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幼なじみ
とある恋の話
しおりを挟む化粧品会社を経営してから4年。
新しくモデルを迎えてから経営はさらに右肩上がりになった。
事業を1人で行うのにも限界を迎えて来たなと感じてきた私は広告を業務委託する事にした。
その旨を2人に伝える。
「え?どういう事!?」
予想内の反応だった。
「そのままの意味だ。私1人では広告まで手が回らなくなった。私はあくまで経営者だ。広告は業務委託する。よって、個人でやっていた2人にも事務所に所属してもらう。」
「え!?事務所!?」
マナの顔が歪んだ。
「もう、所属する事務所には話が通っている。これからは仕事内容も大きく変わってくるだろう。ただのモデルだけではなくなった。そして、私の管理下から外れる。」
芸能人?
と少し嬉しそうな顔をするヒメと、嫌だと小さく呟くマナ。
「桜ちゃん、なんで?僕、、、、そんなの嫌だよ。」
「勿論、やるやらないは二人の自由だ。契約書に事務所所属の規約はなかったからな。ただ、今回の事務所所属を断るなら契約解消だ。我社のモデルとして働いてもらう必要もない。期間は3日。3日以内に決めろ。」
私は言い放ち、部屋を出た。
マナが嫌がるのはわかっていた。
さて、、、、どう出るかな
私は自室に戻った。仕事は山ほどある。1秒も休んでいられなかった。
今までも広告まで手掛けていたのがギリギリだった。それでも私がマナのポテンシャルを上げる他なかった。
だが、最近のマナは実力が着いてきた。
きっと大丈夫だ
必要資料に目を通す。
新作の発明。発売。既製品のリニューアル案。製造工場の増設。
何から何まで私が管理していた。
はぁ~
流石に疲れるな
広告が外れた所で仕事量は変わらないだろう
我社には部長も課長もいない。
唯一私と意見を交換するのは未鼓だけだった。
背伸びをする。
ドンドンガチャ
「桜ちゃん!」
ノック後相手の返事を待ってから扉を開けろと教えたのに。
「なんだ?」
「事務所に所属するってどういう事なの?桜ちゃんとは関係なくなるの?」
「関係なくなるわけではないが、我社の専属モデルではなくなるな。」
「じゃあ、じゃあ撮影見に来てくれたり、撮った写真や映像を選んでくれたりしないの!?」
「それが難しくなったから業務委託するんだよ。広告代理店ももう決まっている。」
「じゃあ、、、、、もう桜ちゃんと仕事出来ないの?」
泣きそうな顔をしているマナを見て少しだけ心が傷んだ。
「マナが私の為に頑張ってきてくれた事は充分わかっている。事務所に所属したから全く関係なくなるわけじゃない。遠くはなるだろうが、それを含めてまだマナの力を借りたい。我儘かもしれないが、これはお願いだ。」
「僕は!桜ちゃんに褒められたくて、認められたくて桜ちゃんの言う事だから全部全部受け入れてきた。桜ちゃんの会社だから頑張ってる。そうじゃなくなるのは、、、、、嫌だ。」
握り拳が震えていた。
16歳、相談相手も親もいないマナに決断を迫るのには心苦しい。
それでも、無理をして完成度を下げるわけにはいかなかった。
マナ1人の人生じゃない。社員全ての人生を背負って経営をしている。たった一人の我儘を聞く訳にはいかなかった。
「マナ、私も相当な我儘を言っている。だからマナの我儘も1つ聞こう。何でもいい、私に可能な事なら。」
上を見上げ185センチの長身の頭を撫でる。
「わがまま??」
「あぁ。何でもいい。マナが私の我儘を受け入れてくれるなら、私もマナの我儘を叶えよう。」
泣くな
目じりの涙を指先で拭う。
マナは少し考えさせてと言って部屋を出た。
すぐ後に未鼓がノックする。
「桜李さん。ヒメさんが事務所所属を承諾しました。」
「そうか。」
「椎樹さんはやはり、、、、。」
「あぁ。」
ですよね、
未鼓は小さく微笑んだ。
「仕方ないさ。マナの全ての原動力が私にある。わかっている。わかっているが、、、その関係性は長くは続かない。」
「もう少し希望を与えてみてはどうです?突き放しすぎなんですよ。」
「わかっているさ。でもなぁ~、今は恋愛ごっこをしている場合じゃない。いつだって目立つ釘は打たれる。揚げ足を取られてからでは遅い。」
「桜李さんに恋愛感情って備わっているんですか?」
「一応、、、人間だからな。」
「ほ~う。」
「なんだそのバカにした目は。」
「初恋いつですか?」
「初恋も何も、私はずっとマナが好きだ。明確に何月何日好きになりましたか?と聞かれれば不明だが。」
「え!?え!?えぇぇえ!?桜李さん椎樹さんの事好きなんですか!?嘘ですよね?冗談!?」
「なんの為の冗談だ。好きじゃなければこんなに傍には置かないだろう。権力と財力をフルに使って私の側にいさせてるじゃないか。それが証拠だ。」
「いやいやいやいや。とても好きな人にとる態度じゃないですよ!?」
「そうか?私は毎日愛情を注いでるつもりだが?」
「歪んでますね~。結局桜李さんは自分が椎樹さん好きで椎樹さんが桜李さん好きだとしてもどうこうするつもりないんですよね?」
「どうこうってなんだ?付き合うって事か?それはない。仕事に支障が出る。私は兎も角マナは正常じゃなくなる。」
「理性勝ち過ぎじゃないですか?」
「愛だの恋だので事業は成功しない。」
マナが私の事を好きなのはずっと知っていた。誰が見ても分かる。驚くほど分かりやすい。
同時に私もマナの事が好きだ。
けれどそれは両親を無くした私にとって小さな頃から一緒にいたマナの存在が家族のようになっているからだった。
可愛い弟。そんな感覚だった。
唯一の家族。
私は私なりにマナを大切にしているつもりだった。
今1番大切なのは間違いなくマナだから。
だからそこ甘やかしすぎたくはなかった。
マナにとっても家族のような存在は私だけだから
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