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猫の国の動乱
戦いの先
しおりを挟む<<アメリカ海軍第9空母航空団第113早期警戒飛行隊所属 E-2>>
高度数千m、雨が続く洋上のずっと上の太陽光が降り注ぐ快晴の雲海を空母から発艦したアメリカ海軍のE-2ホークアイ早期警戒機が飛行していた。
「こちらシーガルアイ、貴艦の2時方向10マイル先にミャウシア軍の哨戒艦艇と思われる艦影を確認した。変針せよ」
「了解。支援に感謝する」
「待ってくれ、作戦が今アップデートされた。変針した進路のまま10マイル進んでくれ。先程知らせた貴官らを支援する潜水艦がすぐそこまで来ているそうだ。その進路で航行すれば味方の潜水艦が随伴して君たちをバックアップしてくれる。幸運を」
「わかった。手厚い支援に感謝する」
少佐が無線で友軍と連絡を取り合う。
フニャン達を乗せた駆逐艦は雨天の中をそこそこ速い速度で航行していた。
「地球人の科学技術は本当にすごいですね。こんな天候でも艦の位置がわかるとは。こんな奥深くまで来ているのに敵にまったく見つかっていないのですから疑いようがありません」
駆逐艦の艦長は少佐にそう言い驚嘆していた。
「それも天候によりけりです。今は雨雲が薄いので。それと味方の潜水艦が既に本艦の下に付いているはずですが確認できますか?」
「聴音手、聞こえるか?」
「何も聞こえません。アクティブソナー打ちますか?」
「いや、いい」
駆逐艦はソナーで潜水艦がいるか探ろうとしたが何も聞こえず空振りとなってしまう。
だがしばらく航行していると聴音手が艦長に言った。
「左舷後方から微かな音がします」
そう言ってからほとんど時間を置かずに無線が入る。
「こちら、貴艦の護衛に付いたアメリカ海軍原子力潜水艦モントピリアだ。前方80km先に大きな音源を確認している。目標と思われる艦隊の可能性がある。進路を348へ変針されたし」
駆逐艦の艦橋では潜水艦が随伴して通信してきたことに驚きの声が上がる。
一斉に双眼鏡でそれが浮上してないか探す。
すると左舷後方の海面からわずかに艦橋を出して潜望鏡やシュノーケル、通信アンテナが突き出している潜水艦を発見する。
艦長は更に驚く。
なぜならこの時の駆逐艦の速度は20ノット以上あった。
これは第二次世界大戦レベルの潜水艦では到底出せない速度だ。
更に言うと現代の常動力潜水艦でも20ノット以上は水中排水2000トン以下の小回りの利く一部のディーゼル潜水艦しか出せない速度だった。
しかもそれは全力走行なので長時間できるものではない。
正体は世界屈指の傑作潜水艦として名高いロサンゼルス級原子力潜水艦であり、アメリカ海軍では旧式艦の部類だがその性能は未だに一線級の実力があった。
水中速力30ノット以上は伊達ではない。
これが膨大な核分裂エネルギーで動く原子力潜水艦の原子力潜水艦たる所以でもあった。
<<ミャウシア軍艦隊>>
「右舷前方に敵艦隊発見!距離10kmもありません!」
その頃、ミャウシア軍艦隊と連合軍艦隊の間で遭遇戦が始まりつつあった。
雨の中や観測機なしからの不意打ち的な遭遇戦であり、即砲撃戦に突入する。
こうなるとその艦の砲撃力が勝敗に大きく影響する。
「撃てえええ!」
両軍が一斉に砲撃を始めるが重巡洋艦の数と軽巡洋艦の性能で劣るミャウシア軍艦隊は常に撃つ負けやすい状態に陥った。
その点をミャウシア側は圧倒的な数の大型駆逐艦やフリゲートの魚雷攻撃と巡洋艦への集中砲火で補う。
両軍の戦線は徐々に拡大の一途を辿り始めた。
<<グレースランド軍艦隊>>
「何、王女殿下の姿がない?」
「はい。宿所に戻られてないそうです」
「まずいな、何かあった場合俺に責任が回ってきそうだ」
「報告です。交渉役を乗せて待機していた駆逐艦の所在がわからなくなっています」
「...」
司令官は言葉に詰まる。
立て続けにこんな報告を聞いたらあることを連想するのは無理もなかった。
「駆逐艦を無線で呼び出せ」
<<フニャン達を乗せた駆逐艦>>
フニャンたちはいよいよミャウシア軍の旗艦がいると思われる艦隊に接近し始めていた。
しかし生憎の大雨で視界は最悪だった。
