治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう

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2章

急転

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 歩いている途中。

「式って、具体的に何かするか知らないんですけれど......」

「そうですね、向こうの指示通りにしていて、問われたことを答えたら大丈夫ですよ。形式的に式、と呼んでいるものの、近年は教皇様と顔を合わせるためのものになっていますし」

「そんなものですか」

 確かに、公開してするような式でなければそうなっていくのかもしれない。
 まぁこっちとしても負担が少なくて楽だ。

「さて、着きましたよ。準備はいいですか?」

 目の前には大きな扉が。
 そこでアミリアさんから確認される。
 正直なんの準備をしていけば良いのかがさっぱりわかっていないが......立ち止まっても仕方がない。

「はい、大丈夫です」

 俺は、そう答える。
 アミリアさんはそれを見て合図を送る。

「新たに聖者認定を受ける者、ロード」

 その声が聞こえた瞬間、その大きな扉の前に立っていた兵士二人がゆっくりと扉を開け始める。

「中に入れ、ロードよ」

 その声に従って、俺は部屋の中に入る。
 周囲には兵士が―――十名ほど、管理職だろう人が五名、そして教皇様とその隣に一人の女性――――おそらく大聖女様とやらだろう―――と、合わせ十七名の人が俺を見ていた。

「止まれ」

 再び指示が。俺はその場で止まる。
 ちょうど部屋の中心、それも兵士に囲まれる場所で止まったのは偶然ではないだろう。
 正直探知魔法を使用したい気持ちでいっぱいだが、教皇様という宗教のトップの前で魔法を使用するとそれこそまずいことになる、と自制する。

「それでは、式を行う」

 その瞬間、周囲の、教皇様と大聖女様以外の全員が跪いた。
 俺もそれに倣った。

「ロードよ、其方を七神教の聖者と名乗ることを許そう」

「――――ありがたき幸せ」

 指示でなかったために迷っていたら、式が一行に進む気配がなかったため返答した。
 これだけで終わる式なら、正直服を着る時間のほうが長かったが......と思っていると、これから儀式のようなものがあるらしい。
 扉の方から二人ほどの女性が金の杯を持ち、祈り、そして歌を歌う。

 七柱の神への、祈りの歌を。

 やっと終わりだと、だれもが息を吐いた頃だった。


 事態が急変する。

「失礼します!」

 大声で、扉の方から声が聞こえた。

「どうした、式の途中だぞ」

 教皇様が咎める。
 が、それを気にせず兵士らしき男が告ぐ。



「聖女アミリア様が、賊に攫われました!!」



 その瞬間、俺の心臓がおかしな音を立ててなったような感覚に陥った。
 脳裏でフラッシュバックするのは、試練の記憶。

 アミリア様を選ばなかった結果、あの人が死んでいく光景。
 あの目を思い出すだけで、俺は世界を滅ぼしたくなる激情に駆られる。
 今までに感じたことのないほどの感情の高ぶり。
 今すぐにでも賊を八つ裂きにしたいと叫ぶそれを無理やり押さえつけ、俺は立ち上がる。

「アミリア様を助けに参りますので、失礼します」

 俺は俺のために行われている式よりも、アミリアさん一人を優先する。
 俺が聖者という肩書を得るための式と、アミリアさんの無事を天秤にかければ、どちらに傾くかは明白だ。
 形骸化している式ならなおさらだ。

「待て、むやみに探しても見つからない。地理にも弱いだろうし、戦闘能力のことも聞いている。続報を待ち、見つけてから出動する。全兵士に戦闘準備だ!」

 教皇様が俺を言葉で止める。
 確かに、その言葉には納得するしかない。俺も無理やりそこで立ち止まる。だが、心としてはすぐにでも助けに行きたかった。
 が、全兵士を、と言っているあたり教皇様も万全の態勢で、取返しに行くだろうことがわかる。

 バタバタと周囲の人間がせわしなく動く中、大聖女様が初めて言葉を発した。


「せめて、あの頑固な子が指輪を預けていれば......」


「指輪......ですか?」

 俺はつぶやきに対して質問をする。激情が、手掛かりがあるならと収まった。
 正直心当たりしかなかった。これを見越して託されたのではと思うくらいに、それは記憶に残っている。

「そうです。金の指輪に赤い宝石なのですけれど......あの子は頑固に誰にも預けなかったのですよ。早く頼りになる人に、と言っているのに、危険にさらすから、と言って頑なに......」

 大聖女様のため息が小さく漏れる。

「その指輪があれば、アミリアさんは?」

「えぇ、すぐにでも救出に......心当たりが?」

 どうやら根掘り葉掘り聞く俺に何かを感じたようで、期待のまなざしを向けてきた。
 俺は確かにポケットの中に入れたそれを取り出す。

「その指輪は――――確かに、あの子の」

 その指輪は貰った時とは違い、光を発していた。
 それも、一直線に。

「その方向に聖女アミリアはいる。行け、聖者ロードよ」

「はい! 失礼します!」

「外まで案内します」

 俺はすぐに部屋を退室すると、兵士の案内のままに建物の外まで移動するのだった。
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