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集会という名の公開処刑4
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「ふぅ」
本当にすまないと謝罪する先生により両手両足をガムテープを外された大毅は、尚も謝り続けている先生に「大丈夫です」と声をかけ、謝罪を止めさせた。さすがに、これ以上謝られると嘘の証言をしたと言う罪悪感が大きくなりすぎて耐えきれそうになかったからだ。
(......少しやり過ぎたか...?。いや、放送室事件で傷付いた楽斗の分だと思えば割りに合うか。それにしても......)
大毅は考え事を止め、チラリと先生を見る。
もしかしたら先生は自分が止めても謝罪をやめないのでは。と思っていたが、その心配は無用だったようで、先生は「なら良し!」と既に関心を無くし他人事のように呟いていた。
(相も変わらず図太い神経してるな。その図太さが羨ましいよ......)
拘束を解かれた大毅は牢から解き放たれた囚人のように歓喜することなく、ため息を吐く。
そして、苦笑いを無理矢理作りつつ後ろを振り返り元の位置へと後退した。
「サイテー」
「非道だな」
「嘘つきが」
これもまた予想通り。元の位置に戻った大毅を三人の小声での罵声が冷たく迎い入れる。
しかも、それはいつもしてくる罵声ではなく明らかに正当な理由があり、大毅自身もそれを自覚しているため反論することは出来なかった。
(罵声を浴びせられる事は想定内だが......意外と堪えるものだなぁ)
そこまで考えて大毅は笑う。この程度で何を音を上げているんだと。
大毅は遠い目で壇上の下に視線を向けた。そして、一人の女子生徒を見つけ視線を固定する。
すると、向こうも大毅の視線に気づいたようで、ニッコリと微笑んだ。しかし、表情とは裏腹に目は笑ってなく、まるで『余計な手間かけさせるんじゃねぇよ。辻褄合わせるのが大変じゃねぇか』とでも言うような、ほの暗い火が灯った瞳をしていた。
ゾッとする。冷や汗が止まらない。
何でこうも友人の女達はオレを怯えさせるのが上手いんだろう。
(これオレ死んだな......遺書でも書いておこうかな)
リアルタイムでそう実感した大毅の視線の先には━━━雨宮流音が不適に微笑んでいた。
罵声を浴びせられても表情をほとんど変えなかった大毅が強ばった表情になったのを見て、菫が首を傾げて、
「ありゃりゃー?急にどうしたのかなー?」
「俺には分からん」
「姉御は?」
「私もプリティーガールと同意見だ━━━━ッ!!?」
「ど、どうしたの姉御?」
急に途切れた台詞に菫は思わず圭子の顔を見つめ、まずその表情に驚いた。
「すっご!?姉御のこんな表情初めて見たよッ!!!!!あー!!!何で私カメラ持ってきてないんだー!!!手元にあったらすぐさま写真撮ってるところなのにー!!!」
「な、何してるんだ、菫?」
目を輝かせた、と思ったら突然地団駄を踏み出した、と思ったら手をワシャワシャとさせた、と思ったら頭を抱えた菫に楽斗は訊ねる。
無論、ドン引きで。
「な、何でもないっ!に、にしても姉御どこ見ているんだろうね」
少々暴走気味だった自分に反省し、その感情を抑え込んだ菫は「なはは」と笑いを溢しながら、あからさまに話題を反らした。
「圭子?......未来とかか?」
「えっ!?姉御未来見えるの!?」
「いや、知らねぇけど。気になるんだったら圭子の視線を追ってみればいいんじゃないか?幸い、今この会話も耳に留めておけないほど何かを集中してみてることだし。追うのも別に難しくないだろ」
「............」
二人の間に謎の沈黙が流れる。
「............」
「............」
「......だ、ダメか?」
「ん?何が?」
「さっきの提案の事だけど...」
「へ?何でそんなこと聞くのー?」
「いや、お前なんか気まずそうに黙ってたじゃないか!?」
「あーね。違う違う。さっきの沈黙は、さっすがーがっくん!エグいことを考え付くねー!って感動してただけだよ!」
「......頼むから沈黙はやめてくれないか?」
「何で?」
「紛らわしいからだよッ!!!」
「━━━で、さっき提案を出したときは他人事みたいに言ってたのに結局がっくんも見るんだね」
圭子の視線の先に顔を向けた菫が、同じように顔を向けた楽斗に笑いかける。
「まぁな」
「やっぱ気になるんだー。姉御の表情」
「あぁ。圭子がこんな表情をするなんて初めて見るような気がするからな。原因ぐらいは見ておきたいと思ってさ」
「だねー。しかし、私は驚いたよ。正直私は一生見れないと思ってたからね」
「安心しろ。俺もだ。まさか、あの圭子が怯えているような表情をするなんて夢にも思わなかったからな」
「今日は発見でいっぱいだね。大毅が怒った所も見ちゃったし来週も━━━」
「何それ初耳なんだけどッ!!?え?怒ったのあの大毅がぁぁ!?って来週もって?」
「やだなぁ、忘れたの?がっくん来週から女用制服じゃん!」
「やめろぉおおおおお!その事を思い出させるなぁぁあ!!!せっかく忘れてたのにぃぃい!!!」
そう(一方から見れば)軽口を叩きあって、二人は再度圭子視線を追った。
本当にすまないと謝罪する先生により両手両足をガムテープを外された大毅は、尚も謝り続けている先生に「大丈夫です」と声をかけ、謝罪を止めさせた。さすがに、これ以上謝られると嘘の証言をしたと言う罪悪感が大きくなりすぎて耐えきれそうになかったからだ。
(......少しやり過ぎたか...?。いや、放送室事件で傷付いた楽斗の分だと思えば割りに合うか。それにしても......)
