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四章 空は夜に、少女は黒に
敵は――――
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「ガイアちゃん、持ってきたよ!」
「ありがと」
結局、あの後ガイアが図書館の本を探したが石の情報が出てくることはなかった。
「やっぱり、直接調べないと」
あの場所にあった、ということが何かの原因のような気がする。とガイアは推測を立てていた。
しかしもし、あの出来事が原因なら――――と思ったところで、思考を停止した。
あれほどの出来事、今後そんなことが起きるはずがない、と理性が止め、もうあの日を思い出したくないと本能が拒んだ。
「まぁ、取り合えず始めよ」
と、地面を見ると、どうやらもうエアリが書き終わっていたようだ。
教科書を一応持ってはいるものの、開いた痕跡がないことから本当に暗記していたのだろう。
「終わったよ、情報はどれくらいにする?」
魔法にある程度精通している人ならば一分程度、と言われている。しかしそれは成人した、国の魔法兵のような人たちにとってのある程度。一分で魔法陣も刻まれているが、学生ならその半分、三十秒が妥当だろう。それほどに彼らとの差は開いている。
「それなら、三十秒」
「わかった。三十秒にしておくね」
ガイアも魔力の感知にこそ長けているものの、情報処理能力が成人と並ぶか追い越すほどに卓越しているわけではない。
むしろ、学生の平均と変わらない程度しかなかった。
ガイアは、安全策を取ったのだ。
「別に本当に知りたい情報がわからなかったらその時はもう一回鑑定魔法を使えばいい」
素材がもったいないが、そもそもこの鑑定だって一銭たりとも使ってないので多分大丈夫だ。たぶん。
「それじゃ、始める」
ガイアは、魔法を起動した。
三十秒間、情報を受信し続けるとはいえ、魔法陣そのものの展開時間というものが存在するため、きっかり三十秒で終わるどころか、その数倍、下手をすれば十数倍の時間がかかるのだ。
だからこそ、エアリが周囲の警戒に当たっている。これは魔法を使うもののセオリー。魔法陣を使用している間は、誰かもう一人に守ってもらうというもの。
「――――来た」
ガイアがそうつぶやいた。魔力を感知したのだろう。
「――――あ、良く分かったね」
警戒されている、というのは気配で察知していたようで、仮面に黒い服を着た、どこかつかみどころのない女性がこつ、こつと距離を詰めた。
「近づかないで、今こっちは儀式中なんです!」
エアリが杖を構えた。これ以上近づくなら容赦はしない、と。
「そう言われると苦しいなぁ。ここまで来るのも大変だったんだから――――さっ!」
瞬間、その黒い女性が駆け出した。
「『風弾』!」
エアリは魔法を発動した。ライズがしていたように、無詠唱で撃てる魔法を用意しておこう、と考えたエアリが、無詠唱で撃てる数少ない魔法の一つだ。
そして見慣れた軌道を描いて、黒い女性へと命中した。
しかし、女性の体は霧のように別れ、そして二人になった。
「えぇ! そんなのあり!」
「ありなんだよ! それじゃ、それ貰っていくね!」
「まだ......鑑定が......」
ガイアが声を振り絞る。が、それをものともせずに奪っていく。
鑑定する対象を失った鑑定魔法は自動的にその動きを停止させる。
「月が出ている間は、私は無敵だよ」
「――――! まさか」
「それじゃ! ライズの教え子たち!」
そう言って空高く飛んだ黒い女性は、月に溶けるように消えていった。
魔力を帯びない石も、同様にどこにも見当たらなかった。
「索敵――――だめ、もう見当たらない」
「だね、私の魔法でも見当たらないや」
どんな魔法を使ってか、その後を追うことはできなかった。
失った石。なんの効果もなさそうなそれだが、見つけた場所が場所だったために捨てられなかった。
用途があってもなくても、形見としてずっと持つつもりでいたのに。
なのに――――それを奪っていくとは。
窓の外を見る。すっかり暗くなっていて、月明かりと街灯が明るく照らす街が鬱陶しいほどに光を伝えてくる。
