英雄教科書

大山 たろう

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1-6 いつも唐突に

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「今日の魔法理論はそうだなぁ、ライズ先生のお手並み拝見と行こうかねぇ」



「......え?」



 二日目、授業始まってからそういわれても困るというか、なんというか......



「先生ならできます! 頑張ってください!」



 隣で励ましてくれるのはエアリ。きっとトルネ先生も意見を変えないだろうし、早いうちからしたほうがよさそうだ。



 そう考えたライズは、さっさと授業を始める。



 とはいえライズの気が向かないのは事実。のっそのっそと歩く姿に、トルネ先生は青筋を額に浮かべているが、何も口出ししないようだ。



 ゆったりと前に立ったライズは、今日の内容を説明する。



「そうだな、今日は......初級魔法、魔弾について話そうか」



「なんで初級魔法、しかも誰でもできる無属性をするんですか!?」



 驚愕の声にあふれる教室。それもそうだろう、昨日中級魔法について話されたばかりだというのに、逆戻りして初級の、最初に倣うような魔法をもう一度されることに、腹を立てたのは当然と言えば当然だろう。



 しかし、その声を無視してライズは話をする。



「皆は知っているだろうか? この魔法の使い手が、ある世界を救ったという文献があるということを。その人はのちに『幻影ノ射手』と呼ばれたことを。魔法は威力とか、発動時間とか、確かに大切なパラメータがいくつも存在する。けれど、最後は使い方だ。耐性のある敵にいくら同じ魔法を打ち込んだって、威力も発動時間も関係ないだろ? 今日は、魔弾の構造、詠唱とともに、魔法の使い方について、話していこう」



 そう、ライズは最初の話を締めくくった。



 まだこの授業は始まったばかり、文献のことを知らなければ、何を伝えたいのかも、何もかもわからない生徒がほとんどだった。



 しかしエアリだけは、目を輝かせながら聞いていた。



 まるで、あの人は間違えない、そういわんばかりの目だった。









「さて、詠唱は『魔力よ 集いて固まれ 掃射せよ』 放出した魔力を集めて球体にし、それを撃ちだす。それがこの魔法だ。重要なのは、掃射せよの句を使った時、ため込むことはできず、作り出したものをすべて撃ちだしてしまうことにだけ注意してくれ。それで、今日の本題は、この魔法をどう使うか、だ。」



「もし、魔弾を五発作り出したとして、まずどこに撃つ?」



 そう聞くと、まさか当てられるとは思っていなかった様子のエアリは、「うううう」とうなりながら、一つの答えを出した。



「前に出します」



「その通りだが......それしか意識できていないようであればまだ戦わないほうが良い」



「うぅ......」



 エアリのうめき声が漏れる。



「はい」



 手を上げ、そう声を出したのはガイア。



「ガイア、どう撃つ?」



「頭に二発、胸に三発」



「倒す気満々だなおい.....」



「それで、どう?」



 首をかしげてガイアは聞いてくる。それに対してライズは手を顎に当てながらも答えた。



「まぁ、答えがあるってわけじゃないから何とも言えんが......その方法は、格下にしか通用しないだろう」



「そしたら、先生はどこに撃つの?」



「足元の地面に三発、胸に一発、頭に一発」



 そう、ライズは迷いなく答えた。



「どうして足元ですか?」



 エアリはそう質問してくる。



「足元を崩せば、慣れないやつは魔法を失敗するし、慣れてるやつでも動きが鈍る。そこを撃てば当たるだろ?」



 そう言ったところで、後ろのトルネ先生が真っ赤になって怒鳴った。



「いい加減にしろ! 魔法師同士の戦いを何だと思ってるんだ! 正々堂々、魔法をぶつけ合え!」



「トルネ先生。お言葉ですが、魔法師同士の殺し合いを経験した事がありますか?」



「殺し合いだと? むしろライズ先生はご存じか? もう戦争は終わった!」



 そう、トルネ先生は挑発するような口ぶりをする。が、顔が真っ赤で、早口になっているため、ライズだけでなくエアリやガイアですら全く挑発に聞こえなかった。



「だからこそ言っています。魔法師同士で、殺し合いをしたことがあるか、と」



 一歩も引かずに言い合う両者。さらに言い合いはエスカレートしていく。次第にボルテージは上がり、トルネ先生の体からは魔力があふれ出した。



 もういつ魔法が放たれてもおかしくないこの状況、生徒もそれを止めようとしている、が、抑えられるような雰囲気ではない。

 まずい、生徒がそう確信して、目を閉じた。



 が、その時は来なかった。



「緊急、緊急! 学校内に不審者が侵入しました! 直ちに身を守る行動をとってください!」



 放送が流れた。その様子から、この状況がどれだけ異常かは考えるまでもないだろう。



「ライズ先生、ここでしっかり見せましょう、魔法師同士の戦いを!」



 そう言って、トルネ先生は運動場へとかけていった。

 もちろんそんな都合の良い人質を見過ごすわけもなく、校舎から何人もの黒い服装に身を包んだ人が現れた。



「私が魔法師戦というものを見せて差し上げましょう! 我が望むは火の槍 『火槍』!」



 詠唱破棄を行い、短縮詠唱で唱えられたトルネ先生の火の槍。それらは黒い服装の人たちを狙って撃たれた、が、それを余裕を持って回避すると、魔法を詠唱する。



「我は願う 風の願い 集いて固まれ 掃射せよ 『風弾』」



 その風の弾はトルネ先生の足の甲を狙って撃たれ、それを迎え撃とうとする。



「我が望むは雷の......ギャア!」



 しかし、発動速度で負けたトルネ先生は、そのまま足を貫かれ、その場に足を抱えて倒れ込んでしまった。





「何故......」



「魔法師戦を知らない馬鹿で助かった、こいつを人質にして立てこもるぞ!」



 そう言った後、黒い服装たちはまた校舎へと入り込んでいった。



「これが悪い例だ。魔法は初級、中級と分けられているが、それがすべて中級のほうが良いわけではない。大抵は初級のほうが発動が早いし、消費も少ない。使い方によっては、という但し書きはつくが」



「そんなことより、トルネ先生助けに行かないと!」



 そう言ってエアリは教室から抜け出そうとする。が、それを見逃すライズではなかった。



「それは許可できない、隣の教室に移動後、そこの先生の指示に従え。俺が行ってくる」



「ライズ先生が行くならなんでさっきいかなかったの?」



 最もな質問。それに対してライズはため息をつきながら、少し上を見上げた。



「反面教師としてトルネ先生はこれ以上ないものだったよ......」



「そんな遠い目をしないで早く助けに行ってあげてください!」



 エアリのツッコミが早い。これは良いツッコミ役に成長しそうだ。

 ライズはそんな冗談は置いといて、さっさと先生を助けに行くと決めた。



「ま、任せとけ、お前らも大人しくしとけよ」



 そう言ってライズは、教室から走り去っていく。



 その背を、ライズの走り去っていく後ろ姿を見ながら、エアリたちも行動を開始する。

 隣のクラスはソフィア先生が教えていたようで、エアリたちはそこに一緒にいることとなった。



「この状況も授業に使うって、ライズ先生、どうかしてるよ......」



 エアリのつぶやきが、魔法理論の教室にいた生徒の総意でもあった。



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