喜楽

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喜楽 0 双子の再会

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「さてと……みんな家の中に入りな」 
 アサギと九が、家の方に向かって歩き出す。
「母さん、これどうするんだよ?」
 昂の二つの死体を見ながら言った昂の言葉に、フェルは崖の方を指差す。
「処分しといて」
 昴は嫌そうな顔をしながらブツブツと文句を言いつつ、死体を担ぐと片付け始める。
「風牙! 怪我してるんだ、静かに寝てな!」
 フェルはぼんやりしている風牙を怒鳴りつける。
「風牙兄! 早く入ろうぜ」
 片付け終わった昂は呆れた様子で風牙に近付き、後ろから風牙の左腕を持つと引っ張りながら歩き始め、蒼牙の方を振り向いた。
「蒼牙兄も何してんだよ!」
 呆然とする、蒼牙の左手を誰かが握る。下を見ると九が精一杯背を伸ばし、手を引っ張っていた。
「九! 兄さん達! 早く中に入ろうよ!」
 アサギが家の裏口近くで、両手を大きく振っている。
 蒼牙は九に引っ張られるままに歩き始めた。
「龍鬼! ちょっと付き合ってよ」
 黙ったまま様子を見ていた龍鬼の方を、フェル が見ると裏口とは全然違う方向へ歩き出す。腰を下ろして煙管を吹かしていた龍鬼が、溜息を付きながらゆっくりと腰を上げる。
「ほっとけんのか?」
 フェルは、龍鬼の方を振り向く。
「当たり前じゃない! 喧嘩売られて黙ってられないわ!」
 フェルの様子を見ていた昂が大きく溜息をつき、風牙は歩きながら呑気にフェルの方に手を振る。 
「母さん、又かよ……」
「母さん、ご隠居、気を付けて下さいねぇ」
 立ち止まった蒼牙の腕を持ち、昴は又歩き出す。
「もう、いつもの事だから……いちいち気にしてたらきりねぇよ」
 五人はフェルと龍鬼の背中を見送りながら家の中に入った。

 数時間後、フェル達から蒼牙が育った組織がれたことを知らされることになる。蒼牙がそれを聞いて、何か感じることはないだろう。何か思う事はあったかも知れないが、それは本人以外は誰 も分からない。言葉数の少ない彼から、語られることもないだろう。

   
                双子の再会 終
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