9 / 48
9
しおりを挟む「はなちゃん、もうくる?」
朝から何十回も繰り返す質問に旺也は苦笑した。
「夕方って言ってただろう」
「う~、まだぁ?」
もどかしそうに颯は身を捩った。旺也が葉名に醜態を晒した日から二日後、今日は彼女が彼に貸したタオルハンカチを取りに来ると約束した日だった。本来なら借りた旺也が届けるべきだが、彼女は苦労している旺也に負担を掛けたくないと思ったのだろう。自分が取りに行くと言って引かなかった。
だが彼女の訪問は颯に良い影響を与えた。
颯はもしかしたら彼女が家の中まで上がってくれるかもしれないと期待し、荒れ放題だった部屋を片付け始めた。小さな身体で玩具を必死に運んでいる颯と共に旺也も居間やキッチンを片付け、三ヶ月ぶりに清潔な我が家に戻った。
「おうちゃん、らじおできた?」
「う……」
葉名から貰ったラジオステッカーには番組名が記載されており、颯は聞いてみたいと強請った。旺也がスマートフォンで検索すると、その番組は地上波ではなくインターネットラジオという括りのようで専用のアプリをインストールする必要があるらしい……ネットに疎い旺也はここまでの情報に辿り着くまでにかなり時間を要してしまった。
「まだだ……」
「じゃ、はなちゃんにきこ!」
屈託なく笑う颯はこの三ヶ月荒れていた彼とは別人のようだ。ほっと息を吐いた旺也は颯の頭を撫でた。
「少し早いけど風呂に入っておくか」
「えぇ!いや!はいらない!」
「……お前も俺も汗びっしょりだぞ」
「……おふろはいる」
綺麗にして彼女に会いたいと思ったのだろう。こんなにも素直に風呂に入れる日が来るなんて数日前までは想像も出来なかった。急に現れた女神のような彼女に感謝し旺也は風呂場へと向かった。
37
あなたにおすすめの小説
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
大きくなったら結婚しようと誓った幼馴染が幸せな家庭を築いていた
黒うさぎ
恋愛
「おおきくなったら、ぼくとけっこんしよう!」
幼い頃にした彼との約束。私は彼に相応しい強く、優しい女性になるために己を鍛え磨きぬいた。そして十六年たったある日。私は約束を果たそうと彼の家を訪れた。だが家の中から姿を現したのは、幼女とその母親らしき女性、そして優しく微笑む彼だった。
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しています。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる