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1.ナカオとミチマル
しおりを挟むちりん~
入り口につけておいた安っぽい風景が響いた。
お客さんが入ってくる音にタバコを整理している職員は時計を一度見て振り返らず明るい声で挨拶をした。
"いらっしゃいませ"。
店員さんが見ていようが見まいが気にしない、そんな通りすがりのお客さんがあまりにも多いここは、プレータウンから少し外れた角にある小さなコンビニ。
「お客さんが来たら見てよ。 何してんだ」
「あ~アニキだと思ったから~」
「私は冷遇してもいい人なの?”」
「え?アニキ、最近よく他のお客さんと比較するんじゃん?」
「おい。ここの売上70%は俺の金だよ、お前こうするんじゃない~」
客の言葉にタバコを整理していた職員が手を止め、マルボルレッド1箱を取り出してカウンターの上に置いた。
「いつもタバコばかり買うくせに何を言ってるんだ」
ミチマルは通りの向こう路地にある小さな居酒屋の社長で、ちょうど午前3時になるとタバコを買いに来る客だった。
マルボルレッド。
あのように規則的に買っていくタバコ中毒者はコンビニアルバイト人生2年目に初めて見る材質の客だった。
タバコはすべて同じものだと思っていたが、他の客がマルボルレッドをくれと言うと、いつのまにかもう一度眺める習慣ができるほどだった。
レッドを吸う人はみんな似ているかも知れないっていう感じ?
そのように関心を持って見たら、このレッドというやつが他のタバコに比べてニコチン含有量が非常に高いことが分かった。
つまり、かなりきついタバコということ。
「あのさ、これは強すぎない? ちょっとやめるつもりはないの?」
カウンターの前にあるゴミ箱にタバコのビニールを捨てていたミチマルが、ナカオの言葉に振り向いた。そしてとても冷たい表情をうがんで言った。
「おい、20年の仲間をお前が何でやめろと言うんだ。 線を越えるな」
冷たく一喝して外に出てタバコを吸うミチマル。
そんな冷たい表情のミチマルは、知り始めたばかりの時以外
久しぶりに見るので、ナカオの肩が自然に縮こまる。
ああ言ってもミチマルはタバコを吸ってから再び店の中に
入ってくるのは確かだけど。
なぜか分からないけど、ある日からミチマルは
午前3時頃コンビニに来て眠いナカオとくだらない話を交わすようになった。
最初は何も言わずに帰らないでそのままスナックバーに座ってばかりいたので、社交性の良いナカオが話しかけ始めた気がする。
天気のことについて話しかけたっけ?
「夜はだいぶ寒くなりましたよね?’
だったようだ。
その平凡な挨拶に返事が返ってくるのも結構かかったが
それで最近はミチマルの方から、
今店にお客さんが何組かいたとかモンスタークレーマーが来たとかいちいち言い出すことで
ナカオの眠気を覚ましてあげたりした。
しばらく眠い時間に訪れてくるミチマルの存在が
ナカオの立場からも親しくなってからはありがたく感じられた。
「じゃあ、ミディアムくらいに下げてみたら?」
諦めないナカオ、そのままさがるのには退屈でもう一度刺してみる。
"まったく…"。
ミチマルも怒ってる表情をしても、ナカオのいたずらな表情の前にはいつもすぐ笑ってしまう。
ナカオはミチマルのことを最初からアニキと呼んだりしたわけじゃない。
歳なら歳、社会的地位なら地位、重なることが一つもなかったし
唯一重なるのは夜働くということだけだった。
初めて会った時からナカオにミチマルはむしろ表情や雰囲気が
あまりにも刃が立っていて、どうか来ないでほしいと思っていたお客さんの一人だった。
そんなある日だった。
その刃が立ったお客さんがどこで何の刃に切られたのか血を流しながら
ドーアを開けて入り込んだのだ。
ナカオはその時、わずか夜間に投入されて3ヵ月目の若い青年だった。
驚き、悲鳴さえ上げられずに立っていると、床は血が溜まれたし、
まさに血を流す本人は、冷蔵庫に大股に歩いて行き、
焼酎一本を取り出して持ってきた。
彼は血がついたから手が滑るせいで何度もふたを開けようと
試みたが失敗し、ようやくナカオの存在に気づいたかのように
ドンとカウンターに焼酎を置いといて目つきで言いかけた。
[….]
しっかり聞き取ったナカオが本能的に焼酎のふたを開けて捧げると
彼は腕に焼酎を注ぎ始めた。
焼酎が混ざり合ってミチマルの腕から淡い赤色の水が
流れ落ちるにつれて床もさらにたまった。
「綿…脱脂綿あるだろ? 包帯とかも。」
[マルボロレッド]
いつもこの言葉以外は話さなかったし、する必要もなかった仲だったので
2音節以上の声を聞いたのはその日が初めてだった。
想像したことがなかったにもかかわらず不思議に想像した通りの
低くハスキーな声だとなかおは思った。
「あ、あ、はい、はい!」
男の顔は何も知らないナカオから見ても青ざめていた。
血をたくさん流したのだろうか。
救急車を呼ぼうと思いながら倉庫に
備えた救急箱を持ち出すと、
彼はいつの間にか床に座り込んで目を閉じていた.
