24時on air

sakanahone

文字の大きさ
2 / 2

2.

しおりを挟む


その後、ミチマルはタバコと一緒に瓶豆乳を必ず飲んでから帰る出席印を押し始めた。



「じゃーん」



「何だ?」



[完出プレゼント。]



「完出?」



「うん。一ヶ月完全出席」



“?”





ミチマルが何を言っているのか分からない顔で首をかしげると、ナカオがお腹をつかんで笑いながら話した。



「あははは。聞き取れないと思った。 アニキ、今1ヶ月も欠かさずうちの店に来たんですよ。」



ナカオの説明にミチマルは一瞬照れくさかった。


そんなに来ているとは思わなかったが…。


”アニキ、よく来てたけど、こんなにちゃんと来たのは別の理由があるんだよね?”




自分も知らない理由があるという言葉にミチマルがびっくりしてナカオを眺めていると、ナカオは面白い事実を知ったようにさらに雰囲気を盛り上げた。




”やっぱり~~やっぱり~~のために~”




ーやっぱり、やっぱり。だから?



ミチマルは心の中で思わずナカオの言葉を真似していた。

なぜなのか、自分も気になった。




「私のせいで!!”



ミチマルの瞳が大きくなった。


ドキッとしたのがドンドンと心臓が舞い落ちる音が聞こえるようだった。



[~と言いたいのですが、この、この瓶豆乳のせいでしょう? 他のところは売ってないのよ~私が店長に積極的に推薦して注文を入れてほしいと言ったの。 これ知ってる人あまりいないよ~。」



明るい声で再び豆乳の礼賛論者になったナカオを見て、ミチマルは安堵のため息をついた。

この子がゲイである自分の好みなことは否定しないが, ちょうどそこまでなので, この子にでたらめなことをしようとするつもりなんか決してなかった。

世の中には色々な仲があり、ミチマルにはこの子と過ごす午前3時の十分余りの時間が良かっただけだった。

自分がゲイであることを知った瞬間、この時間と、この間がずれるのではないかと思って….



それにもかかわらず、特に隠す方ではなかったので、この機会に笑って話してみようかと思ったが、人はどんなタイトルを持つかによって背を向けることもあるので、あんなに毎日迎えてくれた目つきに警戒心が生じるのではないかと心配して。
傷つく余裕も薄れて無くなったと思ったが、なぜか傷つく自分が怖くなった。




「はぁ…そうだね。これおいしい。」




「それで私が用意したの!」




ナカオが豆乳1箱をさっと持ち上げた.




