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1章
最悪のストーリー
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「許可取れました、すぐにでも大丈夫です」
「ありがとうございます」
俺は速足に聖女様の部屋に行き、ドアをノックする。
「ロードです」
「はい、どうぞ」
「失礼します」
こんな形式ぶったものが今回初めてというのも少し、いや結構おかしい気もするが、それはとりあえず片隅に置いておく。
「それで、どうされましたか?」
聖女様は魔物の件と違って、反応的に何も知らないようである。
ので、端的に伝える。
「毒に犯された人の中の一人に、呪印がありました」
「......! 本当ですか」
確認、というよりも信じられない、という雰囲気のほうが強かった。
が、それだけ珍しいものでもある。この呪印というものは。
呪印、それは一部の呪術師にしか付与できない呪いの印。
刻まれた者に様々な効果と同時に代償を持って行く。
「あの呪印は刻まれた者の魔力を代償に悪化を促進する、って感じの効果だと思われます」
「あなた、呪印にも精通しているのですか?」
目を疑うような様子で聖女がこちらに詰め寄ってきた。
が、俺は首を横に振り、それを否定した。
「あくまで症状から推測しただけです。治癒魔法が効かず、ほかに目立った外傷の跡もない。そこから考えた推測です」
そう、あくまで推測。もしかしたら『治癒魔法を弾く』効果を『刻まれた者の寿命』を代償にして発動していたかもしれない。それは俺にはわからない。
「それで、その子はどこに」
「私が解呪しました」
その瞬間、聖女様の目が見開かれる。
「なんと......解呪、出来たのですね」
「治癒の延長線上ですよね?」
そう言われて、でも俺はそこに才能がなかったのか馬鹿ほど使ってようやっと、って感じだった。
まぁ、それもパーティーがそこの依頼を受けるからって......もうやめよ、追放されたパーティーを思い出すのは。
「全く別の魔法のはずなのに......」
小声で聖女様が何か言っていたが、思い出したくもないことを思い出していたせいでよく聞いてなかった。
「聖女様、どうかされましたか?」
「い、いえ、何でもないですよ」
聖女様の汗の量が増えていることが目に見えてわかった。
空調に異変はないところを考えると、焦っていると考えるのが普通だが......なにかあっただろうか。
とりあえず、話を続けよう。
今までは事実の報告。
そして今からは――――最悪の、推測だ。
「これから話すのは最悪の可能性です」
「――――! はい、どうぞ」
聖女様の纏う空気が変わった。
こういうところはさすが、聖女様と言った感じだろうか。
ともあれ、脳内で出来上がった最悪のストーリーを話す。
「現在、魔物が二割から五割――――怪我人が増えていることから、今なお強化され続けていると推測できます。そして見つけた呪印。この事態を引き起こしているのは、個人もしくは複数の呪術師によるものかもしれません」
魔物、という生物は、今なお研究が続いている。
分かっている特徴は、魔石、という核を持つこと、そして魔素――――魔力の源――――がたくさんある場所ほど強い、ということだ。
それ以外は種族、個体ごとにずれがあり、魔物という大きな区分で語ることはできないというのが今の考え方である。
「魔物、ですから。魔素を集めることの代償に、まぁ寿命でも持って行けば良いでしょう。目的はそれこそその相手に聞かないと、ですけど......」
そこで話が終わる。
沈黙が部屋を流れてどれくらい時間が経っただろうか。
やがて、聖女様のほうから、口を開いた。
「わかりました。この国を、市民を守るために全霊を尽くします」
「ありがとうございます」
俺は一礼する。
これだけ伝えたなら俺はもう用事はない。
「失礼します」と礼をして、俺はその部屋から退室した。
「ありがとうございます」
俺は速足に聖女様の部屋に行き、ドアをノックする。
「ロードです」
「はい、どうぞ」
「失礼します」
こんな形式ぶったものが今回初めてというのも少し、いや結構おかしい気もするが、それはとりあえず片隅に置いておく。
「それで、どうされましたか?」
聖女様は魔物の件と違って、反応的に何も知らないようである。
ので、端的に伝える。
「毒に犯された人の中の一人に、呪印がありました」
「......! 本当ですか」
確認、というよりも信じられない、という雰囲気のほうが強かった。
が、それだけ珍しいものでもある。この呪印というものは。
呪印、それは一部の呪術師にしか付与できない呪いの印。
刻まれた者に様々な効果と同時に代償を持って行く。
「あの呪印は刻まれた者の魔力を代償に悪化を促進する、って感じの効果だと思われます」
「あなた、呪印にも精通しているのですか?」
目を疑うような様子で聖女がこちらに詰め寄ってきた。
が、俺は首を横に振り、それを否定した。
「あくまで症状から推測しただけです。治癒魔法が効かず、ほかに目立った外傷の跡もない。そこから考えた推測です」
そう、あくまで推測。もしかしたら『治癒魔法を弾く』効果を『刻まれた者の寿命』を代償にして発動していたかもしれない。それは俺にはわからない。
「それで、その子はどこに」
「私が解呪しました」
その瞬間、聖女様の目が見開かれる。
「なんと......解呪、出来たのですね」
「治癒の延長線上ですよね?」
そう言われて、でも俺はそこに才能がなかったのか馬鹿ほど使ってようやっと、って感じだった。
まぁ、それもパーティーがそこの依頼を受けるからって......もうやめよ、追放されたパーティーを思い出すのは。
「全く別の魔法のはずなのに......」
小声で聖女様が何か言っていたが、思い出したくもないことを思い出していたせいでよく聞いてなかった。
「聖女様、どうかされましたか?」
「い、いえ、何でもないですよ」
聖女様の汗の量が増えていることが目に見えてわかった。
空調に異変はないところを考えると、焦っていると考えるのが普通だが......なにかあっただろうか。
とりあえず、話を続けよう。
今までは事実の報告。
そして今からは――――最悪の、推測だ。
「これから話すのは最悪の可能性です」
「――――! はい、どうぞ」
聖女様の纏う空気が変わった。
こういうところはさすが、聖女様と言った感じだろうか。
ともあれ、脳内で出来上がった最悪のストーリーを話す。
「現在、魔物が二割から五割――――怪我人が増えていることから、今なお強化され続けていると推測できます。そして見つけた呪印。この事態を引き起こしているのは、個人もしくは複数の呪術師によるものかもしれません」
魔物、という生物は、今なお研究が続いている。
分かっている特徴は、魔石、という核を持つこと、そして魔素――――魔力の源――――がたくさんある場所ほど強い、ということだ。
それ以外は種族、個体ごとにずれがあり、魔物という大きな区分で語ることはできないというのが今の考え方である。
「魔物、ですから。魔素を集めることの代償に、まぁ寿命でも持って行けば良いでしょう。目的はそれこそその相手に聞かないと、ですけど......」
そこで話が終わる。
沈黙が部屋を流れてどれくらい時間が経っただろうか。
やがて、聖女様のほうから、口を開いた。
「わかりました。この国を、市民を守るために全霊を尽くします」
「ありがとうございます」
俺は一礼する。
これだけ伝えたなら俺はもう用事はない。
「失礼します」と礼をして、俺はその部屋から退室した。
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