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しおりを挟む澪の葬儀や細かな手続きは全て玄が付き添ってくれ、旺也は殆ど覚えていない。そんな手続きよりも颯の荒れようが酷かったからだ。葬儀中も、葬儀が終わってから何日経っても颯は泣き叫んでいた。まだ三歳になったばかりの幼い子どもの前から急に母親がいなくなったのだ。泣き叫ぶなという方が可笑しい。
颯の面倒なんて大してやって来なかった旺也は途方に暮れた。それでも必死に彼を宥める旺也に玄は長期の休暇を与えた。
「颯ちゃんが落ち着くまで暫く仕事は休め。何ヶ月でも休んでいいから、今は颯ちゃんを優先しろ」
そう言って、ちょくちょく様子を見に来てくれている。旺也も暫く経てば少しずつ落ち着いていくだろう、と考えていた。しかし三ヶ月経っても落ち着いてはいないどころか、酷くなっている。旺也も颯も眠れない夜が続いていた。
あまりに収まらないので旺也は迷惑を掛けている近所の人たちへ頭を下げに行った。申し訳ないという気持ちより、虐待を疑われいつか警察に通報されてしまうのではないかと恐れたからだ。だが近所の人はみな温かかった。
「馬鹿だね、そんなこと気にしなくて良いんだよ」
「こんなに小さな子が母親を恋しがらない筈がないよ。どんなに泣いたっていいよ」
「泣き止まなくても私たちに悪いなんて思う必要は無いからね。心配するんじゃないよ」
彼女たちは目を丸くし、そして慰めてくれた。
「澪ちゃんがここに来たばかりの時もこんな風に泣いていたよ。この近所の人間は古くから居る人ばかりだからね、旺ちゃんたちがここに来たばかりの頃を思い出してるんじゃないか。大丈夫、泣き声なんて慣れてるよ」
「旺ちゃんの爺さんも必死で澪ちゃん抱っこしてたっけ。澪ちゃんもなかなか泣き止まなくってさ。爺さんいつも途方に暮れていたよ」
涙を滲ませ、彼女たちはそう話した。必死で二人を育ててくれた祖父の背中を思い出す。帰り道、爺ちゃん、と小さく呟いた旺也を颯が不思議そうに見上げていた。
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