喜楽

喜楽 ０ 双子の再会

１２

　何が起こっているのか理解できずに呆然とする 女の前まで、フェルはゆっくりとした足取りで近付く。
「知ってることを全部喋りな」
　女はその場に、力無く座り込む。そして、脅えた声で自分のボスの事、依頼主の事を話し出した。
「これで全部話したは、私は助けてくれるんでしょ？」
「あんたさあ、本当に助かると思ってんの？」
　フェルの言葉に、女は立ち去ろうとした恐る恐る振り向く。振り向いた女の腹を、フェルが職り上げる。女の体は 軽々と、一番近い木まで飛ばされた。女の体が木 にぶつかると、木は凄い音を立てて折れる。女も、そのまま動かなくなった。
　フェルは、蒼牙の方を静かに振り向く。
　丁度風牙が蒼牙を縛っているロープを解き有無を言わさず蒼牙を抱き締めるところだった。
　音に驚いたアサギと寝ぼけ眼の九が外に出てきて、アサギが九の手を引き昂の横に立つ。
「昂兄さん？　風牙兄さんもう大丈夫なの？」
「あの調子だと、大丈夫なんじゃないか？　しかし、あいつよっぽど驚いてんだな？　無表情な割に、尻尾が膨張してるぜ」 
　昂は、ゲラゲラと笑い出す。
　長い時間風牙は、蒼牙を抱き締めていた。
「蒼牙……」
　風牙はしっかりした確信のある声で、嬉しそうにそう呼んだ。
「やっぱりのぉ」
　龍鬼が、近付いてくると、フェルの横で立ち止 まる。
　蒼牙はフェル達の方を見る。龍鬼の言葉が理解できなかった。
　風牙は蒼牙を解き放すと、心配した様子で蒼牙を覗き込む。
「私の事を忘れてしまったんですか？　蒼牙。あなたをずっと捜していました」
　風牙の言葉を聞いた蒼牙は少しの間、風牙の顔をじっと見ていた。
「風牙……に！」
　蒼牙はここに来てから始めて恐る恐るぎこちないが声を出す。その言葉を遮るように、風牙は蒼牙をも う一度軽く抱き締めた。
　風牙はズボンを引っ張る感じに気付き下を見ると九が不安そうに、風牙を見上げている。風牙はしゃがむと九を見た。