「それで~ 完出プレゼント!!」


「お前…時給いくらだ」


「えい、またからかうわけ? 時給人生だと?」



「いくらかぃタバコと一緒に計算して」


「アニキ。受け取って~」


「じゃあ、俺がこれをもらったら、あなたもおれが紹介する仕事をする?」




ナカオは夜はコンビニの夜間アルバイトに、午後はパーキングドライバーとして昼夜を問わず働いていた。

あの若干の歳で簡単なことではないんだから、当然事情が深いと思ったミチマルは

勝手に自分の店のカウンターで働かせて給料をたっぷりあげるもりだったのに、こいつは一気に断った。




「あ~アニキに、私は可哀想に見えるんだよなぁ」



ナカオの顔は笑っていたが、目つきだけは傷ついたと言っており、ミチマルはしまった、と感じた。

大人が子供の面倒を見てくれるのが…可哀想に見えてそんなのがまあ…それがどうしたのかぃ

確かにナカオにはそんな言葉は似合わなかった。



辛くて可哀想だというのはミチマルの基準であって、ナカオが苦しんでいるのを一度も見たことがなかった。



口がうるさくて、おせっかいな人だが、その中にナカオ自身に関した話は抜けているということを、ある瞬間気付いた。


昼間にパーキングドライバーとして働くのもミチマルがデパートに用事があって行ったらわかったということだ。


手信号をする姿に見慣れて窓を開けてみたらナカオだった。

それでその日夜明けコンビニへ行って「駐車場でお前を見た」と言うと、ナカオは恥ずかしがらず慌てることもなくただ笑うだけだった。

それでやったことのないおせっかいをしてみたが、一気に断られたのだ。



「あ~アニキに、私は可哀想に見えるんだよなぁ」



という言葉がミチマルにかえって傷となった。



絶対にそういうつもりで言ったんじゃないけど 本当にあなたのために考えて言ったんだと言いたかったけど

実はその言葉通りだったので、
人に済まないという感情を感じたことはあまりないが、その瞬間はとても申し訳なくてネズミの穴があったら入りたいほどだった。



よく耐えている子供の土手にひびが入れたかもしれないと思うと、申し訳なく限りなくすまなかった。

しかし、また時間が経って考えてみると、大変な道ではなく楽な道を教えてあげるというのに、あえて断る必要があるのかと思った。



一生の職場でもないし、ある程度お金を貯めたら飲み屋ではなくナカオに似合う店を一つ作らせてあげればいいんじゃないかな…

そのような考えをしたこともあったが考えは考えで残し、今はいたずらで釣りをしたりもしている。



まさにこういう時。

ナカオがミチマルに食べ物を用意したり、ささやかな分かち合いをする時。

ミチマルは「お前のくせにお金をむやみに使うのか」と受け取った分ほど、計算は徹底的にし、

そのたびに、他にお金をたくさん儲ける働き口を紹介してあげるとも言った。

もちろん最後はいつもナカオがお金を受け取ることで終わる。

ところが、今日は退く気配がなかった。


「アニキ、本当に今日受けとってくれないと、私はめちゃ寂しいんだ。 私たちこれくらいのやりとりはできるじゃない?

「べつに」


ミチマルが大まかに財布から1千円札を数枚取り出そうとしたが、ナカオの寂しい声が聞こえてきた。


「ありがたいから」


「….」


その目つきはあまりにも真剣で、ミチマルの手を止めせた。そしてしばらくナカオを眺めさせた。





「私、高校も辞めたから学校の友達もいないよ。 学校を辞めて一人で働くことばかりしているから、親しい人が一人もいないのに、アニキと親しくなってとても嬉しかったよ」


そして、一息休んで呼吸を整えて話す。


「昨日給料日だったけど、今朝最後の借金を全部返したんだ。」


「すごく幸せな日なのに、話す人がいないわけ、お祝いはしたいけど、私には話す人がアニキしかいないんだ。 今まで本当にありがたくて… いくらなんでも私のお金を払ってこれ一つ買わせないのか」


ナカオの低いゆるしの秘跡のような言葉がミチマルの胸に響いた。

もちろん、表には出さなかった。


「えっと…」



ミチマルの手が豆乳箱に行くかまいか迷う。




「おい、そんなにありがたかったら他のものを奢って。 お酒とか。 日を決めて、お祝いしないと。 これは俺が払う.」




いくらか分からない金を投げておいて、ミチマルは豆乳箱を持ってコンビニを出て行った。

今日はどうもナカオを見ていられないようだった。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ

MITARASI_
BL
I 彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 Ⅱ 高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。  別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。  未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。  恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。  そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。  過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。  不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。  それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。  高校編のその先を描く大学生活編。  選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。 続編執筆中

偽物勇者は愛を乞う

きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。 六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。 偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。

悪役の僕 何故か愛される

いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ 王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。 悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。 そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて… ファンタジーラブコメBL シリアスはほとんどないです 不定期更新

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

来世はこの人と関りたくないと思ったのに。

ありま氷炎
BL
前世の記憶を持つ、いずる。 彼は前世で主人だった三日月と、来世で関わらない事を願った。 しかし願いは叶わず、幼馴染として生まれ変わってしまった。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

処理中です...