姉より可愛い弟なんて存在する筈がない

tohalumina

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アフスクチルドレン4

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「......生きてた..................」

 地面に尻餅を着きながら楽斗はそう声を漏らした。

 てっきり二階だと思って窓から飛び出した楽斗は、正直、飛んでいるというか落ちている途中で三階だと気づいたときは死を覚悟した。
 それは、二階と数メートルしか変わらないはずなのに遥かに高く思えるその高度も要因だったのだが、最大の要因は単純に下が駐車場━━━つまりコンクリートだったことだ。

 ニュースとかで高いところから落ちたが無傷だったという話は聞いたことはあるが、それらは大抵、茂みや木などに引っ掛かったりして衝撃を和らげてもらっているという場合だ。だが、それは逆に言えば、茂みや木などが無かった場合、無傷ではすまないと意味している。
 そして、駐車場に飛び降りた楽斗の周りには茂みや木どころか草すら生えていなかった。


「......やっぱ俺、運が高いのかな......」

 ぱっぱっと、手で尻に着いた砂を払いながら立ち上がった楽斗は自分が落ちてきた窓を見上げながらそう言って、足から着地したのにも関わらず不可解な違和感や痛みは全くないことに気づいた。

 今は飛び降りた直後なのでアドレナリンが大量に分泌されて痛みが感じにくくなっているだけという可能性も捨てがたいが、おそらくそれはないだろう。多少の痛みが残っているならまだしも、いくら何でも痛みを残さないなんてあり得るはずがない。

(やっぱり俺の運が最強だったのか!いや、もしくは超速自己回復とか!?どっちにしろ俺TUEEEEEE!!!)

 と、ガッツポーズを決めていた楽斗は体勢を崩しキョロキョロと周りを確認した。

 不意に、窓から顔を出さない二人のことが気になったのだ。

 視界には誰も映らない。しかし、安心はできない。奴らの事だ。視界に入らずに近寄る方法はいくらでもあることだろう。実際、もう近くに潜伏している可能性もある。当たり前だ、楽斗は移動していないため、必然的に場所はバレバレなのだから。
 ━━━だからと言って安易に移動するわけにはいかない。校舎は奴らが居る可能性が大の危険スポットだ。そんな場所に自ら飛び込んでいくのは馬鹿だけだ。
 だが、移動しなければそう時間が経たない内に捕まる。では、どこに移動するか。

 常に真実と答えは一つである!

「しかし、んな早く帰っても鍵空いてなさそうなんだよな。時間的にはいつもより大分早いし......って、鞄忘れた!━━━まぁいいか。明日土曜だし取りに行けるだろ。それよりもどこで時間を潰そうか、だ」

 そう。それは校外だった。



「ふーむ。中々良い本ってものは見つからないものだな。しかし、この辺りにはここしか本屋はないからな......どうしたものか」

 無言で陳列された本棚を眺めていた大毅は、うーんと唸った。
 棚のラベルにはカウンセリングと書かれているが、そのほとんどが持っている本で持っていない本も同姓愛について書かれているものがなかったのだ。
 もしかしたらカウンセリングの欄にはそう言った本は置いてないのかもしれないが、そこまで本屋に通いなれてない大毅にはそう言った本がどこにあるかもわからなかった。

 すると、その様子を見ていたのか若い女の店員が営業スマイルで

「お探しものはなんですか?あたしでよければ手伝いますよ?」
「えっ、本当か!?━━━いや、すまん。オレは大丈夫だから是非にも仕事の方を優先してくれ」
 突然の願ってもいない申し出に食いつき気味になる大毅だったが、感情を押し殺し、そう言った。

 しかし、その人は一瞬キョトンとした後、クスクスと笑って
「大丈夫ですよ。今はあなた以外客がいないんでやることがないんです。あたしでよければどうか手伝わせてくださいな?」
 ペコリと頭を下げた。

 仮にも手伝ってもらう側が手伝ってくれると言っている人にそこまで言われては断る術はない。

「いや、頭を上げてくれ!仮にもオレがお願いする立場なんだからお願いされる立場のあなたが頭を下げないでくれ......」
「おや?優しいんですね」
「そんなことはない」
「ふふ、ご謙遜を。で、何の本をお探しなんですか?自慢じゃないですけどあたし、ここの本屋に陳列されている本の場所は全て暗記してるんですよ」
 そう言って、ドヤァとたわわに詰まった胸を張る女店員。
 そんなポーズをされたら健全な男子高校生な視線は自然と移動していき......

「......なるほど。凄いな」
「......どこ見て言ってるんです。それ絶対あたしの胸見て言ってるでしょ」
「見てない」
 そう言われて、大毅は慌てて釘つけになってた胸から視線を外した。
 しかし、その回答に納得がいかなかったのか女店員はジト目で

「見てたよね!」
「見て......ない」
「見てたよね!」
「見......てない」
「見てたよね!」
「......見てなぁい!」

 繰り返される応戦の数々。

 正直、見ていたためか若干劣勢だが、それでも名誉のため一歩も引かない大毅を見て、このままじゃ埒が明かないと考えたのか女店員は
「素直に言ってくれたら触らせt」
「見たッ!!」
「変態ッッ!!」
 ビンタの乾いた音が店内に響き渡った。


 突然のビンタは心に染みました
            by石刀大毅
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