アルカディアンズ ~とある世界の転移戦記譚~

タピオカパン

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猫の国の動乱

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<<フニャン達を乗せた駆逐艦>>

グレースランド王族の王女エリザは話を続けていた。
主にフニャン中佐、アルツハイマー少佐、エリザ王女の3人で話が進む。

「私もミャウシア海軍との和平の実現に賛同するものです。なのでフニャン中佐、あなたの案を全面的に支持させていただきます。そのための協力は惜しみません」

「ですがグレースランド軍もミャウシア軍との全面対決に打って出ることを決定したばかりじゃありませんか。なのにそれに逆行するようなことをなぜ?」

少佐が王女に質問する。

「それは和平を結ぶ方が現実的だという私自身の判断です。我が国でもポンポタニアのような強硬論が主流となっていて、国王である我が父と上下両院がその急先鋒となってしまっています。首相はこれ以上の戦闘を回避すべきと考えているようですが、それに賛同してくれる議員、特に庶民院議員が少ないく父上がその強硬論に口添えしてしまっているのがネックになってしまっているのです。ですがそれは展望があってのものではない以上、より最善の方策を実施することが望ましいのは自明の理です。そのためにはこうして国の方針に逆らうことも必要であると考え、独自に動き、皆さんの存在に行き着きました。会って話をと伺いました」

「では、あなたが何かしてもグレースランドは動かないと?」

「いえ、最低限の協力者は揃えました。第4艦隊司令官、参謀本部の一般参謀数人、他将軍2名、それに政府首相です。いずれの方も和睦を支持する方々です」

「王女自ら人員を揃えるとは...。それでなぜフニャン中佐の案に?」

「私達では強硬論を抑えることができなかったことに尽きます。そこで良い知恵はないかと交渉役の皆さんを訪ねましたが、中佐の話を聞き閃きました。我が国の海軍を翻意させるにはこれしかないと」

「これとは?」

「王女も私達に同行したいんですね?」

フニャンがエリザ王女に質問する。
少佐は言葉を失うがぎこちなく翻訳する。

「はい。私がミャウシア艦隊にいることを知れば我が軍は撃つことを躊躇うかもしれません。そうなれば和平支持者の発言権により重みが出ます。こちら側の艦隊司令官が独断とは言え、ミャウシア艦隊に歩調合わせることができれば戦闘どころではなくすることも可能かも知れません」

少し間が開く。

「ですから私もフニャン中佐に同行の許可を頂きたい。そしてアルツハイマー少佐、NATO軍の支援を要請します。お受けいただけますか?」

「...」

フニャンは王女の瞳を見つめた後、視線を少佐に移した。
ボールは少佐にある。
少佐次第でこの話をなかったことにもできるだけに軍服を来た二人の美女の視線の重みは大きかった。
そして少佐は口を開く。

「わかった。君たちの話、上に色眼鏡無しで伝えるよ」

「ありがとうございます」

その返答に王女は感謝の言葉を述べる。
少佐はついでフニャンに視線を送る。
フニャンは頭を少し下げ少佐にお願いしますと意志表示する。
それから少佐は部下の持ってきていた無線機にかじり付き始めた。

こうして意見はまとまりを見せた。


<<連合軍艦隊>>

各艦隊が雲の中に消えていくように行動を開始する。
作戦としては海峡攻略に来たミャウシア海軍の重砲艦の少なさを元にとにかく艦隊決戦によってケリをつけようという猪突猛進な内容だった。
だがこれは周辺域が巨大な温暖前線に覆われ航空機の運用が限定的になっていることと視界が悪く潜水艦の活動も低調にならざるを得ないこともあり唯一無二の戦法でもあった。
かくして連合軍はNATO軍艦隊を除き海峡を超えてミャウシア艦隊に殴り込みをかけに行った。

