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幼なじみ
僕の夢
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僕は夢を見ていた。
小さい頃の僕らの夢。
「マナ~。」
「まーなちゃーん。」
「お前明日からスカートはいてこいよ~!」
僕は泣く事しか出来ない。
同級生はみんな130cmくらいなのに僕だけ121cmしかなかった。
女の子みたいな顔をしていたせいでまなちゃんとからかわれた。
「下らない。」
腕を組みながら僕の前に立ったのは、桜ちゃんだった。
「おい、どけろよ、お前に関係ないだろう!」
「女に庇われて、まなちゃんはか弱いですねぇ~!」
僕は桜ちゃんの背中を見つめる。
「お前達はそれが楽しいのか?自分の事ではなくて、他人の事を笑う事で貴重な時間を無駄にしているのか?」
「はぁ?なんだと!?」
「私も、マナもお前達程暇じゃないんだ。お前達に時間を費やす価値がない。勝手に関わるな。」
桜ちゃんは12歳だった。
この時から桜ちゃんは周りとは違っていた。
立ち振る舞いも、言葉遣いも、12歳なんて全然思えなくてあまりに大人びていた。
僕をいじめていた子達が去った後桜ちゃんは何も言わないで手を差し伸べてくれた。
「泣いてばかりいるな。あいつらは人を落とす事でしか自分が優位に立てない事を知っている。何も無い人間なんだ。けれど、マナは違う。マナは人に上に立たせてもらえる人間だ。私がそれを証明してみせる。」
桜ちゃんの言っている意味が僕には全然わからなかったけれど、こんな僕の味方でいてくれる事が単純に嬉しかった。
「ありがとう、桜ちゃん。」
僕は桜ちゃんの手を握った。
桜ちゃんは普段、誰ともつるまなかった。
登下校も一人。校内でも一人だった。
そんな桜ちゃんを特別視している人は多かった。
近寄りたいけど近寄れない。
話したいけど、話せない。
そんな中で僕だけが桜ちゃんと対等に話が出来ていた。
それは、僕と桜ちゃんが幼なじみだから。
そうでなければ僕も他の人と同じ。
ましてや僕は桜ちゃんより3つも年下で、きっと関わる事すらない
これはきっと神様のおかげで、僕は深く感謝している。
桜ちゃんの幼なじみでいれることに。
僕と桜ちゃんは家がお隣同士だった。
けれど、僕は母子家庭でお母さんは僕が小学校に通い始めてからしょっちゅう家をあけるようになった。
桜ちゃんの家は両親とも出張が多くて、ほとんど家にいなかった。
僕は夜になると泣いていた。
寂しかった。
泣いてもどうにもならない事はわかっていたけれど、それでも涙が勝手に出てくる。
僕は寂しさに耐えられなくなったら桜ちゃん家のチャイムを押した。
「桜ちゃん、、、、、。」
「泣く前に来ていいと言っただろう。」
「でも、、、、迷惑かなって、、、、。」
「迷惑ではないが、、。毎日泣いていて疲れないのか?」
「わからない。勝手に泣いちゃうんだもん。」
「何か飲むか?」
20時20分。桜ちゃんはリビングソファーで本を読んでいたんだと思う。
ソファーテーブルにはコーヒが置かれていた。
「はちみつミルク。」
「虫歯になるぞ。」
「いいんだもん。」
そうか
桜ちゃんはそれだけ言ってとびきり甘いはちみつミルクを作ってくれる。
いつもそうだった。
そういう桜ちゃんの優しさが9歳の僕には暖かくて心地よかった。
お母さんよりずっとお母さんみたいで、お姉さんでもあって、でも、大好きだった。
「母親は今日も居ないのか?」
「お母さん最近夜いない。」
「何処へ行っている?」
「わからない。毎日朝に帰ってくるよ。」
男か、、、、
桜ちゃんはそう呟いたけれど僕にはわからなかった。
「明日から真っ直ぐ家に来たらいい。鍵もやる。そしたら少しは泣かずに済むか?」
「え?」
「毎日毎日泣き腫らした目で来られるよりずっといい。」
「本当に?」
「嘘を付く必要性がない。」
僕は桜ちゃんありがとうと桜ちゃんに飛びついた。
桜ちゃんは僕の頭を2回撫でた。
それから学校から家までは桜ちゃんと帰るようになった。
真っ直ぐ桜ちゃん家に入る。
桜ちゃんは少し厳しくて、靴は揃えなさいとか、手を洗いなさいとか、まずは宿題を済ませなさいとか、色々言われた。
