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1章
治癒の制限
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「よく寝た......」
目が覚める。
昨日は結局いつもと同じくらいの価格帯の、けれど顔は合わせたくないから別の宿に泊まった。
が、一日そういえば寝ていなかったせいか、また起こす人が誰もいなかったせいか。起きたときには太陽が真上にまで来ていた。
パーティーにいたときは徹夜で見張りはそれこそ日常だったけど、あの頃は仮眠を取ってもすぐにたたき起こされて戦闘していたし、街に戻ってきても定休日なんてあってないようなもので、メンテナンスをしたらすぐに丸一日中寝て依頼をこなしていたから、これほど徹夜の次の日に眠れたのも久々だ。
「いい朝だ......」
ここにはもう昼だ、とツッコミを入れる人はいなかった。
ぐぐっと、背伸びをする。
そして数秒、伸びた後に、宿を後にした。
「あぁ、そういえば」
自分の服を見て思い出す。
そう、未だインナーとローブ以外を持っていないのだ。
二着くらい、寝間着を買いに行こう。そのほうが、もっと良い朝を迎えられるかもしれない。
「そうと決まれば......いや、先に治療院に顔を出すか」
昨日聖女様からかけられた言葉を思い出し、仕事がないならないに越したことはない、と一度治療院に向かった。
「あ......! 聖者様、治療を早くお願いします!」
聖者様......? と思ったら、そういえば昨日自分がそう呼ばれていたことを思い出した。受付の人もこっちを見ながら言っているし、俺のことだと思っていいだろう。あまり気に入ってはいないけど。
「にしても、昨日の今日でそんなに......?」
疑問ではあった。昨日何十人治療したかは覚えてこそいなかったが、そんな昨日の今日で追い付かないほどに怪我人が出るとは思えない。
「怪我人は何とか間に合っているんですけど、毒の治療薬が足りず......魔法薬も残りわずかでして」
「なるほど、お給料的なものは大丈夫ですか?」
「お給料......?」
頭の上に疑問符が浮いていた。
どうやら二人の間で何か違うところがありそうだ。
「とりあえずそれは後ですね、すぐに治療してきますね」
「あ、はい、お願いします」
怪我人を見ていないから断言こそできないものの、そんなに余裕があるとも思えないし、話していた結果長話とかになって誰かが死んだら、それは胸糞悪いし治療院の信頼問題にもなる。
まぁ、とどのつまり大事に至る前に治療しとこ、ってことだ。
すぐに移動し、部屋のドアを開けた。
そこには怪我こそないものの、壁にもたれかかる人や床に倒れ込んでいる人、呻いている人など様々だ。
が、共通して顔が赤く、汗がひどい。
「はい行きますよー、ほい」
一応、声をかけて魔法を使用した。
結果、その部屋にいた大多数が立ち上がれるほどに治癒した。
が、一人だけは未だにうずくまっただけだった。
死んだか......? とのぞき込む。
一応治療にも限度がある。それはそこに転がっている治癒術師でも、もちろん俺でも、それこそ聖女様でも、使っているのは同じ魔法。できないことは共通している。
一つは死者蘇生。いくら傷を治す、と言っても元と同じ形状に体を戻すだけ、瞬間的に死んだくらいならまだ大丈夫だろうが、数秒時間が経てば、魂が体から抜けてしまって綺麗な死体になるだけとなる。
つまり、治療しても治らなかった人はつまり死んだ人とほぼ同義だ。
「大丈夫か......?」
声をかけてみる。が、返事がない。
手をおでこに当てた。すると異常なほどの熱が手に当たってくる。
つまり、まだ生きている。
「治癒できない......?」
その熱は確かに生きていることを伝えてくるが、何故治癒できなかったのかわからなかった。
と、そこで首筋にあるものを見つけた。
「これは面倒だ、そい」
その瞬間、バチン、という音とともに光が弾ける。
これで大丈夫だろう。もう一度おでこに手を当ててみると微妙にだが熱が下がっていた。
一応治癒を再度かけておく。まぁ、これくらいでいいだろう。
実はこの熱がだんだん下がっている状況から無理やり治す方法はあるし、出来るがそれは体への負荷がかかる少々危険な技だ。ソースは自分自身。
が、思い出しかけてまた封印した。あの記憶は思いだしたくない。
とりあえず、報告だ。
「そこの受付さん、少しいいですか」
「どうしましたか」
そういえば昨日と違って顔色は良さげだ。毒に対する魔法が使えなかったのだろうか。
とりあえず、やらなければいけないことをしに行こう。まぁ、急を要するわけでもないからここは礼儀作法というかマナーの通りに。
