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1章
日給
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「ロードさん、それでは上の部屋に来てくださいね」
聖女様からのお達しだ。
こうやって一日に何度も会うと聖女様の神の代行者感が失われてるな。
とりあえず、すぐそこにいた真っ青な受付の人に話を聞いてみる。
「すみません、聖女様ってあんなに頻繁に会えるものなんですか?」
すると真っ青な顔をゆっくりと上げ、小声を出し始めた。
「――――いえ、一日部屋から出ないことも――――うっ」
「ありがとうございます」
苦しそうな声というかもう吐く一歩手間くらいまで来ていそうで本当に、ごめんなさいの気持ちでいっぱいです。ごめんなさい。
しかし有益情報だった。
どうやら聖女様がこれだけ出てくるのはこの怪我人の多いご時世のせいらしい。
宗教的には大丈夫なんだろうか、と少し不安になるものの、とりあえず呼ばれた手前、長く待たせるのも悪い。
のですぐに部屋へと向かう。
「ロードさん、今日は一日お疲れさまでした。今日のお給料です」
そう言われ、麻袋をもらう。
いつもよりずっしりと、重めの金属音が小さくなる。
まぁ、きっと銅貨と銀貨が多く入った結果重く感じているだけだろう。
「ちなみに参考程度に聞きたいんですけれど、ここに来る前は何をされてて、どれくらいもらっていたんですか?」
聖女様は一応、と付け加える。
どうやら本当に興味程度で聞いているようだ。
「まぁ、ギルドに所属して依頼を」
「あら、そうだったんですね。それはそれは、懐も寒くなったりはしなかったでしょう?」
ふふ、と笑い声が漏れていた。が、そんなことはない。
「いえいえ、出費もかさむんで、ほとんど貯金なんてなかったですよ」
その言葉を聞いて、聖女様の笑顔が凍り付いたものになってしまった。
どうしたんだろうか。
「――――ちなみに、日給は幾らぐらいで?」
「えぇっと......銀貨八枚くらいですね、一日あたり」
聖女様の頬がひきつった。何が原因かはわからないが、その反応が良いものには感じられなかった。
俺からどうしたんですか、と聞くか悩んでいるうちに、聖女様の質問がまた、飛んでくる。
「えっと......まさかと思いますけど、装備のメンテナンスとかは」
「込みで八枚ですね、まぁ後方だったので壊れるものと言っても靴と杖程度ですが」
「そうですか......大変だったのですね」
聖女様がもう俺を哀れな子を見ているようである。
というか、手を合わせているあたり神に祈らないといけないくらい俺がどうしようもないくらいかわいそうみたいになっている。解せない。
と、聖女様が祈りを終えたようで、「ふぅ」と一息ついた後、俺の手にある麻袋を指さした。
「それでしたら、袋の中身を確認してみてください」
「わかりました」
なぜかはわからないが、特に断る理由もないからと開いてみる。
「はひゅ......」
思わず変な声が出た。
中に入っていたのは銅貨でも銀貨でもなく、金貨だった。
「重傷者二十二名、軽症者六十名。重傷者一人につき金貨二枚、軽症者一人につき銀貨一枚ですので、締めて金貨五十枚です。――――あの、口開きっぱなしですが大丈夫ですか?」
おおっと、いけない。
すぐに情けなく開ききっていた口を閉じると、苦し紛れの咳ばらいを入れる。
「そ、それでは、今日はお疲れさまでした。明日もまた来ていただけると嬉しいです」
「ありがとうございました。明日も来て良いのであれば是非お願いします。それでは、失礼します」
聖女様の笑いをこらえる挨拶を聞きながらも、最後だけは特に丁寧に退室した。
それにしても......
そう思いながらも、手に持った麻袋――――今日の給料を眺める。
「こんな大金、もらったことない......もしかして」
パーティーの人たちに、分け前結構持って行かれていたのか?
