ボクは犬(仮)

来季

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幼なじみ

歳相応

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17時49分。

ロケバスに乗り込む。


なんとか制限時間までに撮り終わった。


「いや~ギリギリだったねぇ。」


「日が沈んできたから焦ったよ~。」


「明日カメラチェックして社長に見せる感じでいいかな?」


「社長今日は?会社にいないんですか?」


「桜ちゃん今日の夜は用事あるって言ってましたよ!」


「学校の行事か何かかなー?」


詳しくは僕も知らなかった。


僕のスケジュールは分単位で管理されているけれど、桜ちゃんは桜ちゃんの自由だった。


会社にいる時間帯のみ、マネージャーさんに伝えているらしい。



ただ、今日はたまたま夜居ないことを桜ちゃんから言われていたから知っていだけ。


ブーブブッ

『 撮影は無事に終わったか?今日は帰らない。』



スマホの液晶画面に映し出された文字。



え!?今日桜ちゃんいないの、、、、



どこ行ったんだろ、、、、



『 お泊まり?撮影は終わったよ。スタッフさんがカメラチェック明日でもいいかな?って話してる』


『 カメラチェックは明日でいい。提携会社の食事会に来たんだが、部屋を取ってくれていたみたいで泊まらなければいけなくなった。明日はホテルから直接学校へ行く。未鼓にマナの事は任せている。0時前には寝ろよ。 』



『 わかったよ。』



凄く不安だ。

提携会社の社員さんは年齢層が高くて男社会。


そんな中に桜ちゃんなんて、、、、


何かあってからじゃ遅いよね?
  
いや、何かって、、、、
何もないよ


でも、、、


おじさん方が桜ちゃんの可愛さにやられておかしくなっちゃったり?


しない?するよね?しちゃうよね?


ましてや、未鼓さんもいないんじゃ


誰が桜ちゃんを守るの!?


心配だよ、、、、、



僕は既読のついた画面をじっと見つめる。


ロケバスが桜ちゃんの会社に着くと、いつもの黒い車が僕を迎えていた。


僕は走る。



「未鼓さん!桜ちゃん、1人なの??」


「お疲れ様です。はい、今日はおひとりで行かれましたよ。」


「大丈夫かなぁ?大丈夫じゃないよね?だって、おじさんばっかりだったよね?桜ちゃん、、、、。」



「大丈夫ですよ。桜李さんが大丈夫だと判断して私を椎樹さんの所へ向かわせたのですから。」



「そうだけど、、、、でも。でも!部屋を取るなんて、おかしくない!?」



「お心遣いですよ。」


「僕は、心配だよ。」



「食事会は21時に終わります。桜李さんは二次会には出ない方ですから、21時半にはホテルにいるでしょう。お電話されてみては?」



「迷惑かけるだけだよ。鬱陶しいと思われちゃう。」


「そんな事はありません。きっと喜ばれますよ。」



ふふふっ


未鼓さんが微笑んでいた理由が僕にはわからないけど、21時半に電話してみようかなって気持ちになった。


僕はいつものルーティンをこなした。


20時までに食事を済ませる事。

22時までに入浴を済ませる事。

22時から23時までの体のメンテナンス。今日はエステ。自宅にエステティシャンが来てくれる。


僕はお風呂上がり、スマホを握りしめた。



桜ちゃん、、、、、、



液晶画面をタップする。


「ん?何だ?何かあったか?」 


「あっ、、、あの、、、、桜ちゃん、、、元気?」



「元気だが?どうした?何か用事があるんじゃないのか?」



「い、いや、、、、えっと、、、。」



僕は言葉に詰まる。



電話越しの桜ちゃんの落ち着いた声。


小さく聞こえるテレビの声と加湿器の音。


間違いない、桜ちゃんはホテルに戻っている。


「用事、、、よ、、、用事って言う用事はないんだけどね、、、、。その、、、、。」


「さっきの撮影の写真何枚か見た。いいじゃないか。コンセプトにぴったりだ。流石我社のモデルだな。」



「え?ほ、本当?よかった。」


「明日は朝撮影無いからゆっくり休むといい。あっ、日付けが変わる前には寝ないとダメだからな。じゃあ私は忙しい、切るよ。」



僕の返事を待たずして電話は切れた。


それでもいい。


桜ちゃんの声が聞けた事。撮影を褒められた事。


それで充分だった。



「はぁ~~~~~、、、好き、、、、。」



僕は22時、エステルームに入った。


僕専属のエステティシャンは僕と同じく桜ちゃんの事が大好きだった。



だから、1時間いっぱい桜ちゃんの話をした。


桜ちゃんがご飯を食べる時に紡ぐ口が可愛いとか、ソファーでうとうとしているのが可愛いとか、15歳で会社を設立したのは凄いとか、とにかく桜ちゃんの話ばかり。


幸せな時間だった。


「はい、施術終了です。今日も楽しかったわ。」



「僕もです!」


「じゃあ、今度はー、木曜日ね。」



「はい、よろしくお願いします。」


僕専属のエステティシャンさんは素早く片付けをしていた。


僕は0時までに寝なければいけないから部屋へ向かった。 


いつもは隣の部屋に桜ちゃんがいる。


隣の部屋にいないってだけなのに、、、こんなに寂しい


桜ちゃんはもう寝たのかな?
きっとまだ起きてるよね、、、


家にいる時でも桜ちゃんは2時か3時まで仕事をしているらしい。


僕もそうだけれど、行事も含めて、学校にはきちんと行っている。撮影だからとか、仕事だからと早く帰ったり遅く行ったりはしない。


だから8時から16時までは学業に専念しなければいけなくて、仕事が出来ない。


それでも仕事量は変わらないから深夜までやらなくてはいけないらしい。



未鼓さん曰く桜ちゃんは6時半に起きて、7時に家を出て僕を迎えに来て一緒に学校へ行き、16時に会社へ向かい仕事をこなし21時に帰宅して、食事を摂り、残りの学業を済ませてからまた仕事に取り組むらしい。


毎日毎日ほとんど同じスケジュールで、睡眠時間は取れても4時間。


僕も早朝の撮影の日は同じくらいの睡眠時間だけれど、撮影がない日は7時間は寝る事を義務付けられていた。


18歳で会社を経営するというのはそういう事なんだと思う。



桜ちゃんは、、、本当に凄いなぁ



僕はそんな桜ちゃんの力に少しでもなりたい。


僕には僕にしかできない事をやるだけ。



よしっ、今日もしっかり寝て、明日も頑張ろう!!!



僕はギュッと目を瞑った。







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