姉より可愛い弟なんて存在する筈がない

tohalumina

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make a break 真11

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「ところで、宗吾。帰ってきたときから気になってたんだが、女子達はどこ行ったんだ?そして、何故お前は暇そうにしてるんだ?」

「おいおい、大毅。そう、いくつも聞くなよ。まぁ、そんなせっかちなところもお前らしいんだが」

「お前は少女漫画のキザ男か!」

「ふはははは。面白い冗談だな、楽斗。誰がキザ男に見えるって?」

  いや、わりかしマジで言ったんだけどな。ホント冗談とか抜きで......。

 そんな楽斗の内心も露知らず、宗吾はフッと鼻で笑い飛ばし、真面目な顔で話を続ける。

「まぁ、脱線しすぎるのも時間の無駄だから話を戻すが......まず一つ目だが女子達なら二つの隣の家庭科準備室で作業しているさ」

 その言葉に「ふーん」と大毅。全く興味なさそうだ。
 自分で聞いたのだからもうちょっと興味を持ってもいいと思う。

 てか、やっぱり宗吾はサラッと言ってるが、家庭科準備室《それ》の鍵もパクって......。

 だが、ここは歴戦を重ねてきた楽斗。当然口にすればめんどくさいということは分かっていたので、華麗にスルーする。

「おいおいお前達。楽斗は良いとしても、せめて大毅。聞いたからには、もう少し興味持てよ......」

「えっ。............いや、あっ、そうだな。すまん」

((......なんだ今の不自然の間は!!!))

 馬鹿だ馬鹿だとは思っていたがこれ程とは......。
 いや、これはもう馬鹿と言うより認知症を疑った方がいいのかもしれない。

 楽斗は頭を抱えた。

 と、同時に宗吾は何故か祈りを捧げるポーズをとって

「おお......神よ。この哀れな者に祝福を......」

「誰が哀れだ!!!」

「宗吾、無駄だぞ。いくら神でも大毅の頭までは直せない」

「......それもそうだな」

「おい、楽斗!!!宗吾も納得するなぁ!!」
 
「じゃあ二つ目だが、何故俺が暇そうにしてるかって?それはだな━━━」

「まて!ここでスルーは無視されてる感が凄くてキツいぞ!」

「━━━俺は自分の仕事、つまり寸法計測を既に終わらせたからだ!」

「完璧に無視しやがった......って......

「え!?」」

 大毅と楽斗の言葉が重なる。

 驚きの声が。

「ん?何そんな驚いてるんだ?」

「「......」」

 二人は互いの若干青ざめた顔を見合わせた後、ガタガタと震えを堪えながら言う。

「なぁ、宗吾。一つ聞いて良いか?」

「何だ?」

「お前、今自分の仕事が終わったって言ったよな」

「あぁ......言ったぞ」

「......で、お前の仕事は寸法計測だとも言ったな?」

「......あぁ」

「もひとついいかな?」

 楽斗と大毅が大きく息を吸った。

 そう。お気付きの方も居るかと思うが、今二人の頭に浮かんでいるのは某漫画の名シーン。
 いろいろな都合上の問題で、台詞こそは真似してないものの雰囲気、そして流れを完璧に再現することを意識した二人は、合図無しで自然と同じタイミングで同じ言葉を告げた。

「「お前、俺(オレ)達の寸法をいつ測ったんだ」」

 完璧だ。我ながら素晴らしい。
 二人は個々にそう思った。

 確かに台詞こそは違うが、この雰囲気と流れならば思わず宗吾もあの名台詞を言わざるを得ない。
 そう確信する。

「楽斗は昨日、大毅は今日車で測ったぞ」

「「ふ......ふっざけんなぁあああ!!!!」」

 確信していた。

 なので、その分期待は大きくなっていたわけで......二人の怒声、そして罵声が騒ぎを駆けつけた女子達がやって来るまで宗吾に襲いかかることとなった。




「で、あんた達は何を騒いでたわけ?馬鹿なの。先生が来たらどうするつもりだったわけなの?」

 そうニッコリ笑いながら尋問する裁判官《るおん》に、それぞれ体の部位にダメージを負った容疑者達は冷や汗を流して、互いに視線を交わす。

 裏切りは無しだぞ。

 そんな宗吾の視線を楽斗と大毅は分かっている、と頷く。


「「宗吾《こいつ》が悪い」」

「何も分かってないじゃねぇか!!!!」

「あーーー!!!うるさいってば!!!」

 文字通り拳で撃沈され床に沈む三人。

 と、そこで教室と廊下の中間に立っていた圭子が、その眉をピクリと動かしたと思うと、やけに冷静な声で一言。

「逃げるぞ」

 いきなりの展開に意味が分からずキョトンとする一同だったが、唯一その意味を理解した流音の顔が思いっきり引きつる。

「それって......」

「ああ。教員にバレた」

 一同全員の顔が引きつった。

 それもそのはず。
 現在の時刻は七時二十分であり、それは下校時刻の六時を軽く上回っている訳であり、そもそも、今使っている教室や家庭科室の使用許可はおりてない訳で、勝手に作った合鍵で開けているわけで......。

 とにもかくにも、言いたいことは、教員に捕まったら恐らく学園生活は終わりを迎える、ということだ。

 
(((逃げるしかない)))

 現状の置かれている立場を理解した問題児達は今までにないくらい高速で考えがまとまる。

 しかし

「あっ、......」

「どうした!菫」

「ゴメンゴメン。家庭科室の電気つけっぱだわ」

 菫はそう言って手を合わせ、テヘペロと舌を出した。
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