考しているうちに、周囲はなぜか跪いていた。
というか......
「聖者様ってなんだ......」
しかしその言葉に周囲は顔を背けるばかり、怪我を負っていた人たちも何も答えずなぜか跪いて祈りをささげてくるばかり。誰も返答はしてはくれなかった。
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