舌先三寸覚えあり 〜おヌル様は異界人。美味しいお菓子のプロ技キラめく甘々生活

蜂蜜ひみつ

文字の大きさ
4 / 175
ヌルッとスタート編

第4話 アンポンタンポカン(三人称視点のちコニー視点)

しおりを挟む
******(三人称視点)

「おーい! 今いくぞー!!」
 森の奥、遠くから男の声がする。 

 しかし今のコニーは、耳に届いてる筈だがこれっぽっちも聴いちゃいない、聞こえていない、そんな状態であった。

 声がするや否や後方森の奥より、地面の土や落ち葉やら枝屑を舞い上げ、疾風と共に男が現れた。

 その男は乗り物のようなものからバッと飛び降り、へたり込んでいたコニーに、後ろから素早く駆け寄る。

 そして、がしりと、その大きな手をコニーの肩に置き。
「しっかりしろ! 大丈夫か? 呼吸は? 意識はあるか? 俺の言ってること分かるか?!」

 覗き込むように顔を近づけ、矢継ぎ早に大声で話しかけてきた。

 乱暴に身体を揺さぶられたりはしないものの、突然見知らぬ男に肩を掴まれ、大声を浴びせられたのだ。

 茫然自失のコニーが受けた驚きたるや、大きな衝撃と言わずしてなんと言おう。


******(三人称視点・終)




 ぎょわあっ!!? だ、誰?!

 振り返ろうとガバッと横を向いた瞬間。
 私の目に飛び込んできたのは、髭面ロン毛のガタイのいい外人顔の男のドアップだった。

 ひぃぃぃいいい!!!

 思わず無言で横っ飛びで退き、男の大きな手を振り払う。
 人間あまりにも驚き過ぎると、キャーとかうわぁとか、声にならなかったりするものだ。

「あ、いや。驚かせてすまない。お、俺はけして怪しいものでは……」

 男は慌てふためいてはいるものの、先ほどの切迫した語気を打ち消すように、静かに落ち着いたトーンの声へと切り替えられている。

 私の肩にかけていた手は、振り払われた今や、そのまま宙に浮き。
 申し訳なさげに眉を寄せ、彼自身の膝の上に下ろされた。

「具合は大丈夫か? 声はでるか? 俺の言葉は通じているか?」
 そして、幾つもの問いを私に投げかけ始める。

 私の心臓は、未だばっくばくの尋常じゃない勢いのままだ。
 男と無言で見つめ合うこと数秒。

「おーい!! エタン! おヌル様はご無事かー!?」

 今度はさらにもう一人。
 男の後方森の中より掛け声と共に、キックボードのようなセグウェイのような乗り物に乗って、ものすごいスピードでこちらへ向かってきてる。

 気がついたらあっという間に近くにまで迫っていて、キッと乗り物を停め颯爽と飛び降り、流れるように私の目前にひざまずいた。

「私は王家森番、クレール・アルコンスィエルと申します。
おヌル様を保護しに馳せ参じました!」

 目の覚めるようなキラキラ輝くオレンジ色の長い髪をした、外国人モデルばりの美男子。
 パジャマ姿で、宝石のように煌めく明るい緑の瞳で私を見つめながら、そう言った。

 驚き過ぎた時って、漫画みたく思わず口があんぐり開くもんなんだなぁ。
 アンポンタンポカンとなった私は悪くない。
 だってこんな白昼夢、ドグラマグラ過ぎる……。

 ドン冷えの卵白を頭から被り。
 なぜか死ぬほど息苦しい思いをして。
 助かったと思ったら、深夜の工場ではなく昼間のキラキラしい森にいて。
 見た目インパクト強な外国人男性が次々に現れ。
 ノリこそ違うが二人ともハイテンション&ペラペラな日本語で、私にぐいぐい話しかけてくる。

 本日三度目の凍りつき中。

「おい。エタン。いったいどこまでおヌル様にお伝えしたんだ?」

「いや、何も。『大丈夫か?』って話しかけただけだ。
そういや彼女まだ一度も口を聞いてないな。会話ができないのかも……」

 目の前の二人の男のやり取りに、慌てて私は口を挿んだ。

「わわ、大丈夫です! ちゃんと仰ってること理解できてます」
 あとから来た人が余りに素っ頓狂過ぎて、彼が何を言ってたんだか、いまひとつ聞いてなかったけれど……。

 へたり込みポーズから居住まいを正すために、もぞもぞとゆっくり動く。
 よし、ちゃんと動ける。

「す、すみません。ご心配おかけしまして。
なんだか頭も身体もヨレヨレで、『大丈夫です』とは正直言いづらいんですけど……。
でもちゃんと身体は動かせますし、会話もできるぐらい意識もしっかりしています。
お声かけしてくださってありがとうございます。それで、えっと……」

 にこやかに会話をするも、かたや心の中では。

『一体私に何が起きてて、そんでここはどこなのよ?』

『親切心から声をかけてくれてる感じが伝わってくるし、危険な人たちではなさそう』

『謎のまま独りぼっちより、この人たちを頼ったほうがいいような気がする!』

『でも、あまりにおかしなこの自分の現状を、しょっぱなから彼らに正直に伝えるのもなぁ……』

『まずは日本語流暢ですねって褒めるべきかな? いやハーフで日本国籍の方だったら逆に失礼にあたるね』

 ド派手なクエスチョンマーク柄の服を着た、いろんな私が一斉にベラベラまくし立てているといったところだ。
 それらをぐっと押さえ込み、社交的会話を続けるべく、懸命に外面そとづらを張り付けた矢先。

「っっ! こんなにもしっかり理解し合って、流暢に会話が出来るとは……!」

 オレンジの髪の男は片手で顔を覆い、俯いてもう片方のこぶしをググっと握り締め。
 それから顔を上げて、私をじっと見つめながら話を続けた。

「駆けつけるのが遅くなって申し訳ありません!
さぞや苦しかったことでしょう。お身体に何事もなくて良かった。本当にご無事で何よりです」

「え? 別にあなたが私に謝る筋合いはなにも……」
 ぽろり、私の口から疑問が溢れる。

 藪から棒に告げられた男からの謝罪は、ゾワリと私の心を這い上がる。
 あまりにいろいろあり過ぎて麻痺していた恐怖が、やおら麻酔が切れて甦える歯痛のように、じくりじくりと私を包み込み始める。

 申し訳ないって……この人なに言ってんの?




 





【次回予告 第5話 非常時にプチトキメキを添えて】

しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

さようなら、たったふたつの

あんど もあ
ファンタジー
王子に愛されてる伯爵令嬢のアリアと、その姉のミレイユ。姉妹には秘密があった……。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...