55 / 175
ヌルッとスタート編
第54話 丸まったお姫様 (クレール視点)
しおりを挟む
***(クレール視点)
「コニー? 寝ちゃった?」
「みたいだな……。部屋連れてくか」
「あ、僕が」
「いや、俺が。クレールはドア開けたり灯りを頼む」
ソファーにもたれ脚を上に乗せて、あっという間にすーすー眠ってしまったコニー。
「……分かった。少し待っててくれ。ネックレスを」
ネックレスの満タンな2つの魔石と取り替えるために、空の魔石を持ってくるからとエタンに告げ、2階に行った。
魔石を手にし、階段を降りる前にふと、なんとなしに手すりに近寄って2人のいる下を見下ろした。
エタンはソファー机を押しやり、その隙間にコニーを覗き込むようにしゃがんでいた。
「なんだか丸まってて可愛いな」
そう独りごちて、壊れ物に触るように、そっと彼女の頭に触れていた。
なんだか僕は親友のポケットの中を覗き見てしまったような、落ち着かない気持ちになった。
例えそれが、糸屑や、噛んだガムが包まった紙切れや、小銭が入っているだけだったとしても。
アイツ、初等科の遠足で行った「触れ合い広場」でモルモットを長いこと膝に乗せて、ああして撫でて可愛がっていたっけ……。
20年も前の、忘れていた幼い頃の思い出がなぜか頭に浮かんで、僕は階段をいそいそと降りていった。
「お待たせ」
魔石を補充したネックレスを彼女の首元にへと付け、エタンが起こさないように膝裏へ手を差し入れ抱き上げた。
2人して角部屋に向かい、寝台へとコニーを横たえる。
彼女の結んだ髪を解く。
チェストにクッキーの髪飾りを置いた。
洗いたての濡れた髪は思ったより長くて意外だったな……乾燥ブラシをしたときの、2人で過ごしたあの時間を反芻する。
こうして乾くとふわふわで、波打ってるせいかもう少し短く見える。
「おやすみコニー、良い夢を」
髪の一房を手に取りキスを送る。
家族でも髪にキスはすることだ。
許されるだろう? きっと。
小さな頃、家族皆が「私の小さな光の妖精ちゃん」そう僕を呼んで、しょっちゅう頬や頭や髪にキスを送られたものだ。
母上と姉上を筆頭に、父上と兄上からも。
初等科に上がった頃には、さすがに僕も照れ臭くて拒否ったが。
母上は隙あらば仕掛けてきたけど。
中等部以降は家族にもされなくなったし、自分でいうのもなんだが、僕の髪は目立つ色の上に、魔素でキラキラしてるから触りたがるやつが多くて、とても嫌だった。
そういえば、髪にキス。
恋人にしたこともさせたこともなかったなぁ。
てことは……コニーに無許可でしちゃダメだったってことか……。
ま、まあ、うん。
よしとするか。
湖に面した大きな窓を不透明な壁にすると、少し暗くなる。
明り取りの丸窓はそのままで。
最後に照明を消し、もう一度彼女を振り返る。
丸窓から差し込む夜の淡い光は、さながら小さな星の小さな月のようで。
布団にこっぽり包まってすやすや眠る彼女は、甘やかな月の光が降り注ぐ、隠された御伽噺の小さなお姫様みたいだと僕は思った。
誰にも見られないように、自分だけの秘密にしたくてお姫様を連れ去る悪役のドラゴン。
僕が子供の頃よく読んでた絵本だ。
まさか助け出す王子じゃなくて、この歳になってドラゴンの気持ちに共感を覚えるとは。
ドアを開け部屋を出て行く間際。
僕の背後で、壊れ物を触るようにそっと。
彼女の髪の一房を手に取るエタンが、視界の端に入ったような気がした。
エタンと2人居間に戻る。
お互いの定位置のソファーに腰掛けた。
僕も、そして多分エタンも。
2人とも、コニーの独白に胸が痛くなっていて、口を開けずにそのまま座っていた。
不意にエタンが話をし始めた。
「俺さ。この世界で最初に出会った俺たちが、コニーの縁とゆかりになるって。
あの子にそう言っただろう?
あんな話聞いちまったら、なんつーの。
この世界つうか、全ての、この世の丸ごとにおいて、絶対味方になってやりたい、なんてガラにもなく思っちまった。
まさか結婚前に父性に目覚めちまったってヤツか?
……それかさ。初等科の頃、お前と2人で雨の中拾った、あの時の猫の子と同じ保護欲か?
雨より酷ぇヌルヌルまみれだったしな。
はは、どっちにしろ支援指導係として大事にしてやりてーなぁ」
エタン。
それは父性なのか? 妹のエレオノーラにだってそんなの感じなかっただろう?
猫、そう言えばそんなことあったな、懐かしい。
保護欲ねぇ、お前面倒見いいもんな。
しっかし係って……俺の護衛係も昔っから片手間感丸出しだったじゃないか?