「敵は――――天星教団」
ガイアは、憎むように空を見た。
「ありがと」
結局、あの後ガイアが図書館の本を探したが石の情報が出てくることはなかった。
「やっぱり、直接調べないと」
あの場所にあった、ということが何かの原因のような気がする。とガイアは推測を立てていた。
しかしもし、あの出来事が原因なら――――と思ったところで、思考を停止した。
あれほどの出来事、今後そんなことが起きるはずがない、と理性が止め、もうあの日を思い出したくないと本能が拒んだ。
「まぁ、取り合えず始めよ」
と、地面を見ると、どうやらもうエアリが書き終わっていたようだ。
教科書を一応持ってはいるものの、開いた痕跡がないことから本当に暗記していたのだろう。
「終わったよ、情報はどれくらいにする?」
魔法にある程度精通している人ならば一分程度、と言われている。しかしそれは成人した、国の魔法兵のような人たちにとってのある程度。一分で魔法陣も刻まれているが、学生ならその半分、三十秒が妥当だろう。それほどに彼らとの差は開いている。
「それなら、三十秒」
「わかった。三十秒にしておくね」
ガイアも魔力の感知にこそ長けているものの、情報処理能力が成人と並ぶか追い越すほどに卓越しているわけではない。
むしろ、学生の平均と変わらない程度しかなかった。
ガイアは、安全策を取ったのだ。
「別に本当に知りたい情報がわからなかったらその時はもう一回鑑定魔法を使えばいい」
素材がもったいないが、そもそもこの鑑定だって一銭たりとも使ってないので多分大丈夫だ。たぶん。
「それじゃ、始める」
ガイアは、魔法を起動した。
三十秒間、情報を受信し続けるとはいえ、魔法陣そのものの展開時間というものが存在するため、きっかり三十秒で終わるどころか、その数倍、下手をすれば十数倍の時間がかかるのだ。
だからこそ、エアリが周囲の警戒に当たっている。これは魔法を使うもののセオリー。魔法陣を使用している間は、誰かもう一人に守ってもらうというもの。
「――――来た」
ガイアがそうつぶやいた。魔力を感知したのだろう。
「――――あ、良く分かったね」
警戒されている、というのは気配で察知していたようで、仮面に黒い服を着た、どこかつかみどころのない女性がこつ、こつと距離を詰めた。
「近づかないで、今こっちは儀式中なんです!」
エアリが杖を構えた。これ以上近づくなら容赦はしない、と。
「そう言われると苦しいなぁ。ここまで来るのも大変だったんだから――――さっ!」
瞬間、その黒い女性が駆け出した。
「『風弾』!」
エアリは魔法を発動した。ライズがしていたように、無詠唱で撃てる魔法を用意しておこう、と考えたエアリが、無詠唱で撃てる数少ない魔法の一つだ。
そして見慣れた軌道を描いて、黒い女性へと命中した。
しかし、女性の体は霧のように別れ、そして二人になった。
「えぇ! そんなのあり!」
「ありなんだよ! それじゃ、それ貰っていくね!」
「まだ......鑑定が......」
ガイアが声を振り絞る。が、それをものともせずに奪っていく。
鑑定する対象を失った鑑定魔法は自動的にその動きを停止させる。
「月が出ている間は、私は無敵だよ」
「――――! まさか」
「それじゃ! ライズの教え子たち!」
そう言って空高く飛んだ黒い女性は、月に溶けるように消えていった。
魔力を帯びない石も、同様にどこにも見当たらなかった。
「索敵――――だめ、もう見当たらない」
「だね、私の魔法でも見当たらないや」
どんな魔法を使ってか、その後を追うことはできなかった。
失った石。なんの効果もなさそうなそれだが、見つけた場所が場所だったために捨てられなかった。
用途があってもなくても、形見としてずっと持つつもりでいたのに。
なのに――――それを奪っていくとは。
窓の外を見る。すっかり暗くなっていて、月明かりと街灯が明るく照らす街が鬱陶しいほどに光を伝えてくる。
「敵は――――天星教団」
ガイアは、憎むように空を見た。
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