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幼なじみ
頭角
しおりを挟む「驚きですねぇ。」
「あぁ、見立て通りだ。」
僕は未鼓さんと桜ちゃんの会話を聞いて体に電気が走った。
桃峰さんは桜ちゃんやメイクさんに磨かれて初めて会った日と同じ人とは思えないほど綺麗になっていた。
「いいねぇー。いいよぉー。表情の引き出しが多いよね、うんうん、可愛いよ~、最高だぁ~。」
カメラマンさんも凄く楽しそうだった。
いつも僕に向けられていた褒め言葉も、笑顔も今は桃峰さんに向いている。
桜ちゃんは期待の目で桃峰さんを見ていた。
僕も、、、負けないようにしなきゃ
「じゃ、次2人で撮るか。」
「うん。」
「はいっ!」
今日の撮影はクレンジング。
低刺激で毛穴までしっかり汚れが取れると言うのがコンセプトらしく、男女兼用なのが今回の売りだと桜ちゃんは言っていた。
「素肌の綺麗さが大切だ。光を当てないでなるべく素肌で勝負したい。冷たい水で洗ってもらう。」
「うん。じゃあ、今回はノーメイク?」
「出来るか?」
「僕はいいよ。」
カロリー制限、睡眠時間の義務、僕は僕の体を徹底するために完璧なまでに管理されている。
素肌でも、自信があった。
「ヒメは?」
「私も、イケます!」
「ん、じゃあ頼んだ。私は会議があるから失礼する。」
そう言い残して桜ちゃんはスタジオを出た。
僕はカメラの前、桃峰さんの横に並んだ。
「付き合いたてカップル初めてのお泊まり。洗顔後お互いの肌の綺麗さに幸せニッコリ笑顔!はい、これでいきますよ~!!」
カメラマンさんはそう言うと何度も何度もシャッターを切った。
カメラマンさんの指示の元、見つめあったり、頬を指先で触りあったり、初めてづくしの撮影だった。
「ヒメさん洗面台の前に立ちますか、はい。で、椎樹さん後ろから抱きしめる感じで、いや、抱きしめる感じです、後ろから、そうそうそう。で、頬をくっつけて、あぁー椎樹さんもう少し角度右で、あぁーもう少し、いい!そこ、そこで!はい。いいですね、いいです!最高です!」
撮影が終わる頃には僕は疲れきって立てなかった。
体力的ではない、精神的にだ。
女の子を抱きしめた事も頬をくっつけた事も初めてだった。
これからこんな撮影ばかりなの!?
僕は、こんな事、、、桜ちゃん意外となんて、、、考えた事なかったなぁ
なんか、、、嫌だなぁ
僕は桜ちゃんにLINEを送った。
『 これからこういう撮影が増えるの?』
『 そういう可能性もある。不服か?』
『不服ではないけど、慣れなくて、、、』
『 全ては宣伝効果次第だ。色々試したい。』
『 わかったよ。』
わかった、そう言うしかない
僕は少しだけ自覚した。
僕がモデルでいる限り桜ちゃんのそばにいられる。
むしろ、そういう理由でしかそばにいられない。
じゃあいつまで?
僕に需要がなくなったら?
9歳から抱えてるこの思いはどうやって消化するの?
桜ちゃんは僕の事を幼なじみのモデル、それ以上でも以下でもない。
このままではずっとこのままだ。
ましてや桃峰さんが来てから桜ちゃんの期待は僕と桃峰さんで二分されている。
僕だけに向けられていた期待も今は半分。
どうする?
どうしたらいい?
僕は12歳からモデルを続けてきた。
色んな表情を学んだ。声質を変える技術も学んだ。
僕は、桃峰さんには負けない。
絶対負けられない。
宣伝効果次第。
僕と桃峰さんが2人で撮るより僕一人で撮った方が宣伝効果に繋がる、そういう結果を出せばいいんだ。
絶対やる
僕は学校に着いてから頭をフル回転させた。
桜ちゃんは言ってた、大幅を狙う時は当たり障りのないものを一定層を狙うならマニアックにと。
マニアック、、、、
ある一定の人達にハマる、何か、、、、
何か、、、、
考えろ
考えるんだ
「大丈夫か?」
「え?あぁ、、うん。」
横知君が声を掛けてくれた。
横知君、、、、、
「ねぇ、横知君、女子中高生に人気の物って、、、何?」
「あ?なんだよ急に、、、、。アイドルとかじゃねぇーの?」
「アイドル、、、、。」
「どうしたんだよ。急に。」
「ねぇ横知君。僕がモデルとして足りないものって何だと思う?」
「え?マナが足りないもの?んー、、、、俺にはなぁ、、、あっ。マナは綺麗な顔してるし、中性的だからそれだけで女子の人気は獲得してると思うけど、そこに男らしさもあったらいいんじゃないか?」
「男、、、らしさ?」
「あぁ。なんていうか、、、多分世の中の意見だと可愛いの一択だろ?例えばだけど、セクシーさとかもあったらいいんじゃないか?」
「セクシーさ、、、。」
セクシー、、、
セクシー??
セクシーって、、、、なんだ?
けれど、僕は横知君から凄く大きなヒントを貰えたような気がした。
確かに僕はパーツ管理の徹底はしていたけれど、魅せ方は学んでいても、そこまで追及した事がなかった。
セクシーさ、、、、
それを手に入れれば需要が増えるかもしれない
よし、、、やってみよう
放課後、僕はカメラマンさんの所へ行った。
「あれ?椎樹さん?どうしたんですか?今日は撮影ないのに。」
「あの、、、、僕、、、、どうやったらもっとセクシーになれますか?」
「え?」
「魅せ方を勉強したいんです。」
「魅せ方、、、、ですか、、、。ん~難しいですね、、、そうだ、最近海外のモデルの撮影をしたんですけどね?自信。それが凄かったですよ。椎樹さんは社長やメイクさんから自信を付けてもらってはいると思うんです、でも、椎樹さんからは自信が滲み出てる事ってがないように見えるんです。」
「自信、、、。」
カメラマンさんは撮影した海外モデルの写真を見せてくれた。
なんとなく、カメラマンさんの言っている意味がわかった。
写真に写るモデルさんは撮られているというより、撮らせている、そう思わせる程魅力的な表情をしていた。
「楽しむのが1番ですよ?社長の意向もありますしコンセプトにも従わなければいけませんが、それを踏まえても椎樹さんが楽しまないと、いけません。」
「ありがとうございます。僕、勉強します。」
僕はカメラマンさんに頭を下げた。カメラマンさんは海外モデルの写真集やヌードモデルの写真集などを貸してくれた。
僕はそれから勉強と並立して魅せ方を学んだ。
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