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しおりを挟む翌朝。
熱が下がらない私を、両親も、バーサも、他の使用人たちも心底心配してくれた。私は退屈を感じながら、ベッドの住人となっていた。
「……お嬢様。」
バーサは複雑な表情で私に近付いた。バーサの手には大きな、色とりどりの花束が抱えられている。
「まぁ!可愛い!」
「……ジェレミー様からお見舞いです。」
「え……?」
「ジェレミー様から、お嬢様へ面会したい旨の連絡があり、お嬢様の体調不良を伝えたそうです。……私は廃棄しようとしたのですが、侍女長にお嬢様に確認しないでそんなことをしないようにと怒られてしまいました……。」
「ふふふ。」
ジェレミーからの花束、ということで多少動揺したけれど、廃棄できずに悔しそうにしているバーサが可愛くて、私は思わず笑ってしまった。
「バーサ、ありがとう。お花に罪は無いし、こちらに飾ってちょうだい。」
「……分かりました。」
バーサは、渋々、本当に不本意、と言った様子で私の部屋に花を飾った。その様子があまりに可笑しくて、私はまた笑ってしまった。それから、私の熱が下がる四日後まで、毎日花束のプレゼントは続いた。
◇◇◇◇
四日後。
漸く熱が下がった私だが、心配症の両親やバーサたちによって、未だにベッドの住人だった。私の部屋には、ジェレミーから贈られた花が所狭しと飾られている。
「……お嬢様。」
不満そうに部屋にやって来たバーサに、私は少し戸惑った。
「どうしたの?」
「ジェレミー様が面会に来られています。」
「え……。」
「私は、箒で叩いて追い出そうとしたのです!……ですが、箒を取りに行った所を侍女長に見つかってしまい……。」
悔しくて堪らない、と言った様子のバーサに、また心が緩んだ。
「お嬢様が会いたくないと一言仰って下されば、私が追い返せます。」
箒は使えませんが……と付け加えるバーサを見て、私は心強く感じた。
「ううん、バーサ。私、ジェレミーに会うわ。この前は、私の話しかしなかったから、ジェレミーの話も聞かなくちゃ。」
「お嬢様……。」
それは、お父様から「話し合うように」と言われたから、というのもあるけれど、それだけじゃなかった。
四日間、ベッドの中で考えていたこと。これを伝えなければ、と拳を握った。
バーサは、不満そうにジェレミーを呼びに向かった。
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