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しおりを挟む『ねこのムギ、てんごくをさがす』
茶トラ猫のムギは気付いた時には一人ぼっちでした。周りの子猫たちには母親猫がいるのにムギにはいません。心細そうに辺りを見渡すムギに、キジトラ猫のクロが近寄りました。
「お前の母ちゃんはいないよ」
「どうして?」
「死んだよ」
「しんだってなあに?」
「めんどくせーな。天国に行ったんだよ」
「てんごくってどこ?」
「しらねーよ」
クロは機嫌悪そうに自分のご飯の半分をムギにやりました。ムギは腹ペコでしたので必死になって食べました。
「ぼく、てんごくをさがしにいくよ」
「はぁ?」
「だって、おかあちゃんにあいたいもん」
食べ終わったムギは歩き始めました。クロは呆れ顔で止めましたが、ムギは聞きません。クロは仕方なくムギに付いていくことにしました。
ムギは子猫ですからあまり沢山は歩けません。歩いては休み、歩いては休み、何日も何日も歩き続けました。
「お前の分まで狩りをするのは面倒だ」
クロはそう言ってムギに狩りの仕方を教えました。狩りの他にも、綺麗な水の見分け方、毒のある草、通ってはいけない道、沢山のことをムギに教えました。
「もう天国探しはやめないか?」
「いやだよ。ぼくおかあちゃんにあいたいよ」
そう言い合う二匹の前に、年を取った一匹の錆猫が現れました。
「お前さんたち、どこに行くんだい?」
「おかあちゃんにあいに、てんごくをさがしてるんだ。どこにあるかしらない?」
「ううん……そうだなぁ。空の上にあると聞いたことはあるが」
「そらのうえ!」
ムギは「ありがとう!」と言うとすぐ走り出しました。
「こら、待て!」
クロは追いつきムギを止めます。
「どこにいくんだよ?」
「あそこ!あのおやまにいくんだよ。あそこならきっとおそらにとどくよ。やっとおかあちゃんにあえるんだ!」
「だめだ!山の中は俺達より大きな動物が沢山いるんだ!危ないからやめろ!」
「いやだ!ぜったいいくんだ!」
「もういい!この分からず屋!」
クロはくるりと後ろを向くと反対の方へ走り出しました。よっぽど怒っていたのでしょう。いつもムギに周りをきちんと確認してから道を渡るように、と口酸っぱく話していたクロは周りを確認しないで道を渡り始めました。
「クロ!あぶない!!」
キキーッ!!大きな音が響きます。クロが車とぶつかりそうになった瞬間、ムギは咄嗟にクロを庇いました。
「ムギ!おい!ムギ!」
クロの叫び声が遠くで聞こえます。ムギはふわふわと温かなものに包まれていました。
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