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第四部 ダンジョンマスター 後編

一年はあっという間に、永い軌跡だけを残して

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「あぁ、良く寝た......」

「たろー、結構寝てた、何かあったの?」

「あぁ、少しな......どれぐらい寝てた?」

「今日がちょうど一年前ダンジョンマスターを送り出した日」

「って、俺一年寝てたとか、もう怠惰の極みじゃねぇか」

 全く変わらぬレイアウトの部屋の、全く同じ場所にあるカレンダーを見つめる。
 確かに、全く変わらない部屋の中、カレンダーの数字だけは変わっていた。
 机の上に置いてあった端末の電源をつける。
 しっかりと時計も一年先を指していた。

「まじかよ......マジで一年かよ......」

「ダンジョン同士の戦闘が激化してる上に、ヒトが資源産出系ダンジョンから資源を集めて装備を整えて、魔物しかいないダンジョンに攻め込むっていう動きが出来てる」

「俺は資源産出系のダンジョンだったから未だ稼働しているってことか......」

 そう確認をとったところ、首を横に振られた。

「前にゴーレムがあふれ出してその街滅んじゃったよ」

「滅んじゃったぁ!? あそこ王都だったよね!?」

「そう、だけど戦闘が激化してきたところでみんな逃げだして、新しいところに新王都が出来てる、それからはずっとそこから旧王都奪還作戦みたいなこと言って死者出してる」

「結局まだ奪還できないほどゴーレムが残ってるんだな......」

 画面を確認したところ、確かにゴーレムの数は以前よりも数桁増えており、以前の王都一面を埋め尽くす勢いで今もなおダンジョンから出てきていた。
 ダンジョン内での研究が進んだからか、飛行型や昆虫型、挙句の果てには竜すらも、すべてゴーレムで作られていた。しかしまだ満足していないようだ。

「ちなみに今の流行は武装らしい」

「流行りあるんだ!?」

 ともあれ、ダンジョンのライフラインが途絶えていなかったためか生き残っていたのは僥倖だ。
 というか、一年でここまで進む方が想定できていなかった。

「ちなみにぜっちゃん、今残っているダンジョンはいくつくらい?」

「あと二十くらい、そのうち十ぐらいが王って呼ばれてて各地で領地争奪戦、五が完全引きこもり、残り五は王の傘下に入ったみたい」

「傘下作るとかスゲーなおい......」

 しかも攻め方を見るに、どうやら同盟とかいろいろしまくった結果、ダンジョンバトルだけではなく普通にモンスターを外に出して、ヒトを巻き込んで戦闘しているようだ。

「一年ってちょうどいいし、追加で百人くらい呼んでみるか?」

「面白そうだけど、すぐに潰されそうだからもう少し様子見」

「ってか、王都滅んだぐらいならもう目標達成じゃねぇのか? 勝負も俺の勝ちで」

「それは駄目、まだ新王都に八割逃げ込んだせいで数は増え続ける一方、ルールは変更、対象は新王都」

「わーったって、そんなににらむなって、それより十の王の動向を知りたいんだが」

「そう、なら今から見よっか」

「あぁ、そうしよう」

 俺は一年という長い眠りから覚めてすぐに、またダンジョンマスターの軌跡を確認することにした。
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