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喜楽 1 ゴーレムと魔力
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風牙と蒼牙が、再開する少し前に話は遡る。
「九! 怪我はない?」
驚いたフェルは石像の有った所で固まっている九の所まで駆け寄る。 九はフェルが近付いて来るなり、安心したのか大声で泣き出してしまった。
「どうしたんだい?」
知り合いの商人が、巨大なドラゴンの石像を理由も話さず、強引にフェルの家に置いていったのは数日前の事だった。 石像自体から微量ながら魔力を感じ、その原因も解らず、どう見ても普通ではなかった。魔力はある程度使う物を特定し、追究出来るのだがそれもままならず。知り合いは、扱いに困って置いて行ったのだ。
家の前が広い空き地になっており、石像は空き地に置きっぱなしにしてあった。処分してしまうつもりでいたが、ここの九がえらく気に入って しまい石像の近くで遊ぶ様になってしまったので、そのまま置いておく事にした。 数日の間は何事もなく過ぎ、石像から感じる微量の魔力が何かに影響を及ぼす様子も無かった。その日も九が学校から帰って来るまで何事も なく、偶々家で寛いでいたフェルは、九の様子を何気無く見ていた。九が石像の側で遊んでいると石像が突然動き出し、町の方に向かって歩き始 めたのだ。
フェルが優しく問い質すと九は顔を上げる。
「今日学校で習った魔法を使ってみたの……」
九は石像の近くで、側にあった小石に魔法をかけ様としたのだと言と、泣きそうな顔をして又下を向く。
「で、今日は何を習ってきたんだい?」
フェルが、下を向いた九の顔をのぞき込む。
「物を動かす魔法……」
九は小さな声でポツリと言った。
フェルは大きく溜息を付き、石像が歩いて行ってしまった方を見る。
「魔法の練習は、一人でしないって約束だったね?」
九の方に向き直すと、フェルは拳骨で九の頭を叩いた。
「ごめんなさい」
九は叩かれた頭をさすりながら、又泣きそうな顔で頷く。
「解ったなら良いんだよ」
フェルはにっこり笑うと九の頭を優しくなでた。
「九! 怪我はない?」
驚いたフェルは石像の有った所で固まっている九の所まで駆け寄る。 九はフェルが近付いて来るなり、安心したのか大声で泣き出してしまった。
「どうしたんだい?」
知り合いの商人が、巨大なドラゴンの石像を理由も話さず、強引にフェルの家に置いていったのは数日前の事だった。 石像自体から微量ながら魔力を感じ、その原因も解らず、どう見ても普通ではなかった。魔力はある程度使う物を特定し、追究出来るのだがそれもままならず。知り合いは、扱いに困って置いて行ったのだ。
家の前が広い空き地になっており、石像は空き地に置きっぱなしにしてあった。処分してしまうつもりでいたが、ここの九がえらく気に入って しまい石像の近くで遊ぶ様になってしまったので、そのまま置いておく事にした。 数日の間は何事もなく過ぎ、石像から感じる微量の魔力が何かに影響を及ぼす様子も無かった。その日も九が学校から帰って来るまで何事も なく、偶々家で寛いでいたフェルは、九の様子を何気無く見ていた。九が石像の側で遊んでいると石像が突然動き出し、町の方に向かって歩き始 めたのだ。
フェルが優しく問い質すと九は顔を上げる。
「今日学校で習った魔法を使ってみたの……」
九は石像の近くで、側にあった小石に魔法をかけ様としたのだと言と、泣きそうな顔をして又下を向く。
「で、今日は何を習ってきたんだい?」
フェルが、下を向いた九の顔をのぞき込む。
「物を動かす魔法……」
九は小さな声でポツリと言った。
フェルは大きく溜息を付き、石像が歩いて行ってしまった方を見る。
「魔法の練習は、一人でしないって約束だったね?」
九の方に向き直すと、フェルは拳骨で九の頭を叩いた。
「ごめんなさい」
九は叩かれた頭をさすりながら、又泣きそうな顔で頷く。
「解ったなら良いんだよ」
フェルはにっこり笑うと九の頭を優しくなでた。
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