ポンポタニア軍打撃部隊

戦艦7隻
巡洋艦30隻
駆逐艦90隻

グレースランド軍打撃部隊

戦艦6隻
巡洋艦36隻
駆逐艦75隻

ザイクス軍打撃部隊

戦艦2隻
巡洋艦13隻
駆逐艦25隻

ミャウシア艦隊は大艦隊だが連合軍も大型艦を数百隻かき集めていたのでその陣容は凄まじいものだった。
ミャウシア軍は艦種が統一されているのに対し連合軍は各国で違う艦を建造しており、とにかく多種多様な姿をしていた。
本来一気に膨大な戦力を投入するのは愚策だがミャウシア軍艦隊が全戦力をまとめて運用してることもあり対抗するにはこちらも全軍でかかるしかないというものである。


<<フニャン達を乗せた駆逐艦>>

王女が駆逐艦のクルーたちを説得して航行を始め、連合軍艦隊より先に海峡を抜けていた。
まったくの悪天候で方向や座標の把握で右往左往してしまうくらいの視界の悪さだった。
温暖な低気圧で雨や霧がメインだが時折寒気も入るせいか大しけになる局面もある。

ザバアアアアアン!

駆逐艦の艦首に大波がぶつかり船体が上下に大きく揺さぶられる。
だが訓練された軍人である彼らにはその程度のことは何の問題にもならない。
けれど一人軍人ではない人もいたのでその人はこの大波の揺れをもろに受けてしまうのだった。

「キャアッ!」

エリザ王女は艦が大きく揺れた衝撃で倒れ込んでしまいそうになる。
この時護衛や側近は自分から離していたのでグレースランド側の人員は対処できなかったが、エリザ王女の体を支えて助けてくれるものはちゃんといた。
エリザ王女が瞑ってしまっていた目を開けると寄り添うようにフニャンが掴んでくれていた。

「ありがとう」

王女はフニャンに礼を言う。
フニャンは少し頭をコクっと下げて相槌する。
王女の関心が一気にフニャンに移る。

「フニャンさんはグレースランド語がまだ話せないよね...」

王女が少し落ち込むように独り言を言う。
だがフニャンはちゃんと返答した。

「スコシ、ワカリマス」

片言の単語だがちゃんと聞き取ってくれていた。

「すごい!」

王女は表情を更に明るくしてフニャンに話しかける。

「実は私、ミャウシア人の人に合うのは始めたで、どんな人なのか気になっていたんですが会って驚いちゃいました。まるでお人形さんみたいです」

「エ?」

フニャンは困った顔をする。
その表情を見た王女は更にテンションを高めて続ける。

「噂は聞いていたんですが想像以上の可愛さです!むしろフニャンさんだから可愛いんですか?」

どんどんテンションを上げていく王女に困惑を隠せないフニャンはどうしようか悩むが別に悪いことではないかなと思い、王女の好きなようにさせることにした。

「カワイイノカナ?」

フニャンは少し顔が引きつりながら笑顔を向ける。

「もちろんですよ!」

感極まったのか王女はフニャンを抱きしめる。
フニャンは悪い気はしなかったがただただ苦笑するしかなかった。

「だからずっと思っていました。こんな風にミャウシアの人と分け隔てなく暮らせる世の中になって欲しいと」

その言葉にフニャンは王女に目線を移す。

「ただ出会い方が悪かっただけで、私達は神様の思し召しでこの世界に導かれた同居人なのに、こんなに素敵な人達なのに、戦争を続けなければならないのはあまりに残酷です。だってこの世界に導かれたのも皆が異なる種族なのもきっと素敵な意味があるからこそ、私達はこの世界に存在するんだと私は思います」

王女はフニャンを抱きしめるのを止める。

「だからフニャンさん、もしよかったら私のお友達になっていただけませんか?」

フニャンは王女を見つめる。

「私、王室以外の人と触れ合う機会がほとんどなくて、学院でも王女だからって壁を作られてしまうんです。こんな私ですがそれでもいいですか?」

王女は犬耳を少しだけ持ち上げ凛々しい面持ちフニャンを見る。
それにフニャンは何か含む様子は一切見せずに答える。

「いいよ、エリザ」

「ありがとう、フニャン」

「フニャン、ミョウジ。ミンナ、チェリン、ヨンデクレル」

「わかった、チェリン。これからもよろしくね」

「よろしく」

こうして人の輪は広がっていくのだった。
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