その可能性が脳裏をよぎった。
そういえば俺はそういえばそもそも報酬金がいくら出ていたのかすら知らなかった。もしかしたらあいつら......。
そう思ったが、もう関わらないであろうパーティーのことを考えるのも、もらえない金のことを考えても無駄だと思い、すっぱり思考から切り捨て、麻袋片手に大通りに出る。
そしてロードはどこか軽い足取りで、今晩止まる宿を探しに行くのだった。
聖女様からのお達しだ。
こうやって一日に何度も会うと聖女様の神の代行者感が失われてるな。
とりあえず、すぐそこにいた真っ青な受付の人に話を聞いてみる。
「すみません、聖女様ってあんなに頻繁に会えるものなんですか?」
すると真っ青な顔をゆっくりと上げ、小声を出し始めた。
「――――いえ、一日部屋から出ないことも――――うっ」
「ありがとうございます」
苦しそうな声というかもう吐く一歩手間くらいまで来ていそうで本当に、ごめんなさいの気持ちでいっぱいです。ごめんなさい。
しかし有益情報だった。
どうやら聖女様がこれだけ出てくるのはこの怪我人の多いご時世のせいらしい。
宗教的には大丈夫なんだろうか、と少し不安になるものの、とりあえず呼ばれた手前、長く待たせるのも悪い。
のですぐに部屋へと向かう。
「ロードさん、今日は一日お疲れさまでした。今日のお給料です」
そう言われ、麻袋をもらう。
いつもよりずっしりと、重めの金属音が小さくなる。
まぁ、きっと銅貨と銀貨が多く入った結果重く感じているだけだろう。
「ちなみに参考程度に聞きたいんですけれど、ここに来る前は何をされてて、どれくらいもらっていたんですか?」
聖女様は一応、と付け加える。
どうやら本当に興味程度で聞いているようだ。
「まぁ、ギルドに所属して依頼を」
「あら、そうだったんですね。それはそれは、懐も寒くなったりはしなかったでしょう?」
ふふ、と笑い声が漏れていた。が、そんなことはない。
「いえいえ、出費もかさむんで、ほとんど貯金なんてなかったですよ」
その言葉を聞いて、聖女様の笑顔が凍り付いたものになってしまった。
どうしたんだろうか。
「――――ちなみに、日給は幾らぐらいで?」
「えぇっと......銀貨八枚くらいですね、一日あたり」
聖女様の頬がひきつった。何が原因かはわからないが、その反応が良いものには感じられなかった。
俺からどうしたんですか、と聞くか悩んでいるうちに、聖女様の質問がまた、飛んでくる。
「えっと......まさかと思いますけど、装備のメンテナンスとかは」
「込みで八枚ですね、まぁ後方だったので壊れるものと言っても靴と杖程度ですが」
「そうですか......大変だったのですね」
聖女様がもう俺を哀れな子を見ているようである。
というか、手を合わせているあたり神に祈らないといけないくらい俺がどうしようもないくらいかわいそうみたいになっている。解せない。
と、聖女様が祈りを終えたようで、「ふぅ」と一息ついた後、俺の手にある麻袋を指さした。
「それでしたら、袋の中身を確認してみてください」
「わかりました」
なぜかはわからないが、特に断る理由もないからと開いてみる。
「はひゅ......」
思わず変な声が出た。
中に入っていたのは銅貨でも銀貨でもなく、金貨だった。
「重傷者二十二名、軽症者六十名。重傷者一人につき金貨二枚、軽症者一人につき銀貨一枚ですので、締めて金貨五十枚です。――――あの、口開きっぱなしですが大丈夫ですか?」
おおっと、いけない。
すぐに情けなく開ききっていた口を閉じると、苦し紛れの咳ばらいを入れる。
「そ、それでは、今日はお疲れさまでした。明日もまた来ていただけると嬉しいです」
「ありがとうございました。明日も来て良いのであれば是非お願いします。それでは、失礼します」
聖女様の笑いをこらえる挨拶を聞きながらも、最後だけは特に丁寧に退室した。
それにしても......
そう思いながらも、手に持った麻袋――――今日の給料を眺める。
「こんな大金、もらったことない......もしかして」
パーティーの人たちに、分け前結構持って行かれていたのか?
その可能性が脳裏をよぎった。
そういえば俺はそういえばそもそも報酬金がいくら出ていたのかすら知らなかった。もしかしたらあいつら......。
そう思ったが、もう関わらないであろうパーティーのことを考えるのも、もらえない金のことを考えても無駄だと思い、すっぱり思考から切り捨て、麻袋片手に大通りに出る。
そしてロードはどこか軽い足取りで、今晩止まる宿を探しに行くのだった。
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