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幼なじみ
ライバル
しおりを挟む放課後、僕は黒い車に乗り込んだ。
「お疲れ様。」
「あれ?桜ちゃん!大学は?」
「早く終わった。本社に行くしな。」
「あ、そうだったね。何するの?」
「先日新しいモデルのオーディションをした。これからはオーディションの合格者と一緒に撮影する機会を増やす。だから合格者はマナに決めてもらおうと思ってな。」
「え!?どういう事?」
「戦略だ。美男単体より美男美女が写ってるポスターの方が目がいくだろう?マナも高校生になったしそういう線路にも踏み込みたい。」
異論な聞いていない、マナは合格者を選べばいい
そう言われたから僕は黙って頷いた。
これからは一人じゃない、、、、
桜ちゃんの会社の宣伝モデルは僕以外もいた。でも、僕と歳の近い人はいなかった。
美男美女って事は女の子だもんなぁ
なんか、、、、、嫌だなぁ、、、、、
本社に着くと会社の中から数名スーツの男の人が出てきた。
「社長!お久しぶりですね!」
「あぁ、お疲れ様。ネクタイ曲がっているぞ。」
そうだった、、、、
普段桜ちゃんの凄さはひしひしと感じてるけど、本社に来るとその凄みは比べ物にならなかった。
社長、取締役、藤堂寺さん、本社内を桜ちゃんが歩いているとみんな笑顔で声を掛けていた。
桜ちゃんがただの幼なじみでは無い事を身をもって感じる。
皆僕にも同じように接してくれるけど、目の輝きが違う。
本当の事はわからないけど、桜ちゃんの事をただのガキなんて言う人はいない。
実力のある経営者、桜ちゃんは確かに認められていた。
それは媚びない桜ちゃんの性格と、手を抜かない所、ブレない所、才能、様々な要素が成立させていた。
「あそこの部屋に5人いる。1人を選べ、何も考えるな、直感で決めろ。」
「え?直感!?」
「これから長く一緒にいる事になる。その相手に相応しい人を選べ。」
わかった。僕は頷いて扉を開けた。
部屋には5人の同い歳くらいの女の子が座っていた。
「藤堂寺さん、、、、左から2番目。」
「わかった。」
5人とも全然別のジャンルの人だった。
でも、僕は一瞬で決まった。
僕の好みではない。桜ちゃんならこの人を選ぶ、そう思う人がいた。
「宣伝モデルオーディションの結果を伝える。桃峰姫加。」
部屋に桜ちゃんの声が響いた。
左から2番目の女の子が立ち上がった。
「は、、、はい。」
腰まである長い髪。真っ白な肌。小さな口、大きく潤いを保った瞳。
「オーディションは以上だ。桃峰以外は脱落。帰ってもらう。桃峰姫加、契約書を書く、こちらへ来い。」
桜ちゃんを先頭に、僕、桃峰と呼ばれる女の子は続いて歩いた。
控えめそうだけれど、背筋が伸びている。
きっと、自分に自信があるんだ。
社長室に三人で入る。
僕も書いたな~契約書
桜ちゃんから差し出される契約書はとても細かかった。
体重制限、生活の制限、給与、何から何まで書かれていた。
「あ、、、あの。」
「髪の毛の1本をどうするかまで私が決める。異論は認めない。1つでも不可能な事があるのならば今のうちに帰れ。契約書にサインをすれば違約金が発生する。違約金は5億。」
「えっ、え!?5億、、、。」
女の子の顔色は真っ青になった。
まぁ、、、そうだよね
「我社がモデルや女優、アイドルを雇わないのは、仕上がっている人に使っても綺麗に見えるのが当たり前だからだ。ごく普通の一般的な人が我社の商品を使う事で女優やモデルに引けを取らなくなる、それが我社の狙いだ。」
「あの、、、、、この、、、、、これ、学校は指定の所に通うって、、、。」
「今の場所から我社のスタジオ近くの学校に転校してもらう。」
「て、、、転校、、、。」
「未成年は我社近くの家、まぁ、私の家なのだが、、、。そこで暮らしてもらう。」
「あの、、、、じゃあ、、、つまり、、、。」
「生活の一切の自由がなくなると思え。我社のモデルになるという事はそういう事だ。生半可な気持ちでやろうとしてるなら帰った方がいい。」
「あの、、、違うんです。やります。私、やります!」
え?
僕は女の子のあまりに意外な反応に驚いた。
「ふむ。とにかく契約書は隅々まで目を通してから名前を書くんだな。1時間はかかる。私は席を外す。」
桜ちゃんは甘い香りを残して部屋を出た。
「あ、、、、あの、、、、、。」
「あっ、えっと、、、僕は、、、。」
女の子は僕の方をチラリと見た。
「知っています。勿論、椎樹愛弥さん。」
「あ、、、えっと、、、はい。」
よろしくお願いします、僕は小さく頭を下げた。
僕はこれからこの人と撮影をする。
桃峰、姫加さん、、、、
どんな風に写真を撮るのだろう、、、
「お仕事、、、大変ですか?椎樹さんはこの契約書にサインしたんですよね?」、
「あぁ、、、そうですね。簡単ではないと思います。でも、、、嫌な思いをした事はないです。」
そうなんですね、、、、
桃峰さんはそう呟くと契約書を読むこと無くサインした。
「私、ここで、働きます。どんな事もします。」
だから、よろしくお願いします
僕は桃峰さんに握手を求められた。
僕は手を差し出した。
桜ちゃんが戻ってくるまで、どんな仕事をしているのか色々聞かれた。
僕はなるべくわかりやすく答えるように務めた。
「あの、、、、椎樹さんって、近くで見ると本当にお綺麗というか、、、カッコイイですね。」
「え?僕ですか!?全然です。そんな、そんな。」
ガチャり
扉が開く。
「契約書にサインはしたか?それとも、帰るか?」
「あ、、、私、働きます。よろしくお願いします!」
「そうか。じゃあ1週間以内に我が家に越して来い。引越し業者はこちらで手配する。あと、転校手続きも済ませておけ。」
「はい。」
「5月からモデルとして働いてもらう、それまでにそれ相応に整えてもらう。学校終わり毎日我社に来い。」
「はい。」
「SNSはやっているか?やっているのなら全てやめろ。携帯も解約しろ。こちらで提供した物を使用してもらう。」
「、、、っ。はい。」
桜ちゃんはまくし立てるようにあれこれ指示をした。
桃峰さんは何度も驚いた表情を見せながら全てにはいと答えていた。
「未鼓、送ってやれ。」
「はい。」
桃峰さんは荷物を持って未鼓さんと社長室を出た。
「桜ちゃん、、、、。」
「見る目があるな、マナは。私もあの子がいいと思った。流石だ。」
え?
そりゃあ、、、、
桜ちゃんが選びそうな人、選んだもん
「背筋が、伸びてた。」
「あの子もマナと同じぐらいの看板モデルになってもらいたい。マナ、協力してくれるか?」
勿論だよ!僕は桜ちゃんに協力したい純粋な気持ちと、あの子には負けられないという気持ちで力一杯に桜ちゃんの手を握った。
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