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しおりを挟む颯が話さなくなったことに気付いたのは、澪の葬儀が終わり少し経ってからだった。
「颯、お茶飲むか?」
「今日は公園に行くか」
「お菓子あるぞ」
旺也の言葉に、小さく頷くか首を振るしか返さない颯を見て違和感が積み重なっていった。
(待て……いつからだ。いつから声を聞いていない?)
そして、澪の葬儀以降に颯の声を聞いていないことに気付くと旺也は青褪め颯の肩を揺すった。
「颯……颯、返事してくれ」
「……っ、うっ、うっ……」
「颯……」
縋りつく旺也を見て颯はまた泣き出してしまった。焦った旺也は、力になると言ってくれた保育園に電話をし状況を説明した。保育士はストレスで話すことが出来なくなる子もいることを話し、子ども専門の心療内科を紹介してくれたがそちらに電話した旺也はまた絶望することになった。
「半年後って……」
電話口で受付の女性は新規予約は早くても半年後になると申し訳なさそうに説明した。最近では子どもでもメンタルケアが必要になることが増えている。そのせいでどのクリニックも新規予約が取りづらい状況になっているという。呆然としたまま予約だけはお願いしたが、電話を切るとそのまましゃがみ込んでしまった。颯は半年もこのままなのだろうか。
(澪……どうしたらいい?)
(爺ちゃん、助けてくれよ)
先が見えない真っ暗な洞窟に颯と二人きりで閉じ込められたような状況に、旺也は項垂れるしかなかった。
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