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しおりを挟む「うっ、うっ……うわぁぁぁん!!」
また今夜も颯は泣き止まない。夜は特に母親が恋しくなるのだろう。うとうとと眠ってもまたすぐに起きてしまう。三ヶ月、こんな毎日が続き旺也も颯も疲弊していた。家の中は荒れ放題で、颯は食事もあまり取れなくなっていた。
日中だけでも保育園に、と思ったこともある。だが間の悪いことに颯は保育園を転園したばかりだった。以前通っていた保育園が閉園することになり、近場の保育園に転園したのだがまだ新しい保育士にも友人にも慣れていない時期に澪が亡くなってしまった。保育園に行けるよう何度かトライしてみたが、颯は激しく暴れ半ば無理矢理保育園に連れて行っても旺也にしがみつき離れようとはしなかった。
勿論保育園では保護者と離れがたいために子どもが泣く場面なんて毎日のようにある。だが、颯の泣き叫び暴れる様子はそれらとは違った。
「保育園に行っている間にお母さんと会えなくなってしまったから、ここにいることが不安なのかもしれません」
何度か先生方と面談したり、旺也が付き添って教室まで入ることもあったが、颯は必死に拒絶した。結局保育園に来ることが今の颯には負担になるのだろうと、暫くの間保育園を休むことになった。彼女たちは休み中も困ったことがあれば力になると言い添えた。
泣き叫び暴れることも、食事も睡眠も満足に取れていないことも不安の種だが、それと同じくらい旺也が心配していることがあった。
「うわぁぁぁん!!うっ、うっ……」
「颯……」
この三ヶ月、旺也は颯の泣き声以外の声を聞いていない。
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