英雄教科書

大山 たろう

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四章 空は夜に、少女は黒に

戦争の序章

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「これより、我々は戦争に向かう! 王に忠誠を誓え!」

 一斉に敬礼をする。
 そういう儀式のようなものだった。
 ここに集まったのは成り上がりたいという欲望だったり、英雄願望があったりと野心に溢れた人でいっぱいだ。しかも平民。この儀式がなんの意味を持つのかなんていうことは、知らなかった。

「この儀式をもって、貴君らを志願兵として認定する」

 儀式の内容は正直形骸化しており、その一つ一つに何か意味があるわけではない。
 ただ、その儀式を行ったことにより、私たちは志願兵として認定された、その事実が重要だった。

 王国法第十三条五項。
 志願兵は、その命を王国に捧げたものを指し、死や怪我に関する一切の責任を王国は負わない

 つまりだ。この儀式が完了した時点で、志願兵として認められた時点で、私たちは死のうが怪我をしようが知ったこっちゃない、という存在になったというわけだ。

 もちろんそれを法の知識どころか一般教育すらまともに受けられないような平民が知るわけもない。
 都合の良いように使われているだけ、とも言える。

「利害が一致しているから何も言われないものを」

 家族思いの人ならば、英雄願望と天秤にかけて家族を取るだろう。
 親孝行をするならば、畑を耕す方がよっぽど良く確実なことくらいはわかっているだろう。

 だから、ここに集まった人たちは家を出た人、もう家族がいない人などと、一人であることがほとんど。

「戦争に行って、それで帰ってこよう、二人で」

「そうだね」

 ガイアとエアリは二人、小さな声で覚悟を決めなおした。





「戦争、か」

「そう。それで、戦争がぶつかり合う予定地点が、ちょうど真上」

「なんだと」

 クレイはその言葉を聞いて、表情こそ変わらなかったが驚いていた。

 この地下にある基地の真上で、大きな戦争が起きると......

「最悪、蘇生魔法が失敗する」

 その推測を、口にした。


「それなら」



「そうだね。手段は問わない。戦争を――――止めよう」

 手段を問わない。それが、彼らにとってどれほど重い決断なのかを、他ならない本人が自覚していた。
 そして時は進み、兵士は集った。

 戦争が、始まった。
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