視界は1kmを切っているんじゃないかと思えるほどの大雨で周りが何も見えない。
護衛の潜水艦からの報告で前方10kmに艦隊がいることは分かっていた。
だがこれでは接触どころか唐突な遭遇にどうしてもならざる負えない。
「どうする?これでは見えた頃には一触即発だ。むしろ即戦闘になると見るべきだ」
少佐がフニャンに懸念を伝える。
「ですが既に前哨部隊間で遭遇戦が始まってしまっています。このままだと先に勝敗が決してしまいます。そうなる前に司令官との直接交渉に入らねば手遅れになってしまいます」
「艦長はどう思いますか?」
「命令であれば従うまでです。ですがクルーの命を背負ってます。明確な勝算は欲しい」
「...」
少佐とフニャン、艦長は手詰まり感のある会話をする。
それに王女が割って入る。
「少々よろしいでしょうか?私は軍事的なことに詳しくないので方法については何も言えません。けれど、他に方法がない、勇気がいる決断をしなければならないならのであれば一度乗組員に決断を委ねてみてはどうでしょう?皆が概ね同意するのであれば迷いなく任務を遂行できます」
沈黙が続くがフニャンがコクリと頷き、それを見た少佐が口を開く。
「...勇気しだいになってしまう入り口論なら、この際は意思統一は重要かも知れない」
「うーむ」
艦長が少し悩むがそこへ通信手が報告を行う。
「艦隊司令部から本艦宛に打電です。至急、艦隊指揮下に戻れとの通達です。戻らない場合は命令不服従、艦と兵員の私物化で重罰を下すと...」
「ついにバレたか。艦長」
「わかりました。各部署のクルーに多数決を取らせます。艦隊に復帰するか、このまま独断専行も含めて。ここまで来るとクルーの意思も重要です」
艦長がマイクを取る。
「艦長のウォリフィス大佐だ。これから諸君に重要なことを伝える」
艦長はありのままを乗員に伝えると決断を求めた。
すると乗員たちに不安が広がる。
しかもそれはかなりの動揺ぶりだった。
だがそこで王女が艦長に乗員に伝えたいことがあると言ってマイクを借りて発言する。
「聞こえますか?
私はエリザ・スカルディア・クローデンです。
この場を借りて皆さんに語りかけたいことがあります。
いま、我が軍はミャウシア軍との決戦に向かいつつあります。
我が国はこの世界に転移して以来、常にミャウシアから侵攻を受け、今や国家存亡の危機に瀕しています。
だから、私達は武器を持って迫りくるものに立ち向かってきました。
愛する国と民を守るために立ち向かう将兵とその勇気を私は誇りに思います。
だからこそ、私は皆さんに考えてほしいのです。
その先のことを。
そして今、ミャウシアは国家分裂の危機あるそうです。
前線で戦うミャウシア兵の殆どはただ一人の私利私欲で戦わされ、そこには大義も何もなく逆らえば命を奪われる現実があるそうです。
そのような人達とも私達は戦い続けなければならないのでしょうか?
我が国の指導者はミャウシアとの交渉には一切応じない方針ですが、それが本当に正しいのか私は疑問に思ってしまうのです。
その決断の深淵に私達がお互いを知らな過ぎるという拒否にも近い無意識が潜んでいるのでないかと。
そして私はずっと考えていました
この戦争の先にあるもの、あって欲しいものが何かを。
それを私は決して勝利者だとは思っていません。
もっと素敵なものであってもいいはずです。
そういう判断もまた国や民を守るためになるのではないでしょうか。
だから乗員の皆さん、判断してください。
何が正しいのか、どうあって欲しいかを」
そう言うと王女はマイクを下ろす。
しばらくして多数決を取ったところ大半が艦長たちに付いていくことを支持した。
「いい演説でした」
少佐が王女にそう言うと王女は反論した。
「いいえ。私はただ皆の結論を誘導したに過ぎない。所詮私も戦争を扇動する人達となんら変わらない」
少佐は言葉に詰まってしまうが、フニャンは珍しく能動的に喋る。
「デモ、ソレモ、ミチビク、ヒト、ヤクメ」
「確かに。恥じる必要はないのかもね」
二人は表情を明るくする。
そして意見統一の末、駆逐艦は艦隊に突入する。
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