僕は全部言う通りにした。嫌な事はひとつもなかった。
夕食を食べ終わるとすぐにお風呂に入るように言われた。
きっと、お母さんってこんな感じなんだと思う。
20時過ぎ、僕がお風呂から上がると桜ちゃんはいつものように本を読んでいた。
ビジネスマナー。
経済学。
会社を始める知識。
社交辞令辞典。
僕が桜ちゃんがどんな本を読んでいるのか見た時にはこんなようなのを読んでいた。
僕がどうしてこんな本ばかり読んでいるのか聞くと
「企業して会社を作り取締役になれるのは15歳から。それまでは難しい。だが、15歳から学んだのでは遅いからな。15歳の時には会社を建て終えて、取締役になる準備をしておかなくてはいけない。」
「え?」
「私は自立したい。ただ、、、、問題は資金だ。会社を建てるお金、人件費、何をするにもまずはお金がいる。今の私には稼ぐ方法がない。」
僕は非現実的な事を真剣に話す桜ちゃんの姿に言葉を無くした。
会社を建てるとか、取締役になるとか、お金が必要とか
何を言っているのかさっぱりわからなかった。
「この年で合法で稼げる方法があまりに少ない。だが、それも叶いそうだ。」
「え?」
「芸能人だよ。未成年が合法的に大金を掴めるのは芸能。」
桜ちゃんの目がキラキラしていた。
僕にはない思考回路が桜ちゃんにはあった。
僕はよくわからないけど、桜ちゃんが楽しそうだからそうなんだと手を叩いた。
この時は桜ちゃんの話がおとぎ話みたいで、ただ相槌を打っていただけだった。
けれど、桜ちゃんは本当に15歳の時に会社を設立して、取締役になった。
そして僕は宣伝モデルとして雇われた。
桜ちゃんが社員を雇ってからは契約関係もスムーズに進むようになって、会社はどんどん軌道に乗っていった。
桜ちゃんは何の知識もないはずなのに、次々と人気の商品を作り出し、売って行った。
才能ってこういう事なんだと思った。
選ばれた人間は、まるでエスカレーターに乗っているように簡単に上へ行ける。
それが最初から決まっていたみたいに。
そのあまりに華麗な過程に僕は必死にしがみついた。
少しでも気を抜けば振り落とされてしまう。
12歳ながらに、そう思っていた。
小さい頃の僕らの夢。
「マナ~。」
「まーなちゃーん。」
「お前明日からスカートはいてこいよ~!」
僕は泣く事しか出来ない。
同級生はみんな130cmくらいなのに僕だけ121cmしかなかった。
女の子みたいな顔をしていたせいでまなちゃんとからかわれた。
「下らない。」
腕を組みながら僕の前に立ったのは、桜ちゃんだった。
「おい、どけろよ、お前に関係ないだろう!」
「女に庇われて、まなちゃんはか弱いですねぇ~!」
僕は桜ちゃんの背中を見つめる。
「お前達はそれが楽しいのか?自分の事ではなくて、他人の事を笑う事で貴重な時間を無駄にしているのか?」
「はぁ?なんだと!?」
「私も、マナもお前達程暇じゃないんだ。お前達に時間を費やす価値がない。勝手に関わるな。」
桜ちゃんは12歳だった。
この時から桜ちゃんは周りとは違っていた。
立ち振る舞いも、言葉遣いも、12歳なんて全然思えなくてあまりに大人びていた。
僕をいじめていた子達が去った後桜ちゃんは何も言わないで手を差し伸べてくれた。
「泣いてばかりいるな。あいつらは人を落とす事でしか自分が優位に立てない事を知っている。何も無い人間なんだ。けれど、マナは違う。マナは人に上に立たせてもらえる人間だ。私がそれを証明してみせる。」
桜ちゃんの言っている意味が僕には全然わからなかったけれど、こんな僕の味方でいてくれる事が単純に嬉しかった。
「ありがとう、桜ちゃん。」
僕は桜ちゃんの手を握った。
桜ちゃんは普段、誰ともつるまなかった。
登下校も一人。校内でも一人だった。
そんな桜ちゃんを特別視している人は多かった。
近寄りたいけど近寄れない。
話したいけど、話せない。
そんな中で僕だけが桜ちゃんと対等に話が出来ていた。
それは、僕と桜ちゃんが幼なじみだから。
そうでなければ僕も他の人と同じ。
ましてや僕は桜ちゃんより3つも年下で、きっと関わる事すらない
これはきっと神様のおかげで、僕は深く感謝している。
桜ちゃんの幼なじみでいれることに。
僕と桜ちゃんは家がお隣同士だった。
