姉より可愛い弟なんて存在する筈がない

tohalumina

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集会という名の公開処刑3

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「じゃあ、はい。先生。俺終わったしこれ返す━━━ぐぇッ!?」
「決意するな!馬鹿がッ!!」

 額に青春の汗をキラキラと浮かばせながら笑顔でマイクを返そうとした宗吾に怒りの拳が落ちる。
 クリーンヒット。
 ガードする間もなく放たれた拳に宗吾は蛙のような呻き声を残し床に倒れ、ピクリとも動かなくなった。


「わーお!すごいセンセ~!一発KOだよっ!」
「動かない。ただの屍のようだ......。人の命とは何て儚く虚しき物なんだ。
 しかし、別れがあれば出逢いもある。来世また会えることを期待しているぞ」
「いや、圭子。たぶん死んでいないと思うぞ?なっ、お前もそう思うだろ楽斗?」
「━━━女制服女制服女制服女制服女制服女制服女制服女制服女制服━━━」

「駄目だ聞いちゃいない......」
「ここだけ聞くと何かがっくん変態みたいだね~」
「そんなに女子用制服が嫌なのか?ならば仕方ない。私がプリティーガールのためにリボンでも買ってきてやるとするか」
「おい。次は貴様らの番だぞ!無駄話をやめて早くこっちに来い!」

「待て圭子!それは逆効果だッ!」
「そうだよ姉御。がっくんにはシュシュの方が似合うと思うよ!」
「無視するんじゃないッ!」

「そういう問題じゃないだろう」
「なるほど一理あるな」
「あるのか!?」

『キサマラァァァッ!!!話を聞けぇぇee!!!!』
   
 キィィィィィィン!!!!
 突然の不協和音が流れる。

「......」
「......」
「......」
「......」
『......な、何だその目は!俺は決して悪くないぞ!悪いのは話を聞かなかった貴様r』

 キィィィィィィン!!!!

「......最悪ですね。耳がおかしくなりそうです。一回死んでくれませんか?」
「......はっはっh............耳が痛くて上手く笑えないのだが。生首にしてやろうか?」
「......うるせぇな。ぶっ殺すぞ」
「お前達......一応先生に向かってドストレートに言うのは失礼だぞ?こういう時はオブラートに包むもんだ。
 先生、永遠の眠りについてください。ってな」

 四人から飛ぶ罵詈雑言に先生はピクピクとこめかみ辺りの筋を動かした。だが、背後から突き刺さるような視線を感じ、背後━━━つまり全校生徒のいる方を振り返り動きを止めた。
 全校生徒ほぼ全員が耳を押さえて恨みがましい目でこちらを見ていたのである。

「ん?あいつなんか動かなくなったよ?」
「死んだのではないか?心臓麻痺とかで」
「ざまぁr......御愁傷様ですッ!」
「楽斗。......お前そんなキャラだっけ?」

 もはや彼らの概念にひそひそ話と言うものはないのか大きな声で話し合う四人。
 そんな四人の声を聞いて、先生はハッ我に返った。

『━━━さぁ、次は順番的に石刀。お前の番だ。早くマイクを受けとれ』

「あっ、死んでなかった。残念~」
「「チッ」」
「まさか舌打ちがハモるなんて━━━って、オレからか。
 ......両手両足が塞がれている今どうやってやれと?」

 ト◯ロのカ◯タ見たいにンッと差し出されたマイクを見て大毅は苦笑すらできずに真顔で問い掛けた。
 すると、先生は慈悲深い笑みを浮かべたあと

『そうだな。ではマイクは固定しといてやる。それならその状態話せるだろ。
 ━━━ほらよっと。これで大丈夫だ。さぁ、やれ」
「......あくまでオレの拘束を解く気はないのか。......いいさ。この状態でやればいいんだろう」

 大毅は覚悟を決め、芋虫のように両手両足が縛られた身体を上下に揺することによってマイクが固定してある位置まで移動した。

『はぁはぁ。移動だけでも一苦労だな......。
 こんにちは皆さん、オレは石刀大毅です』
 
「うそっ!?この人が大毅様!?確かに顔はイケてるけど......」
「顔がイケてれば良くない?」
「「「や~ん。カッコいい~」」」

 自己紹介しただけでこれである。

 菫はあからさまに大きなため息を吐いた。
「顔がイケてるって何をしても許されるって感じがして卑怯だよね」
「同感だ、菫。
 ━━━そうだ!今度顔が変わるまで大毅の顔面に攻撃しないか?」
「なにそれ面白そうだな。俺も入れてよ」

『......』
 大毅は背後から聞こえた声に「お前らも顔だけはイケてんだろ!」と「だけ」を強調をして突っ込もうとしたが、ギリギリで自分の目の前にマイクがあることを思いだし言葉を飲み込んだ。

(とりあえず後で三人を絞めるか......圭子は逆ギレからの反撃されそうだし、楽斗は明日から制服が変わるみたいだから勘弁してやるか。
 よし。菫だけ絞めよう!)

 ━━━飲み込んだ代償に菫に怒りを宿すことになった事を菫はまだ知らない━━━。


「よし、じゃあ石刀。理由と今度どうするかを話せ」
『言われなくても分かってる。
 えー、今回オレが並木を五本倒した理由は目撃者の証言通り修行のためだ』

『━━━では何故修行をしたのか。それには大きな理由がある。それは皆も知ってると思う放送室事件が深く関わっている』

 放送室事件、その単語に大衆が息を飲む。
 その予想通りの様子を見て、大毅は表情には出さずに微笑んだ。
 想定通り、と。

(大野には悪いが、楽斗ととの仲直りに協力してあげるんだ。このくらいの利用は我慢して貰うぞ)

『実はオレはあの時放送室に居たんだ。勿論、大野に協力するためではなく止めるために。
 だが、大野は腕が立つ奴で止めようとしたオレを軽々と投げ飛ばし、その衝撃でオレは気絶。奴の暴走を止められなかったんだ。
 結果、放送は流され、大野は停学となってしまった。
 そして、昨日の下校時オレは気づいたんだ。あの時止めれていれば、もっとオレが強ければ大野は停学にならなかったのではないかと。だからオレは修行することにしたんだ。強くなるために。
 そしたら、いつの間にか並木が五本折れてた。今は後悔しているし反省もしている。
 ━━━以上!』

 ━━━町中を騒がせた事件を止めようとして戦い敗れ、それでもなお、挫けることなく強くなろうとした男を誰が攻められようか。
 パチパチ。一人の拍手に釣られ、次々とあちこちで拍手が沸き上がり、歓声が体育館を包み込んだ。

「大毅様素敵~!!」
「マジカッケェ!!!」
「そ、そうだったのか。石刀。すまん先生はお前の事を誤解していたようだ」

 違反者から急転、ヒーローに成り変わった大毅に褒め称える言葉が飛び交う。
 
 そんな中昨日同じく事件に関わっていた五人(一人失神により除外)は皆こう思っていた。

 一言、「大嘘つきッ!」と。
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