まあいいさ。
いつまでもそういうことにしてたらいいエタンセル。
でも僕は、お前だったらライバルとして不足はないから、いつでも歓迎だ。
そんなにやけた顔でコニーの話すんな、バーカ。
「ああ、そうだな。僕もそう思うよ。エタンに賛成だ。
だが確か蛍様も地球で家族や居場所が無かったんだよな……共通項がそれって……虹の方様は実は単なる誘拐犯ではないのかもしれない、なんてな?」
「こればっかりはわっかんねーな。とにかく早めに蛍様とは会わせてやりたいな」
「本当にそうだな……」
--------------------
クレールドラゴン、エタンセルタイガー。
コニーを守る龍虎爆誕ですね(๑˃̵ᴗ˂̵)
クレール視点もう1話続きます。
「コニー? 寝ちゃった?」
「みたいだな……。部屋連れてくか」
「あ、僕が」
「いや、俺が。クレールはドア開けたり灯りを頼む」
ソファーにもたれ脚を上に乗せて、あっという間にすーすー眠ってしまったコニー。
「……分かった。少し待っててくれ。ネックレスを」
ネックレスの満タンな2つの魔石と取り替えるために、空の魔石を持ってくるからとエタンに告げ、2階に行った。
魔石を手にし、階段を降りる前にふと、なんとなしに手すりに近寄って2人のいる下を見下ろした。
エタンはソファー机を押しやり、その隙間にコニーを覗き込むようにしゃがんでいた。
「なんだか丸まってて可愛いな」
そう独りごちて、壊れ物に触るように、そっと彼女の頭に触れていた。
なんだか僕は親友のポケットの中を覗き見てしまったような、落ち着かない気持ちになった。
例えそれが、糸屑や、噛んだガムが包まった紙切れや、小銭が入っているだけだったとしても。
アイツ、初等科の遠足で行った「触れ合い広場」でモルモットを長いこと膝に乗せて、ああして撫でて可愛がっていたっけ……。
20年も前の、忘れていた幼い頃の思い出がなぜか頭に浮かんで、僕は階段をいそいそと降りていった。
「お待たせ」
魔石を補充したネックレスを彼女の首元にへと付け、エタンが起こさないように膝裏へ手を差し入れ抱き上げた。
2人して角部屋に向かい、寝台へとコニーを横たえる。
彼女の結んだ髪を解く。
チェストにクッキーの髪飾りを置いた。
洗いたての濡れた髪は思ったより長くて意外だったな……乾燥ブラシをしたときの、2人で過ごしたあの時間を反芻する。
こうして乾くとふわふわで、波打ってるせいかもう少し短く見える。
「おやすみコニー、良い夢を」
髪の一房を手に取りキスを送る。
家族でも髪にキスはすることだ。
許されるだろう? きっと。
小さな頃、家族皆が「私の小さな光の妖精ちゃん」そう僕を呼んで、しょっちゅう頬や頭や髪にキスを送られたものだ。
母上と姉上を筆頭に、父上と兄上からも。
初等科に上がった頃には、さすがに僕も照れ臭くて拒否ったが。
母上は隙あらば仕掛けてきたけど。
中等部以降は家族にもされなくなったし、自分でいうのもなんだが、僕の髪は目立つ色の上に、魔素でキラキラしてるから触りたがるやつが多くて、とても嫌だった。
そういえば、髪にキス。
恋人にしたこともさせたこともなかったなぁ。
てことは……コニーに無許可でしちゃダメだったってことか……。
ま、まあ、うん。
よしとするか。
湖に面した大きな窓を不透明な壁にすると、少し暗くなる。
明り取りの丸窓はそのままで。
最後に照明を消し、もう一度彼女を振り返る。
丸窓から差し込む夜の淡い光は、さながら小さな星の小さな月のようで。
布団にこっぽり包まってすやすや眠る彼女は、甘やかな月の光が降り注ぐ、隠された御伽噺の小さなお姫様みたいだと僕は思った。
誰にも見られないように、自分だけの秘密にしたくてお姫様を連れ去る悪役のドラゴン。
僕が子供の頃よく読んでた絵本だ。
まさか助け出す王子じゃなくて、この歳になってドラゴンの気持ちに共感を覚えるとは。
ドアを開け部屋を出て行く間際。
僕の背後で、壊れ物を触るようにそっと。
彼女の髪の一房を手に取るエタンが、視界の端に入ったような気がした。
エタンと2人居間に戻る。
お互いの定位置のソファーに腰掛けた。
僕も、そして多分エタンも。
2人とも、コニーの独白に胸が痛くなっていて、口を開けずにそのまま座っていた。
不意にエタンが話をし始めた。
「俺さ。この世界で最初に出会った俺たちが、コニーの縁とゆかりになるって。
あの子にそう言っただろう?
あんな話聞いちまったら、なんつーの。
この世界つうか、全ての、この世の丸ごとにおいて、絶対味方になってやりたい、なんてガラにもなく思っちまった。
まさか結婚前に父性に目覚めちまったってヤツか?
……それかさ。初等科の頃、お前と2人で雨の中拾った、あの時の猫の子と同じ保護欲か?
雨より酷ぇヌルヌルまみれだったしな。
はは、どっちにしろ支援指導係として大事にしてやりてーなぁ」
エタン。
それは父性なのか? 妹のエレオノーラにだってそんなの感じなかっただろう?
猫、そう言えばそんなことあったな、懐かしい。
保護欲ねぇ、お前面倒見いいもんな。
しっかし係って……俺の護衛係も昔っから片手間感丸出しだったじゃないか?
まあいいさ。
いつまでもそういうことにしてたらいいエタンセル。
でも僕は、お前だったらライバルとして不足はないから、いつでも歓迎だ。
そんなにやけた顔でコニーの話すんな、バーカ。
「ああ、そうだな。僕もそう思うよ。エタンに賛成だ。
だが確か蛍様も地球で家族や居場所が無かったんだよな……共通項がそれって……虹の方様は実は単なる誘拐犯ではないのかもしれない、なんてな?」
「こればっかりはわっかんねーな。とにかく早めに蛍様とは会わせてやりたいな」
「本当にそうだな……」
--------------------
クレールドラゴン、エタンセルタイガー。
コニーを守る龍虎爆誕ですね(๑˃̵ᴗ˂̵)
クレール視点もう1話続きます。
11
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる