4 / 12
4
しおりを挟む「トニー。久しぶりじゃない。」
「ああ。エミリーも元気そうだな。」
トニーも隣にいる同僚も隊服を身に付けており、巡回中だったようだ。アランの部下となるので、その同僚のことも見覚えがあり、相手も「ターナー副団長の奥様、いつもお世話になっております。」と頭を下げた。
「まさかエミリーが奥様なんてな。」
トニーは揶揄うように嫌みっぽく、そう言った。
トニーは幼い頃は大切な遊び相手で、お互いによく悪戯もしていた。だが、学園を卒業するとトニーは騎士学校へ行き、エミリーは淑女学校へと進み、それから会うことは殆ど無くなった。
それから、エミリーが王城内の託児所に務めることになり、再び顔を合わせるようになった・・・と言っても、会えば挨拶や世間話をする程度の関係だが。
その後、エミリーはアランと出会い、エミリーのアタックの末、交際が始まった。アランとトニーが同じ騎士団だと知ったのは随分後のことだった。
「何よ。料理は上手なのよ。」
「ふうん。」
「副団長も奥様の料理をよく褒めてらっしゃいますよ。」
トニーの方から言ってきたのに、刺々しい態度を取られ、エミリーは戸惑った。同僚がフォローを入れてくれたが、エミリーは居心地が悪くなり、「では、そろそろ。」と離れようとした。だが。
「そういえば、ターナー副団長、栄転するんだったな。おめでとう。」
「え、ええ。ありがとう。」
刺々しい態度から一変して、お祝いの言葉を掛けられ、エミリーは益々混乱した。しかし、トニーの次の言葉で、エミリーは更に混乱の渦に落とされた。
「単身赴任なんてな。副団長も、エミリーも大変だな。」
「え・・・。」
思わず声を漏らしたが、トニーは気にする様子はない。
「副団長、言ってたよな。単身赴任するんだって。」
「あ、ああ。」
同僚も、トニーの変化に戸惑っているようだが、話を振られ頷いている。
「案外、一人暮らし気分で楽しみにしてるのかもな。」
ケラケラと笑うケニーは「だから、副団長が単身赴任したら・・・。」と言葉を続けるが、エミリーの頭には入ってこない。挨拶もそこそこに、ふらふらとエミリーは家に向かった。頭は真っ白のまま、気を抜いたら涙が溢れ落ちそうだった。
151
あなたにおすすめの小説
前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!
お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。
……。
…………。
「レオくぅーん!いま会いに行きます!」
王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!
奏音 美都
恋愛
ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。
そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。
あぁ、なんてことでしょう……
こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!
彼はヒロインを選んだ——けれど最後に“愛した”のは私だった
みゅー
恋愛
前世の記憶を思い出した瞬間、悟った。
この世界では、彼は“ヒロイン”を選ぶ――わたくしではない。
けれど、運命になんて屈しない。
“選ばれなかった令嬢”として終わるくらいなら、強く生きてみせる。
……そう決めたのに。
彼が初めて追いかけてきた——「行かないでくれ!」
涙で結ばれる、運命を越えた恋の物語。
初恋の呪縛
緑谷めい
恋愛
「エミリ。すまないが、これから暫くの間、俺の同僚のアーダの家に食事を作りに行ってくれないだろうか?」
王国騎士団の騎士である夫デニスにそう頼まれたエミリは、もちろん二つ返事で引き受けた。女性騎士のアーダは夫と同期だと聞いている。半年前にエミリとデニスが結婚した際に結婚パーティーの席で他の同僚達と共にデニスから紹介され、面識もある。
※ 全6話完結予定
【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」
「恩? 私と君は初対面だったはず」
「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」
「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」
奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。
彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
義兄のために私ができること
しゃーりん
恋愛
姉が亡くなった。出産時の失血が原因だった。
しかも、子供は義兄の子ではないと罪の告白をして。
入り婿である義兄はどこまで知っている?
姉の子を跡継ぎにすべきか、自分が跡継ぎになるべきか、義兄を解放すべきか。
伯爵家のために、義兄のために最善の道を考え悩む令嬢のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる