治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう

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1章

作戦決定

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「そうですね、これで行きましょう」

「はい......それでは、肝心の決行は」

 夜が明けるほどに思考を重ねて、結果作戦の詳細を決定できた。

 が、肝心の決行が問題だ。
 早く決行することに越したことはないが、成功しなければ意味がない。
 もし早く決行するならば、数人いや数十人の死者を覚悟して、今から寝不足、集中力のかけた聖女様を連れていくこと。
 次は今日一日で聖女様に力を貯めてもらい、翌日決行する。デメリットとして今日一日俺が持たせるから、翌日は聖女様メインの立ち回りになる。
 最後に三日、時間を取る。魔物による被害も出るだろうし、呪印を今以上に刻まれるだろう。が、俺も聖女様も万全の状態で挑める。

 ここまで俺と聖女様の状態にこだわるのは、単純にこの作戦の要が二人のバフという作戦となったからだった。
 二人のバフにより、全体の能力を上げ、敵との差をなくす。
 簡潔に言えば、そんな半分ごり押しの作戦だった。細かい依頼金や配置、殲滅箇所や地図などを頑張って考えていたが、それも恐らくほとんど意味をなさないだろう。

 この方法は、本来はそこまで推奨されない。
 というのも、バフをかけられている状態に慣れてしまって、その後の活動に違和感が生じる人が必ず出るからだ。
 もちろん、体が重く感じるわけだから、怪我の頻度も増える。
 が、放置するわけにもいかないし、止むを得ない、というものだろう。

「そうですね......」

 戦う人――――ギルド所属の人たちが減らされることは一番の問題。俺のような非力な人だけが残ってしまえば、この一連の騒動を止めることはできない。から最後は無し。
 一つ目と二つ目――――どちらか。

「聖女様、今から行く、と言って十分なバフは出来そうですか」

「いえ、それは......不可能です」

 まぁ、そうだろうと思った。正直聖女様の力が十分に出ない状態で戦闘しようとは思わない。
 というのも、もちろん保険の意味もあるのだが、それだけでなく宗教的な理由もある。
 ここで聖女様が力を誇示することで、これからの宗教の拡大につながる、というものだ。
 正直、治療院に働きに来ている俺が宗教に巻き込まれるのはあまり良い気はしないが、ここしか働けそうな場所もないし仕方ない。

「それでは、明日行きましょう。私の魔力的には万全ではないですが、ある程度なら働けますし」

「わかりました。それで行きましょう。それでは私は今から明日に備えますね」

「はい、お願いします」

 日時も決定したことだ。用事も終わったし、聖女様はこれから備えるから俺がいては面倒だろう。
 すぐに「失礼します」とだけ声をかけて退室。
 とりあえず、受付の人に様子を聞いてみる。

「けが人はどんな感じで?」

「あ、おはようございます。そうですね、まだ朝早いということもあって、まだ夜勤の人たちで回ってます。一応、近くで待機してくれると嬉しいのですが......」

「あ、まぁ、分かりました」

 戦闘する人たちも雇わないといけないから......ギルドに向かうか。

「すみません、用事があるんで、ギルドにすぐ行ってきます」

「わかりました、すぐに、お願いします」

 俺は「わかっていますよ」とだけ声をかけ、バフをかけて走って向かった。



「ギルドに、依頼を頼む。大規模で」

「はい......はい?」

 見慣れた俺の顔を見て「あぁ、またスープを飲みに来たのか」と思われていたようで、食堂では皿にスープが盛られているところだった。

「依頼内容は明日早朝から森の魔物の殲滅。報酬は......一パーティーにつき、金貨五枚」

 驚いた顔は未だ治ってはいないものの、それでも受付嬢をしているだけある、紙に内容をまとめている。

「依頼金は最大どれくらいですか?」

「これで」

 俺は麻袋をそのまま渡した。
 中には金貨五十枚が。

「......わかりました。すぐに」

 その麻袋を奥に持って行くと、依頼の紙を貼りだしていた。

「治療院にいる。何かあれば」

「わかりました。そのように言っておきます」

 どうやら受付嬢も交代の時間らしい。が、引継ぎの時に言ってくれるなら大丈夫だろう。
 俺は大丈夫だと思うが、すぐにさっき走った道を通って治療院へと走り出した。
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