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せ~ぶで~た06:魔法使いの女の子がタコの魔物に襲われ魔力を吸い取られ続け助からない話

02.海の中からこんにちは

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 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 それからしばらく洞窟を進んだところで、フィオはふと思いました。

「そういえば化けダコ……一匹もいなかったわね?」

 化けダコとは、この辺り一帯に生息するモンスターのことです。見た目は大きめなタコ……なのですが、知能は決して低くはなく、人間を捕まえれば抱き付いて魔力を吸う魔物です。決して人間を食うようなことはしませんが、無理矢理魔力を吸い取ったり、人間を海中に引きずり込んだりと、いろいろと被害を出していました。
 モンスター退治のため、この洞窟に潜る際に言われました――化けダコには気をつけろ、と。
 しかし。

「……どこか別の場所を根城にしてるのかしらね?」

 フィオは顎に手を添えて、うーん、と辺りを見回します。辺りに転がっているのは魚の魔物だったり貝の魔物だったり。タコの魔物の姿は、やはり一つもありません。

「……ま、いっか!」

 ぱしゃりと、海水の水溜りを踏んで、フィオは正面を向きました。
 依頼されたモンスターの討伐数まで――お仕事終了まで、あと一匹です!
 あと一匹、電撃の魔法でびりびりさせてしまえば退勤です! 帰り道は簡単、帰還水晶を握って念じて一瞬でワープ! 依頼主にお仕事について報告したのなら、何に邪魔されることなくスイーツの元へ行けます!

 ……その前に、身だしなみを整えなくてはいけなさそうですが。むわっとする洞窟に、汗は滲み出てしまいますし、服のあちこちが海水に濡れてしまっています。パンツやブラジャーも、汗ではりついている感じがして気持ち悪いです。

 と、そこで、ぱちゃん、と。
 フィオはきりりと顔を澄ませて振り返りました。音は背後から。

 振り返った先にあったのは海水の水溜り――否、海に繋がる穴、そこを満たす海水に波紋が広がって、水面が揺れていました。
 何かが潜んでいます。フィオは杖を構えれば、魔力を杖先の水晶に集中させます。
 最後の一匹ですが、油断はできません……息すらも忘れるほど感覚を研ぎ澄ませ、敵がどう出るか集中します。

 そして、水面がまた大きく揺れました。
 太く、長い影が姿を現します。うねりながら飛び出してきたその姿はまさに。

「蛇っっっ!?」

 フィオの大嫌いな蛇によく似ていました。驚きのあまり、フィオは魔法を放てず、その隙に蛇らしき何かは片足に絡みつきます。
 蛇らしきものはフィオを引っ張ります。フィオは悲鳴を上げて仰向けに倒れてしまいました。しかし、杖は手放さなかったのです。

「ひぃぃぃぃっ!! 蛇っ! いやぁああぁぁ!!!!!」

 杖の水晶から、眩しいばかりの雷撃が放たれました。蛇らしきものに命中すれば、まるで怯んだかのように足から離れました。
 そこでようやく、フィオは我に返りました。

「……た、タコ!?」

 蛇のようなものの正体は、吸盤をいくつも持った触手でした。電撃を受けて、ぴくぴくと震えています。しかしずるずると水溜りまで戻っていけば、またいくつもの触手が現れて――濃い紫色の、ぶよぶよした何かが現れました。
 化けダコです! 人を襲い、魔力を吸い取るモンスターのタコ。

 ところが、その大きさは――フィオの知っている化けダコとは比べ物にならない程の大きさでした。
 通常の化けダコは「大きなタコ」程度の大きさ。けれどもいま目の前に現れたタコは、牛程の大きさです。通常の化けダコよりも、何倍もの大きさがあります……。
 もはやボス化けダコです!

「な、なによこれ……」

 これにはフィオも唖然。しかし中級冒険者である彼女は、決してミスしませんでした――次の瞬間、ボス化けダコの触手が動きましたが、それと同時にフィオも電撃魔法を放ったのです。
 耳に痛いほどの、電撃の響き。巨大な化けダコは電撃を受ける中ぶるぶると震えて、苦しそうに八本の足を悶えさせます。そしてついに倒れたものだから、フィオもやっと魔法を止めました。

「びっ……くりしたぁ……」

 巨大であったものの、どうやら電撃に弱いことに変わりはないようです。一時はどうなるかと思いましたが、もうぴくりとも動きません。
 何にしても、この大きさです。突然変異でしょうか……フィオは最後の魔物を倒したことも忘れて、杖の先でボス化けダコを突いてみます。
 そこで、見つけてしまいました。

「――魔王の紋章!」

 ボス化けダコの頭に、奇妙な文様が一つ。

 ――それは、魔王から力をもらった魔物である証とされる、紋章でした。
 巷ではよく話を聞いていたのですが、フィオは初めて見ました……魔王の紋章を持つ魔物は、非常に強く、危険であると。だからこそギルドからも危険視され、発見されたのなら最上級の冒険者が討伐に向かうのですが……。

「えっ、本当に、魔王の紋章……?」

 目の前のボス化けダコは、もはやたこ焼きの具材にされるのを待っているかのような状態。魔王から力をもらった魔物とは、とても思えません。改めて杖で突いてみたり、軽く蹴ってみたりしますが、でかいだけの、化けダコだったようです……。
 ちょっと腑に落ちませんし、倒したぞという気もしませんが――魔王の紋章を持つ魔物を倒してしまったようです!

