世界変革のすゝめ ~我が物顔で世界を害すヒト種よ、一回引っ込め~

大山 たろう

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第三部 ダンジョンマスター 中編

深海少年 一匹目

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「働きたくないでござる」

 そんな言葉を一度は口にしたことがあるだろう。しかしその言葉を口にしながらも、結局のところ就職し、働いている人も多くいることだろう。

「しかし、俺は成し遂げた!」

 俺、影森 宗吾は、ついに自宅警備員に強制就職をした。仕事内容は夜間の警備だ。怪しい物音があればすぐに確認するか通報するかをする仕事だ。

 これだけ格好をつけて言ってはいるものの、実際はただの昼夜逆転ニート、怪しい物音は大体俺のせい、だなんていう問題だらけといえば問題だらけだ。まぁ誰にも問題なんて言わせないが。

 就活に失敗した。それは大学まで浪人せずに第一希望に行けた俺にとっての初めての失敗だった。具体的に何を間違えたかなんて、そんなことわからない。けれど、確かにわかることは、俺は日本における敗者のほうに回ってしまったということだけだ。最初から働きたくないとは思っていたが、まさか敗者と呼ばれる時が来るとは、人生何があるか分かったもんじゃない。

「あぁ、今からでも楽で給料も良くて雰囲気の良い会社とかに就職できないかな......」

 そんな願望をぽつり、つぶやいたときである。

 瞬きをしたその一瞬で、世界は大きく変わっていた。
 周囲には最近めっきりあっていなかった人の姿が。そして無視できないほどの存在感をまき散らしながら、その男はやってきた。
 男、とはいっても定年は確実に超えた、いつ倒れるかわからないレベルのよぼよぼの爺さんだった。

 そしてその爺さんはいきなり爆弾発言を残していく。

「ふぉっふぉっふぉっ、よく来てくれたの。ここは神の世界、とでも言うべき場所じゃ。おぬしたちにはこれから異世界へと行ってもらって、あることをしてもらう」

 異世界。
 そのワードが聞こえた瞬間に、俺の心は確かに跳ね上がった。
 いつも夢見ていた異世界。もし行けたらどんなことをしよう、そんなことを考えていたことは今でも覚えている。頭でそんなことがあるはずがない、そう理解していても心がその夢を離すことを許さなかった。それで就職も上の空で異世界に心を奪われていたのか、なんて考えてしまうあたり俺ももう末期だろう。

「ここにいる百人には、ダンジョンを作ってもらう。ルールはまぁ......いろいろあるから、ナビゲートつけとくので、そちらにきくよーに。なお、異論反論はうけつけないので、頼んだぞ」

 目の前にいた爺さんは、その言葉を言い残し消えていく。
 ふと意識が戻ったころにはもう先ほどまでの存在感はなくなっていた。
 しかしそのことはどうでもよかった。
 異世界転移、勇者が魔王を倒しに行くものではなく、ダンジョンを作って勇者を待つ、どちらかというと魔王のような立ち位置だった。

「最高じゃねぇか、俺はやってやるぜ」

 意思表明をした瞬間、俺の視界は白く染まるのだった。





 目が覚めたとき、そこは小さな、小さな岩山の上にいた。
 周りは海。今いる岩山もかろうじて海面より高い位置にあるもののとても生活できるようなサイズではないことはわかり切っていた。

「ど、どうやってダンジョン作るんだ!?」

 慌てて手をぶんぶんと振ってしまったのが間違いだった。
 そのままバランスを崩し、そのまま海に沈んでしまう。

「がぱっ!」

 呼吸がうまくできない。水泳でいつも見学をしていたのが仇となった。
 手を振り回しても自身を取り囲んでいる液体はぱしゃぱしゃと形を変えるだけで、むしろ体が沈んでいくのを感じた。
 目を開けると海水が目に染みて痛いことだけはよく知っていたために目を瞑っていたが、周囲は見えず、どんどんと息苦しくなっていくだけだった。

「情報受信中――――完了。おはようごってえぇ! いきなり溺れるってそんなことある!?」

 声が聞こえた――――ような気がした。

 そのまま俺の意識は闇の中へと沈んでいくのだった。





「――――て、――きて」

 なんだかうるさい。もうすぐでひいばあちゃんのところに行けるというのに......

「起きて!」

「うわっ!」

 大声を受けて飛び起きた。よく考えると危なかった。数年前にすでに亡くなっていたひいばあちゃんが花畑で手を振っていて、もうすぐ川を超えてそっちに行ける、なんて言っていたと思うと本当に助かったとしか言いようがない。

「本当にありがと、君、名前は?」

「あぁ、やっと挨拶ができる。私はダンジョンマスター支援用ピクシー45号。よろしくね。私のマスターさん!]

 そうか、と一人結論に至る。
 さっきの爺さんが言ってた『ナビゲート』というやつなのだろう。どこまでナビゲートをしてくれるのかは知らないが、親切設計に感謝だ。

「そうか、よろしく」

「よろしく! それじゃさっそく、ダンジョン作っていこー!」

「そう、それだ、どうやってダンジョンを作るんだ?」

「それはねー、ポケットを確認してみて!」

 ポケットの中に手を入れると、太ももには何の感覚もないのにそこにあるポケットからこぶし大の透明な水晶が出てきた。俺としては異世界って感じがするから大歓迎だ。魔法アイテムとして水晶はもう必須と言っても良い。

「それをおいて、ダンジョンをつくりますー、って念じてみるの!」

「むむむ......」

 何とも難しい......
 目の前の水色の髪をした少女はその寝ぐせなのかそう言った髪型なのかわからないはねている髪をひょこひょことさせながらもこちらを見ている。時折「だいじょうぶかなー」と言っているような顔をしてのぞき込んでくる。何とも距離感が近い人だ。

「お、できた」

 その水晶からどんどんと光が漏れてきたので地面に置く。するとそこから土がせりあがって台座となり、周囲の環境が少し整えられた。

「おめでとう、これで君もダンジョンマスターだ!」

「おおー」

 しかし二つの問題を抱えている。
 一つは単純に、このダンジョンを作れたはいいものの、これから編集ができないのか、ということ。防衛用のモンスターとかも外から持ってこないといけないハードモードや、そもそも防衛は己の手で行うとかいう脳筋ヘルモードとかそんなものなのだろうか。さすがにあの爺はそんなことしないと信じている。

「このダンジョン、編集とかできないのか?」

 意を決して聞いてみる。
 すると俺の覚悟を決めた声とは裏腹に結構軽い感じだった。

「あ、わすれてたー、この端末で編集できるよー」

 結構大事なことを忘れてるぞ、ナビゲート大丈夫か、と一抹の不安を抱えてしまったのも無理はないと思う。
 しかしまぁ、ハードでもヘルでもなかったのは良かった。渡されたタブレット端末にはしっかりと編集と保存という文字が乗っていた。どうやらポイントを使用してどんどんとダンジョンを創って広げていく方式のようだ。
 ポイントもテンプレ通りなら定期的な支給と敵対生物討伐とかそんなところで手に入るのだろう。

「ところでさ、ここ何処なんだ? 敵対生物は来るのか?」

 そう、二つ目の問題を切り出した。

「あ、ここは海の底だねー、人間は外に出るだけで圧力で死んじゃうぐらいのー。だから敵対生物も来ないよー、安心だね!」

 そう、彼女はまたも軽く返した。

 別に構わないのだ、定期的にポイントさえもらえるのだったら最悪積みはしない。
 だが、作ったゲームを誰にも遊んでもらえない、と考えると結構悲しいものだ。ひたすら作っても、ひたすら防衛システムを組もうと、それを実践で使うことはもちろん、実験すらすることが出来ないのだ。生活が保障されているだけ、つまりゲームのないヒキニート。俺は働きたくないとは言ったが代償に楽しみを奪うだなんて、生殺しだ、半殺しだ!

「ポイントを稼ぐいい案とかないか」

 少しだけ「闘争を求めている感」を出して聞いてみる。しかしやはりというべきか、彼女はその答えを持ち合わせていないようだ。

 俺はとりあえず解決策を、とショップを覗く。ポイントで何でも買える、を謳っているから何かないものだろうか、と考えていた時だった。

「あ、これいいかも」

 ショップにある一つの品物を見て、俺は一人これからの展望を考えるのだった。
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