大毅は考え事を止め、チラリと先生を見る。
もしかしたら先生は自分が止めても謝罪をやめないのでは。と思っていたが、その心配は無用だったようで、先生は「なら良し!」と既に関心を無くし他人事のように呟いていた。
(相も変わらず図太い神経してるな。その図太さが羨ましいよ......)
拘束を解かれた大毅は牢から解き放たれた囚人のように歓喜することなく、ため息を吐く。
そして、苦笑いを無理矢理作りつつ後ろを振り返り元の位置へと後退した。
「サイテー」
「非道だな」
「嘘つきが」
これもまた予想通り。元の位置に戻った大毅を三人の小声での罵声が冷たく迎い入れる。
しかも、それはいつもしてくる罵声ではなく明らかに正当な理由があり、大毅自身もそれを自覚しているため反論することは出来なかった。
(罵声を浴びせられる事は想定内だが......意外と堪えるものだなぁ)
そこまで考えて大毅は笑う。この程度で何を音を上げているんだと。
大毅は遠い目で壇上の下に視線を向けた。そして、一人の女子生徒を見つけ視線を固定する。
すると、向こうも大毅の視線に気づいたようで、ニッコリと微笑んだ。しかし、表情とは裏腹に目は笑ってなく、まるで『余計な手間かけさせるんじゃねぇよ。辻褄合わせるのが大変じゃねぇか』とでも言うような、ほの暗い火が灯った瞳をしていた。
ゾッとする。冷や汗が止まらない。
何でこうも友人の女達はオレを怯えさせるのが上手いんだろう。
(これオレ死んだな......遺書でも書いておこうかな)
リアルタイムでそう実感した大毅の視線の先には━━━雨宮流音が不適に微笑んでいた。
罵声を浴びせられても表情をほとんど変えなかった大毅が強ばった表情になったのを見て、菫が首を傾げて、
「ありゃりゃー?急にどうしたのかなー?」
「俺には分からん」
「姉御は?」
「私もプリティーガールと同意見だ━━━━ッ!!?」
「ど、どうしたの姉御?」
急に途切れた台詞に菫は思わず圭子の顔を見つめ、まずその表情に驚いた。
「すっご!?姉御のこんな表情初めて見たよッ!!!!!あー!!!何で私カメラ持ってきてないんだー!!!手元にあったらすぐさま写真撮ってるところなのにー!!!」
「な、何してるんだ、菫?」
目を輝かせた、と思ったら突然地団駄を踏み出した、と思ったら手をワシャワシャとさせた、と思ったら頭を抱えた菫に楽斗は訊ねる。
無論、ドン引きで。
「な、何でもないっ!に、にしても姉御どこ見ているんだろうね」
少々暴走気味だった自分に反省し、その感情を抑え込んだ菫は「なはは」と笑いを溢しながら、あからさまに話題を反らした。
「圭子?......未来とかか?」
「えっ!?姉御未来見えるの!?」
「いや、知らねぇけど。気になるんだったら圭子の視線を追ってみればいいんじゃないか?幸い、今この会話も耳に留めておけないほど何かを集中してみてることだし。追うのも別に難しくないだろ」
「............」
二人の間に謎の沈黙が流れる。
「............」
「............」
「......だ、ダメか?」
「ん?何が?」
「さっきの提案の事だけど...」
「へ?何でそんなこと聞くのー?」
「いや、お前なんか気まずそうに黙ってたじゃないか!?」
「あーね。違う違う。さっきの沈黙は、さっすがーがっくん!エグいことを考え付くねー!って感動してただけだよ!」
「......頼むから沈黙はやめてくれないか?」
「何で?」
「紛らわしいからだよッ!!!」
「━━━で、さっき提案を出したときは他人事みたいに言ってたのに結局がっくんも見るんだね」
圭子の視線の先に顔を向けた菫が、同じように顔を向けた楽斗に笑いかける。
「まぁな」
「やっぱ気になるんだー。姉御の表情」
「あぁ。圭子がこんな表情をするなんて初めて見るような気がするからな。原因ぐらいは見ておきたいと思ってさ」
「だねー。しかし、私は驚いたよ。正直私は一生見れないと思ってたからね」
「安心しろ。俺もだ。まさか、あの圭子が怯えているような表情をするなんて夢にも思わなかったからな」
「今日は発見でいっぱいだね。大毅が怒った所も見ちゃったし来週も━━━」
「何それ初耳なんだけどッ!!?え?怒ったのあの大毅がぁぁ!?って来週もって?」
「やだなぁ、忘れたの?がっくん来週から女用制服じゃん!」
「やめろぉおおおおお!その事を思い出させるなぁぁあ!!!せっかく忘れてたのにぃぃい!!!」
そう(一方から見れば)軽口を叩きあって、二人は再度圭子視線を追った。
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