けれど、僕は母子家庭でお母さんは僕が小学校に通い始めてからしょっちゅう家をあけるようになった。
桜ちゃんの家は両親とも出張が多くて、ほとんど家にいなかった。
僕は夜になると泣いていた。
寂しかった。
泣いてもどうにもならない事はわかっていたけれど、それでも涙が勝手に出てくる。
僕は寂しさに耐えられなくなったら桜ちゃん家のチャイムを押した。
「桜ちゃん、、、、、。」
「泣く前に来ていいと言っただろう。」
「でも、、、、迷惑かなって、、、、。」
「迷惑ではないが、、。毎日泣いていて疲れないのか?」
「わからない。勝手に泣いちゃうんだもん。」
「何か飲むか?」
20時20分。桜ちゃんはリビングソファーで本を読んでいたんだと思う。
ソファーテーブルにはコーヒが置かれていた。
「はちみつミルク。」
「虫歯になるぞ。」
「いいんだもん。」
そうか
桜ちゃんはそれだけ言ってとびきり甘いはちみつミルクを作ってくれる。
いつもそうだった。
そういう桜ちゃんの優しさが9歳の僕には暖かくて心地よかった。
お母さんよりずっとお母さんみたいで、お姉さんでもあって、でも、大好きだった。
「母親は今日も居ないのか?」
「お母さん最近夜いない。」
「何処へ行っている?」
「わからない。毎日朝に帰ってくるよ。」
男か、、、、
桜ちゃんはそう呟いたけれど僕にはわからなかった。
「明日から真っ直ぐ家に来たらいい。鍵もやる。そしたら少しは泣かずに済むか?」
「え?」
「毎日毎日泣き腫らした目で来られるよりずっといい。」
「本当に?」
「嘘を付く必要性がない。」
僕は桜ちゃんありがとうと桜ちゃんに飛びついた。
桜ちゃんは僕の頭を2回撫でた。
それから学校から家までは桜ちゃんと帰るようになった。
真っ直ぐ桜ちゃん家に入る。
桜ちゃんは少し厳しくて、靴は揃えなさいとか、手を洗いなさいとか、まずは宿題を済ませなさいとか、色々言われた。
僕は全部言う通りにした。嫌な事はひとつもなかった。
夕食を食べ終わるとすぐにお風呂に入るように言われた。
きっと、お母さんってこんな感じなんだと思う。
20時過ぎ、僕がお風呂から上がると桜ちゃんはいつものように本を読んでいた。
ビジネスマナー。
経済学。
会社を始める知識。
社交辞令辞典。
僕が桜ちゃんがどんな本を読んでいるのか見た時にはこんなようなのを読んでいた。
僕がどうしてこんな本ばかり読んでいるのか聞くと
「企業して会社を作り取締役になれるのは15歳から。それまでは難しい。だが、15歳から学んだのでは遅いからな。15歳の時には会社を建て終えて、取締役になる準備をしておかなくてはいけない。」
「え?」
「私は自立したい。ただ、、、、問題は資金だ。会社を建てるお金、人件費、何をするにもまずはお金がいる。今の私には稼ぐ方法がない。」
僕は非現実的な事を真剣に話す桜ちゃんの姿に言葉を無くした。
会社を建てるとか、取締役になるとか、お金が必要とか
何を言っているのかさっぱりわからなかった。
「この年で合法で稼げる方法があまりに少ない。だが、それも叶いそうだ。」
「え?」
「芸能人だよ。未成年が合法的に大金を掴めるのは芸能。」
桜ちゃんの目がキラキラしていた。
僕にはない思考回路が桜ちゃんにはあった。
僕はよくわからないけど、桜ちゃんが楽しそうだからそうなんだと手を叩いた。
この時は桜ちゃんの話がおとぎ話みたいで、ただ相槌を打っていただけだった。
けれど、桜ちゃんは本当に15歳の時に会社を設立して、取締役になった。
そして僕は宣伝モデルとして雇われた。
桜ちゃんが社員を雇ってからは契約関係もスムーズに進むようになって、会社はどんどん軌道に乗っていった。
桜ちゃんは何の知識もないはずなのに、次々と人気の商品を作り出し、売って行った。
才能ってこういう事なんだと思った。
選ばれた人間は、まるでエスカレーターに乗っているように簡単に上へ行ける。
それが最初から決まっていたみたいに。
そのあまりに華麗な過程に僕は必死にしがみついた。
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12歳ながらに、そう思っていた。
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