「あ!119」
急いで119番を叫んだ。
死んだような彼の姿に戸惑ったナカオの顔がさらに白くなり、
この若い青年が恐怖に震えながら電話機を探してカウンターの中に
入ろうとした時、静かだが力のある声が青年を捕まえた。
「うるさい、明日で治る」
「あ…?」
「大丈夫だから、これでも巻いてみて」
全然死んでいくような気がしない人の声に
不思議に安心して、ナカオは素早く近づいて包帯を取り出した。
ナイフで切られたように長い傷から血が出ていて、
ナカオの手は彼の腕のどこから巻くべきか
迷って手首から包帯を巻き始めた。
これで合ってるかな? 止血からしないといけないんじゃない?
多くの疑問が頭をよぎったが、ナカオはすべて無視して
熱心にそれなりの救助活動をした。
下手に包帯をほとんど巻いたとき、お客さんの携帯電話が鳴った。
血が出続けたのか今は包帯を染めていた。
「うん、私は大丈夫。ちょっとやぶを俺の家に送って。
近くだから5分で行ける。 来る必要はない。」
通話を終えた彼はどこでそんなに元気が出るのか飛び起きて
ドアに向かって歩いて行った。
開いたドアの隙間から冬の始まりを告げるように冷たい風が入り、
半分ほど身を乗り出していた男は、完全に出ずに振り向いたまま言った。
「通報しても無駄だよ、ここの警察の中に俺の金をもらってない奴はいないんだ。
そしてそのまま消えてしまった。
残されたコンビニの青年は、血だらけの店内を見回り、
客がいない時間だったので幸いだと思った。
それでも、もしかしたら来るかもしれない お客さんの情緒のために
ドアを閉めて掃除に突入した。、
後で焼酎1本代金を詰めることも忘れなかった。
その後3日間、あの客は来なかったし、
そのくらいナカオもそろそろ心配になってきた。
やはり119番を呼ぶべきだったという考えを皮切りに
ナカオの頭の中でその人はもう棺桶に入って
地に埋めるか樹木葬をするか選択の岐路に立たされていた。
人一人を行かせるのがこんなに簡単だった。
血だらけの日から5日目。
“~~~”
風景が客の訪ねを知らせた。
彼だ。
"こんにちは!!"
死んだと思っていた彼が、以前と同じ姿でカウンターの前に立っていた。
ふと見だが変わったことはなさそうだった。
きっとナカオの目に喜びがにじみ出ていたのだろう。
「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは」と挨拶をし、喜びがたっぷり込められていた。
怖い人だったが悪い人ではないと確信した。
ナカオの目には一応彼は自己管理が徹底しているように見えた。
近くで働くんだなと気を利かせて思ったのは、いつも一定の時間に来るということ、いつも夜に来るのを見ると、近くの数多くの居酒屋の中で働く職員だろうという気がしたからだ。
それでも酒に酔った姿は見たことがないので、きっと寡黙な性格に真面目なのだと…。
「昨日…休んだよな」
いきなりタメ口が飛び出る彼に一抹の反感もかんじられなかった
生まれつきがため口だけ使う人のようだった。
「はい!!昨日休みでした。」
“…”
ぽん。
彼はナカオの前に白い封筒を一つ投げて低い声で言った。
"焼酎代"。
「あ~結構です。」
「…清掃費」
「はい、ありがとうございます。」
かっこよく断りたかったが、なぜか受け取るまで名分を付けそうだと思い、ナカオは2回で封筒を素早く受け取ることにした。
まあ、結構苦労したこともあるからいいんだ。
そして借金の清算が済んだ彼が再びナカオの肩越しにあるタバコに視線を向けた。
彼の口が開くとだん、素早くナカオが言葉を切った。
おせっかいなひとだとよく言われるナカオだった。
「マルボ…」
「大丈夫ですか?」
ある意味、話したことはないが、自分で親しくなったと勝手に口が開いたようだった。
内的親密感というか…
生死を行き来した戦友愛というか。。。
とにかくナカオはそんな感じで彼の言葉を切りながらカウンターのそばにある魔法瓶から瓶の豆乳を一つ取り出した.
「怪我をしたじゃないですか。タバコも休まなければならないでしょう、そうでもないかな。」
彼はナカオの口をじっと見守っていた。
どこまで何をしゃべるのか気になる視線で、
聞いてあげるから、一度しゃべってみろという目つきだったが、
おせっかいなひとであり、空気を読めない力マンレプのナカオは強かった。
彼の目つきはナカオの前では吸収されず空中分解してしまった。
「今日はこれを召し上がってください。 取られたと思っていた焼酎代も返してもらったし。”
そして、ふたを開けて彼の前に差し出しながら付け加えた。
いや、ブツブツ言った。
「外は寒いですよね?暖かいものを飲んで タンパク質を召し上がってくださいよ。」
“……”
"心配してたんですよ"。”
瞬間、彼の目つきが微細に感情を表わした。
「…心配?」
「もちろん!心配をしないならば、それが人間なんですか?」
そうやって僕の目の前で 人が血を流して消えたんだけど
生きたか死んだか、死んだら葬儀はどこで行うのか。
なぜ119を呼ばなかったのだろうか。 私が手に入れることができたのに、
色んなことを考えたんですよ~。”
彼はじっと目の前に見える豆乳とナカオを交互に見て左手で瓶を取った。
「暖かいでしょう?」
彼が瓶を捕ると、ナカオは喜んで叫んだ。
豆乳か…どこのだったっけ…最近は営業をこんな風にしてるんだね。
ミチマルが温かい豆乳を一口飲み込み、指先から体の中まで暖かくなる気がした。
にこにこ笑うバイトの顔も今日に限ってもっと明るく見えるし
一口飲んだ豆乳があまり気に要り、ミチマルは店に買っておこうと思って一気に飲み干した。
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