 次の瞬間には、フィオの頭には、数々のお菓子やお紅茶が思い浮かんでいました。

「こ、これをギルドに報告したら……手柄が認められてもっと儲かるお仕事が請けられる……!」

 思わず涎が出てしまいます……そのために冒険者をやっているのですから!

 ――そんな風に喜んでしまっていたために、気付かなかったのです。
 ボス化けダコの触手の二本が、静かに這い寄っていたことに。

「ひやぁああっ!?」

 次の瞬間、二本の触手はそれぞれフィオの足に絡みついていました。
 あまりのことにフィオは驚き倒れそうになりましたが――もう初級冒険者ではありません。中級冒険者なのです。いかなる時も武器を手放したりはしません!

「死んだふりをしてたのね、このタコ!」

 フィオは毅然として再び雷撃を放ちました。ボス化けダコはびくりとして触手を引きますが、けれどもそれもわずかばかり。だからフィオは二撃目、三撃目と雷の魔法を放ちますが……。

 ――こいつ、ちょっとしか効いてない!

 どうも、弱るような様子を見せないのです。二本の触手は、緩くも足に絡みついたまま。そしてボス化けダコの目は、まるで嘲笑うかのようにフィオに向けられています。

 そう、このボス化けダコ、魔王の紋章を持っているだけの、ばかでかいだけのただの化けダコではなかったのです。
 正真正銘、魔王から力を授かった強力なモンスターだったのです!

 ばりばりと電撃の音が痛いほどに響く中、フィオはようやく気付いて顔を青ざめさせていきました。

 ――かなわない!

 とりあえずは逃げ出して、ギルドに報告して……上級冒険者達に対応してもらわなければ!

「放しなさいよ、このっ!」

 足に絡みつく触手を杖で殴れば、ようやく触手達は放れてくれました。その隙にフィオは背を向けて急いで走り出そうとしましたが――。

 にゅるんっ♡

「ふあぁっ!?」

 放れゆく触手の一本が、フィオのお股を舐めるように撫でていったのです。ぬるりとした感覚、吸盤のでこぼこ……パンツの上から撫でられて、この命の危機であるにもかかわらず、フィオは腰を抜かしてしまいました。
 そればかりだけではなく――杖まで落としてしまったのです。

「――ふぁぁっ……!!」

 慌てて手を伸ばしましたが、次の瞬間、フィオは再び悲鳴を上げていました――ボス化けダコの触手二本が、それぞれフィオの足にぬるぬると絡みつき始めていたのです。まるで粘液を塗り込むかのようにゆっくりと、それでいて抵抗も許さない程の力でフィオを引き寄せながら。
 それでもフィオは歯を食いしばって、なんとか杖を掴もうとしましたが。

「――んあぁあっ!? やっ……やだぁぁっ!」

 ――きゅっ、と、お股に何かが食い込み、締め付けました。

 なんとボス化けダコは、足に絡ませた触手の一本で、フィオのパンツを後ろから引っ張り始めたのです。

「やだっ……放して……っ!」

 引っ張られた紐状になったパンツは、きりきりとフィオのスジに食い込んでいきます……! 我慢できず、フィオは両手をお股に持って行きますが、どうしようもありません! どんどん食い込んでいき、痛いはずであるのに、じんじん熱を帯びていきます。

 そしてボス化けダコは手繰り寄せるようにフィオを引っ張り、またにじり寄って、ついに真後ろまで迫ってきました。

「ああっ! そんな……っ!」

 お股への悪戯に蹲っていたフィオの両腕に、ボス化けダコの触手が巻きつきました。背中へと持っていかれたかと思えば、そこで一本の触手で拘束されてしまいました。そして新たなもう一本の触手がフィオの身体に巻きついて、ぴんと引っ張って身体を起こします。

 気付けばフィオは、ボス化けダコに背後から抱き付かれるようにして捕まっていました。両足はそれぞれ触手に絡みつかれ、腕も背でまとめられ、逃げ出そうとする身体も触手に拘束され……膝立ちさせられる形で、捕まってしまいました。
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