「聖女様との面会許可をお願いします、伝えたいことが」
今日はもう、休憩時間はないかもしれない。
目が覚める。
昨日は結局いつもと同じくらいの価格帯の、けれど顔は合わせたくないから別の宿に泊まった。
が、一日そういえば寝ていなかったせいか、また起こす人が誰もいなかったせいか。起きたときには太陽が真上にまで来ていた。
パーティーにいたときは徹夜で見張りはそれこそ日常だったけど、あの頃は仮眠を取ってもすぐにたたき起こされて戦闘していたし、街に戻ってきても定休日なんてあってないようなもので、メンテナンスをしたらすぐに丸一日中寝て依頼をこなしていたから、これほど徹夜の次の日に眠れたのも久々だ。
「いい朝だ......」
ここにはもう昼だ、とツッコミを入れる人はいなかった。
ぐぐっと、背伸びをする。
そして数秒、伸びた後に、宿を後にした。
「あぁ、そういえば」
自分の服を見て思い出す。
そう、未だインナーとローブ以外を持っていないのだ。
二着くらい、寝間着を買いに行こう。そのほうが、もっと良い朝を迎えられるかもしれない。
「そうと決まれば......いや、先に治療院に顔を出すか」
昨日聖女様からかけられた言葉を思い出し、仕事がないならないに越したことはない、と一度治療院に向かった。
「あ......! 聖者様、治療を早くお願いします!」
聖者様......? と思ったら、そういえば昨日自分がそう呼ばれていたことを思い出した。受付の人もこっちを見ながら言っているし、俺のことだと思っていいだろう。あまり気に入ってはいないけど。
「にしても、昨日の今日でそんなに......?」
疑問ではあった。昨日何十人治療したかは覚えてこそいなかったが、そんな昨日の今日で追い付かないほどに怪我人が出るとは思えない。
「怪我人は何とか間に合っているんですけど、毒の治療薬が足りず......魔法薬も残りわずかでして」
「なるほど、お給料的なものは大丈夫ですか?」
「お給料......?」
頭の上に疑問符が浮いていた。
どうやら二人の間で何か違うところがありそうだ。
「とりあえずそれは後ですね、すぐに治療してきますね」
「あ、はい、お願いします」
怪我人を見ていないから断言こそできないものの、そんなに余裕があるとも思えないし、話していた結果長話とかになって誰かが死んだら、それは胸糞悪いし治療院の信頼問題にもなる。
まぁ、とどのつまり大事に至る前に治療しとこ、ってことだ。
すぐに移動し、部屋のドアを開けた。
そこには怪我こそないものの、壁にもたれかかる人や床に倒れ込んでいる人、呻いている人など様々だ。
が、共通して顔が赤く、汗がひどい。
「はい行きますよー、ほい」
一応、声をかけて魔法を使用した。
結果、その部屋にいた大多数が立ち上がれるほどに治癒した。
が、一人だけは未だにうずくまっただけだった。
死んだか......? とのぞき込む。
一応治療にも限度がある。それはそこに転がっている治癒術師でも、もちろん俺でも、それこそ聖女様でも、使っているのは同じ魔法。できないことは共通している。
一つは死者蘇生。いくら傷を治す、と言っても元と同じ形状に体を戻すだけ、瞬間的に死んだくらいならまだ大丈夫だろうが、数秒時間が経てば、魂が体から抜けてしまって綺麗な死体になるだけとなる。
つまり、治療しても治らなかった人はつまり死んだ人とほぼ同義だ。
「大丈夫か......?」
声をかけてみる。が、返事がない。
手をおでこに当てた。すると異常なほどの熱が手に当たってくる。
つまり、まだ生きている。
「治癒できない......?」
その熱は確かに生きていることを伝えてくるが、何故治癒できなかったのかわからなかった。
と、そこで首筋にあるものを見つけた。
「これは面倒だ、そい」
その瞬間、バチン、という音とともに光が弾ける。
これで大丈夫だろう。もう一度おでこに手を当ててみると微妙にだが熱が下がっていた。
一応治癒を再度かけておく。まぁ、これくらいでいいだろう。
実はこの熱がだんだん下がっている状況から無理やり治す方法はあるし、出来るがそれは体への負荷がかかる少々危険な技だ。ソースは自分自身。
が、思い出しかけてまた封印した。あの記憶は思いだしたくない。
とりあえず、報告だ。
「そこの受付さん、少しいいですか」
「どうしましたか」
そういえば昨日と違って顔色は良さげだ。毒に対する魔法が使えなかったのだろうか。
とりあえず、やらなければいけないことをしに行こう。まぁ、急を要するわけでもないからここは礼儀作法というかマナーの通りに。
「聖女様との面会許可をお願いします、伝えたいことが」
今日はもう、休憩時間はないかもしれない。
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