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しおりを挟む翌日、いつも通り朝早く出発するアランをエミリーは見送った。二人とも職場は王城内だが、出勤時間が違うので別々に出勤することが殆どだ。
「行ってらっしゃい。気を付けてね。」
「ああ。行ってくる。今日から引き継ぎ業務を始めるから遅くなる。」
「分かったわ、無理しないでね。」
アランは少しぎこちなく、優しく口づけてくれる。エミリーが、結婚時にお願いした『行ってらっしゃいのキス』をアランは律儀に守ってくれている。そんなアランがエミリーは大好きだった。玄関の外まで出て、見えなくなるまで見送っていると、アランは時折振り向いて、手を上げてくれる。
「よーし!私も仕事行くぞ~。」
大好きな夫の見送りで心を充電したエミリーは、家事と身支度を終えると、職場の託児所へ向かった。
◇◇◇
「そう、旦那様が異動するのね。貴女がいなくなるのは悲しいけど仕方ないわね。」
エミリーは出勤すると、所長のポーラへ時間を作って貰い、退職を願い出た。
「ご迷惑をお掛けしてすみません。」
「ううん。ただ、貴女がいなくなると寂しがる子どもたちがたくさんいるってこと。」
ポーラはにっこり笑い、エミリーの背中を叩いた。
「旦那様の栄転なんておめでたいことだわ。送別会は豪勢にさせてね。」
「ありがとうございます!」
ポーラの言葉に、エミリーは胸が暖かくなった。
「三ヶ月後には行くのね。退職時期はどうする?」
「それが、夫が引き継ぎ業務が忙しそうで・・・私がメインで引っ越し作業をすることになると思うので出来れば二ヶ月後には退職したいです。」
「旦那様、騎士団の副団長さんだったものね。勿論大丈夫よ。」
「お願いします。」
エミリーは、その後もポーラと退職に関する調整をしていると、痺れを切らした子どもたちが飛び込んできた。
「ねぇ、エミリーせんせい!はやくきて。」
「あらあら、どうしたの?」
「ジャンが、わたしのこうさく、めちゃくちゃにしたのよ!」
「ふん!ケニーのがへたくそだったからな!」
「あらら」
「エミリー、行ってあげて。」
ポーラに見送られ、エミリーは二人の傍に寄った。二人に声を掛けながら、再度工作を再開させるとあっという間に仲直りしていた。もうすぐ、この可愛い子どもたちと会えなくなるのだ。そう思うと、涙が迫り上がってきて、エミリーは慌てて上を向いた。
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