喜楽

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喜楽 0 双子の再会

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 フェルが食事を始めて少し経ってから、龍鬼が台所へ入ってきた。入ってくると椅子に腰掛ける。
「明日から、少しの間まともな飯が食えんのぉ」 
 龍鬼は煙管を吹かしながら笑うと、フェルが箸を止め伺うように龍鬼を見上げる。 
「まともに料理作れるのが、今はあの子だけだからね。でも、その様子だともう大丈夫みたいね」
 フェルは安心したのか小さく溜息を付き、又食事を始める。

「やっぱり、家のご飯が美味しいわ……さてと……」
 フェルは両手を上に伸ばし大きく体を反らしていたが、真顔で蒼牙の方を振り向く。
「あんたには色々聞きたいんだけど、答えてくれる訳無いよねぇ」 
 蒼牙は下を向いたまま、フェルの方を見る様子もない。
「誰からの依頼って事を聞きたい訳じゃないんだ。一つだけ聞かせてくれないかなぁ……」 
 蒼牙は静かに顔を上げ、フェルの顔を見る。
「一応、話は聞いてくれるみたいね」
 フェルは、穏やかな顔で笑う。 
「あんた、狙った標的の事は何も知らないの? それとも何か、個人的恨みがあって仕事を受けたの?」
 蒼牙は、静かに首を横に振る。
「じゃあ、何も知らないのね?」
 何故そんな事を聞くのか判らないのか、フェルの顔を少しの間見ていたが、首を縦に振った。 
「そっ、良かった……、それが聞きたかっただけよ。後は何も聞かないから安心しな」
 フェルはそう言って穏やかに笑うと、背を向け食器を片付け始め、台所に立つとお湯を沸 かし始めた。お湯が沸き湯二つの湯呑みにお茶を入れ龍鬼とお祭りで見た物等、 笑いながらたわい無い話を始めた。

 蒼牙は話をする二人を見ていたが、本当に何も聞かれる様子がない事に愕然とする。こうやって殺されずに生きているのも依頼主の情報を聞く為に、生かされているのだろうと思っていた。聞かれても何も知らないし答えるつもりもないが、 聞かれない事の方が恐かった。恐いと思ったこと は人を殺し始めた時から忘れていた。死ぬことが 恐いとは今も思わない。何事も無かったように笑 いながら会話をする二人、この何もない時間に恐怖を感じるのだ。だが、蒼牙が感情を顔に出すこ とはない。物として生きてきた蒼牙は、感情を表 現することが出来なくなっていた。
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