治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう

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1章

作戦会議は真夜中に

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 結果から言うと、寝間着を買うこともできず、治療に専念することとなった。

 正直、ここまで余裕がなくなるとは思わなかった。

 結局、危険な物やそもそも暗いという理由で活動自体が少なくなる深夜帯まで、治療は継続された。

 だが、呪印の治療ができるのが聖女様と俺だけだから、という理由だけで未だ治療院から離れられない状況が続く。



「はぁ......」



 呪術師がいるだろうことも、魔物が強くなっていることもほぼ確実となった。

 となると、この日々がずっと続くとは思えない。

 仮に今怪我している人たちがワンランク下の依頼を受ければ、高難易度の依頼がたまり、結果的に国が滅亡する。

 仮に問題を放置すればいずれ魔物が国を襲撃、呪術師の思い通りに国が蹂躙される。

 かといって討伐に向かえば、治療院が間に合わなくなり戦える人間が全員死ぬ。



 なら、方法は一つか。



 俺は、ある作戦を考えた。







 夜が深まり、受付も交代する、そんな時間になったころ。

 俺は、残業すること確定の時間であるにも関わらずそこを訪れた。



「聖女様への許可を」



「......またですか。というかあなたなら大丈夫だと思いますよ」



 受付の人はため息を吐いた後、そう呟く。

 はて、何故俺なら良いのだろうか......?



「なんでかわからない、って顔をしてますね、ロードさん」



 お見通しだったようだ。たった数日、会っただけだったというのにもうここまで読まれるとは。

 これは俺も数日で緩んでしまった、ということだろうか。

 参考程度に、どこで判断したか聞いてみよう。



「ちなみに、なんでそう思ったんですか?」



「女の勘です」



 ――――これほど参考にならない回答が飛んでくるとは思わなかった......



 もう諦め、俺は聖女様の部屋へと向かった。







 女の勘、という回答が来たから少し疑ってはいるものの、あの受付の人がそう言ったのならきっと、聖女様のところへ行ってももう問題ないのだろう。

 すぐに聖女様の部屋へと着き、ドアをノックする。



「はい、誰でしょうか」



「ロードです。夜遅くにすみませんがお話ししたいことが」



「は、はい、少し待っててくださいね」



 ドタドタ、という音が部屋の中から聞こえる。

 アポなしというのはこういうこともあるからあまりよろしくはないと思うんだけど......まぁ、正直頻繁に用事が出来ているから受付を通すのは面倒と感じたのかもしれない。



「はい、お待たせしました」



 肩で息をしながら、部屋から聖女様が出てきた。

「すみません」と謝罪する。



「構いません。どうぞ、お入りください」



「失礼します」



 俺は部屋の中に入ると、一つ提案をする。

 元から真面目な話だというのは分かっていたのだろう、厳格な雰囲気が出ていた。



「現状を打開するために、作戦を立てました」



「聞きましょう」



 もう仕事が山積みだったからか、それとも悲しむ民をこれ以上見たくないからか、即答で返事がかえって来た。

 正直、人間だから前者だろう、と今までは断定していたが、聖女様の性格的に後者があり得てしまうと思ってしまった。

 がまぁ、聞いてくれるならそれだけで今は万々歳だ。

俺がこの時間を訪れたのは単純に、昼だと治療にいかなくてはならず途切れ途切れとなることがわかっていたから。

聖女様に負荷はかかるが......一日だけ、お願いしよう。



「私の立てた作戦は――――」



 聖女様と作戦会議が続き、夜が明けても、細部を詰め続けた。
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