喜楽

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喜楽 0 双子の再会

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「九、どうしたんですか?」
「風牙兄ちゃん、兄弟見つかったからどっかいっちゃう」
 九は風牙の首にしがみ付くと、大声で泣き出してしまった。
 遠巻きに見ていた昂とアサギが、九が泣き始めたので何事かと近付いてくる 。
 風牙は笑いながら、九の頬に流れる涙を優しく拭う。
 「どこにも行ったりしませんよ」
 風牙が九を抱き立ち上がると、フェルの方を見てニコリと笑う。
「弟が見つかったら、ここで一緒に暮らして良いって言ってましたよね?」
 風牙を見上げ、フェルも笑う。
「もちろん、それに人手も足りないしね」
 九が、フェルを不安げに見下ろす。
「ほんとに? 風牙兄ちゃん居なくならないの?」
「ああ、本当さ。家族が一人増えるんだけなんだから」
 フェルが頷くと、九は風牙の腕の中ではしゃぐ。
「じゃあ、九に、もう一人兄ちゃんが増えるの!」
 九は家族が増えることがよっぽど嬉しいらしい、風牙の腕から飛び付くように蒼牙に抱き付いた。 矢張り顔の表情が変わることは無かったが、蒼牙は驚いているらしい、その感情を証明する様に尻尾が膨張している。死んだと思っていた双子の兄が生きていたこと、殺し屋としてここに来た自分に何の躊躇もなく抱き付く少女。今まで自分が 信じてきた常識が一切通用しない、蒼牙は考えが 追い付かないほど驚いていた。
 九は、蒼牙から飛び降りる。嬉しそうにはしゃぐ九の頭をフェルは優しく撫でると、九はそのまま昂とアサギの側へ駆け寄る。少しの間九を見ていたフェルが、蒼牙を見上げた。
「蒼牙……あんたが来るのをずっと待っていたよ。まあ、いきなりこの家族に慣れろとは言えないけどね」
 やんわりと笑うと、肩を竦め苦笑いをする。
「しかし、あんたを切り捨てるなんてよっぽどバ力なのねえ、最高の殺し屋なのに……」
 フェルは、途中で言葉を飲んだ。
「ごめん! あんたも好きで殺し屋なんかになったんじゃないんだよね」
 下を向き、少し辛そうな顔をした。そして、何事もなかったように顔を上げる。
「蒼牙あんたも入れて私の子供達に殺しの仕事はさせない。あんたのちゃんとした仕事も探したげないとね」
 フェルは大きく溜息を付くと、昂達の方を見た。
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