ボクは犬(仮)

来季

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幼なじみ

独立

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「未鼓、、、、。」




「はい?」


コーヒーを啜る。

山積みの資料の隙間から顔を出しこちらを見る。

「最近のマナの撮影見た事あるか?」



「いえ、送り迎えのみですので。」


「ふーん。最近仕上がってくる写真、、、格段に魅力的になったと思わないか?」    



「えぇ、感じています。」


再びコーヒーを啜る。

ピックアップしたものと、カメラマンからのNG分、桜李さんは毎日チェックしていた。


椎樹さんが写る写真は必ず確認していた。

雑誌用、ポスター用、広告用、全て残さず。


最近椎樹さんが今まで以上に努力しているのは知っていた。


概ね理由は予想が着いている。


オーディションを勝ち抜いた桃峰姫加は才能がある。

撮られ方を直ぐに捉えていた。徹底された管理にも文句1つ言わず従っていた。


焦ってるんですねぇ


「誰かマナに何か言ったのか?」


「さぁ、私は何も聞いていません。」



桜李さんはそうかぁと呟いた。


藤堂寺桜李、19歳。

私はこの人、いや、この子に22歳の時に雇われた。


大学生だった私は適当に毎日を過ごしていた。
適当に単位だけ取りに大学へ行き適当にバイトをし朝まで友人たちと騒いだりしていた。


別に嫌ではなかったけれど、大学生なんてこんなものかと思っていた。


多分、誰もが一度は思う事なのだろうが私も量産型の人間にはなりたくない、自分には何かを成し遂げる才能があると思っていた。


まぁ、現実はそんなことひとつもなかった。


そんな時に1枚のチラシを見つけた。

「社長秘書、時給5000円」
 

怪しい~
そんな印象だった。   


何処の世界に社長秘書を時給で雇う会社があるのだろうか、ましてやこんな小さな掲示板に文字だけのチラシで。


だけど、気にはなった。
こんなお粗末な求人をする社長とはどんな人なんだろう

私はチラシを見て電話をかけた。
好奇心だった。


別になる気はなかった、社長を見てみたいだけだった。


「はい、株式会社WhiteSpringです。」



「あ、あの、、チラシ見てお電話させて頂いたのですが、、、。」



「あぁ、求人のでしょうか?」



電話に出たのはずいぶん子供の声だった。
まぁ、そういう声質の人もいる。
 
それから私は面接を受けたいと嘘をついた。
そしたら空いている日何も持たず住所通りの場所に来て欲しいと言われた。

正装もしなくていいと。


やっぱりとんだ会社だなと思った。
私はとりあえず面接に行くことを決めた。
話の種になりそうだったから。


3日後、大学とバイトの休みの日会社へ行った。
小さな会社だった。
10人程用のアパートくらいの大きさだ。
  

けれど、ずいぶんと新しかった。建てたばかりのようだった。
    

社内へ入っても誰もいなかった。
私は3階の社長室を目指した。
  

社長室をノックする。 
 
 さぁ、お粗末社長拝見


そんな気持ちで扉を開けた。


社長室に入り一番先に見えたのは、小さな子供だった。

小学生?


ソファーに座っていた。


「貴方が未鼓さん?」


「あっ、、えぇ。」



え?どういう事?


社長席?に座っていたのも子供だった。
中学生?高校生?
  

「私が取締役社長の藤堂寺桜李です。」


え?

え?
   


その声は、電話の時と同じ声だった。


どういう事!?どういう事なんだ!?


何かの冗談なのか、手の込んだイタズラなのか、どの道私は言葉を発する事すら出来なかった。


「我社は化粧品を中心に様々な商品を売ろうと考えています。工場と製薬会社は抑えられたのですが、私達の身の回りの世話を頼める人がどうしても確保出来なくて、未鼓さんにはそれをお願いしたいのです。資格は何も必要ありません。ただ、そうですね、、、子供の子守りをして頂きたいという所でしょうか?」



目の前の子供は大人びた表情を見せた。


私が子供を目の前にして驚いていることを悟っていた。


「あの、、、、えっと、、、。」


「急にそんな事言われても困りますよね。目の前にいるのが私では信ぴょう性もないでしょう。そういうリアクションは飽きる程見ました。ですが、この会社を立ち上げたのも、私が社長である事も事実です。あ、そこのソファーに座っているのは広告塔になってもらうモデルです。」




信ぴょう性も何も、目の前のこと全てが理解出来なかった。


社長席から立った、私の元へ歩いてくる人は確かに少女だった。


立ち振る舞いに気品があり、大人びては見てるけど幼さが残っていた。


「時給5000円はあくまで目安です。給料なんて払った事ないので最低今の資産額で払える範囲です。会社が軌道に乗れば固定給と利益分増額して給与を出します。」


自信。目の前の子供から溢れ出ていた。



何を根拠にそんな事を言っているのか理解出来なかったが、この人は本気だと確信した。


「あの、、、そんな高給、、、仕事内容は?」



「私達の身の回りの世話です。一日の拘束時間は20時間。差し上げられる睡眠時間は4時間前後です。基本的に休みはないと思っておいて下さい。自由時間があるとするならば私とそこの子が学校に行っている間でしょうか。」


拘束時間20時間!?大学は!?


「あの、、、大学生なんですけど、、、。」



「あまりそちら側の要望には答えられません。学業を専念したいのであればどうぞお引き取り下さい。」


あまりにあっさりしていた。
 


人が居なくて困ってるんじゃないのか?


どうしてそんなに余裕なんだ?
それとも、世話役にすら達しないと判断された?こんな子供に?


なんだかムカついた。

いや、かなりムカついた。


何者かになりたい大学生は多い。
大学に行っておけば何者かになれそう、そんな考えの人は一定数いた。自分もその1人だった。

けれど、自分は何者でもなくて、周りも何者でもなかった。


それなのに、目の前の子供は会社を立ち上げて、代表取締役?

時給5000円を払える資産を持っている!?



何事だよ


「あの、私、働きます。働かせてください。」


私は契約書にサインをした。



次の日、大学を辞め家を払い藤堂寺家へ越してきた。


契約書の最後の欄に違約金5億と書かれていた。

こんな子供に違約金を払う?冗談じゃない


私はいつかこの子供社長を蹴落として自分が社長になってやろうと思った。


こんな子供に出来て私に出来ないわけが無い。
私は大学で経済学を学んでいた。

見てろよ、最初はそんな気持ちばかりだった。





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